<金曜は本の紹介>
「風に吹かれて豆腐屋ジョニー(伊藤信吾)」の購入はコチラ
この「風に吹かれて豆腐屋ジョニー(伊藤信吾)」という本は、「男前豆腐」や「風に吹かれて豆腐屋ジョニー」という豆腐を作っている男前豆腐店代表取締役社長の伊藤信吾さんが書いた本で、特に豆腐作りのこだわりについて書かれています。
価格競争に巻き込まれないように、良いものをとことんこだわって作ることが大切ということがよく分かりましたね。
それから、妄想を実現させること、ネットで知り合った人とも一緒に仕事をしているというのも面白いと思いました。
また、矢沢永吉の本にかなり影響を受けたそうで、おそらく「成りあがり」という本を読んだのだろうなぁと思いました^_^;)
この本もオススメです。
以下はこの「風に吹かれて豆腐屋ジョニー(伊藤信吾)」という本のポイント等です。
「風に吹かれて豆腐屋ジョニー(伊藤信吾)」という本は、とてもオススメです!
・まさか豆腐屋になるとは思ってませんでした。父の仕事は建築業で、子供のころは漠然と「自分も建築をやるのかなあ」ぐらいに考えていた。ところが僕が高三だった1986年、父が豆腐工場の経営にも乗り出した。豆腐と関係ができたのはそのときからです。特別こだわって、おいしいものを作るような工場じゃありません。スーパーが増えてきた時期に、同じ規格の豆腐を大量に安く供給することを目的に作られた普通の量産工場です。大量生産をコンセプトにした工場ですから、要は資金を寝かせないことが重要になる。どんどん作って、どんどん利益を回収する。資金ぐりのスパンを考えたら、建築より豆腐のほうが圧倒的に短い。2~3ヶ月でカネが入ってくるわけで。そういう部分が父には面白かったんだろうと思います。
・当時の僕は浮谷東次郎や矢沢永吉の本にかなり影響を受けていて、「自分は自分の世界観を突き詰めるんだ」なんて鼻息ばかり荒かった。だから、父の仕事を継ぐとかいう発想はあんまりなくて、別の道を歩んでいくんだと思っていた。
・おたま豆腐が人を驚かせたのは、その量でした。600グラムもあったからです。普通の豆腐は300~400グラムだから、倍近くある。当時は「個食化」がキーワードになっていて、豆腐のパックも小型化する傾向があった。だから、おたま豆腐をバイヤーに持ち込んだときも、「こんなでかいの売れるはずがない」と言われました。でも、僕はそうは思わなかった。「うまい豆腐ならいっぱい食うはず。もし残ったら次の日に味噌汁に入れりゃあいいじゃん」ぐらいに考えていた。安い豆腐に未来はないと思ってましたから、商品単価を上げたかった。これは初めて200円ぐらいする商品だったんです。
・お客さんの心理としては、量が半分になったとすると、値段は3分の1ぐらいまで下がらないと高いと感じてしまう。「消費者というのは、値段が高くても少ない量でいろんな種類を食べたいんだ」なんてマーケティングの人はいうけど、実際はそんな商品は「高い!」の一言で敬遠される。みんな豆腐は安いものだと思い込んでいるんですよ。枕詞のように「豆腐のくせに」といわれますから。高い豆腐なんて存在しちゃいけないみたいに。それが悔しいから、僕は「おたま豆腐」「トカタマ。」「どんどこ豆腐」で200円の壁に挑戦し、続く「男前豆腐」「風に吹かれて豆腐屋ジョニー」で300円の壁に挑戦した。
・01年に2代目おたま豆腐、トカタマ、どんどこ豆腐と3つの新商品を出し、ようやくうちの会社のイメージが変わりつつありました。安い豆腐を大量に作ってる、どこにでもある豆腐メーカーのひとつ。そんなイメージが少しずつ少しずつ崩れていったんです。バイヤーも「三和さん、最近うまいの作るじゃん。次はどんなのやるの?」なんていってくれるようになった。値段だけで評価される世界から抜け出す道が見えてきたのかな、ぐらいの時期ですね。値下げ競争に巻き込まれたら、一巻の終わりです。そうなれば、豆腐に「魂」を入れることなんてできませんから。僕がいまでも豆腐の形に異常にこだわるのは、値下げ競争やパクリから自由でいるためです。変わった形というのは、自分たちの味を守る手段でもあるんです。
・実際思ったより幅広い層に受け入れられて、保守的だろうと予想していた女性たちもファンになってくれた。スーパーで縦置きされてる男前豆腐を見たお客さんが、「この水切り板の意味が分かってるんですか!」と店員をしかりつける事件まであったぐらいで。男前豆腐あたりからマスコミで紹介される機会も増えたんですが、やっぱりお客さんが盛り上げてくれたおかげだと思ってます。評判を聞きつけたお客さんがスーパーに「男前豆腐を入れて」と投書してくれたり途中で入荷をやめた店でも、お客さんのリクエストで再度並べてくれたり。そんなことが何度もありました。僕たちの営業力というより、お客さんがスーパーの定番商品に育ててくれた。
・でも、やっぱり周囲から反対されましたよ。工場でもバイヤーからも、さんざんにいわれました。「豆腐は庶民の食べ物なんだから、こんな高くちゃ買うわけないよ」と。「豆腐のくせに」って発想ですよね。メーカーにとっては、30円の豆腐を100パック売るのと、300円の豆腐を10パック売るのじゃ、まったく意味合いが違う。商品単価が生命線なんです。僕としては単価の高い豆腐にしか生き残る道はないと考えてるわけで、この部分でゆずれるはずがない。バイヤーから「あと5円下げろ」「あと10円下げろ」と迫られる世界から解放されて、メーカー主導で納得のいく豆腐を作る。これだけいい原料を使い、これだけ製法を工夫したから、この値段になりますと。そういう直球勝負がしたい。スタート地点からもう発想が違うわkです。高い豆腐を毎日食べる必要はないんです。僕もそんなことは求めてない。1週間に一度でも2週間に一度でもかまわない。「よーし。今日は豆腐食うぞ!」って日にだけ買ってくれればいい。「ハレの日に食う豆腐」という位置づけなんです。
・結果的に、ジョニーはものすごく手間のかかる豆腐になりました。一口食べただけで、分かる同業者には分かると思います。相当、手間をかけて作ってるなぁと。色物的にヒットした部分もありますが、中身は本格派なんです。
・実は、僕が一緒に仕事してる人の多くは、ネット上で知り合った人々なんです。トカタマの村上由香さんもそうだし、いま懐刀となってくれている切り絵作家のアンクル・ボブさんもそう。ホームページ制作をお願いしてるモンキーダッシュの太陽さんもそうですね。のちに京都に移るとき、工場のシンボルとして建てたジョニー像を作ってくれた職人さんとも、御影石で男前豆腐店の看板を作ってくれた石屋さんとも、ネットでつながった。
・みんなで相談してって世界からは、いいものは生まれないという確信がある。音楽でいえば、作詞作曲の世界を組織化することはできませんよね。やっぱりクリエイティブなところは個人作業でないと無理な部分がある。実際、稟議の世界の豆腐メーカーはことごとくつぶれていってるわけだから。みんなで賛成してやったことで倒産したら、いったい誰が責任をとるんだと。民主主義でもの作りはなかなか難しいと思うんですね。じゃあ、僕が何を基準にしてるのかというと、自分が見てきたものを基準にしてるんでしょうね。いままで食ってきたもの、見てきたもの、いろいろです。味だけでなく、デザインについてもそうです。造形でいえばハーレーのエンジンが格好いいなとか、ロングボードのフィンの形が格好いいなとか、豆腐とは関係ないような、いろんな世界に影響を受けている。
・なぜ二子玉川なのか。高級住宅街のマダムたちと男前豆腐店のギャップがちょうどいい感じに思えたからです。僕は経営者というより、ものを作る人間として面白いことをやりたいという気持ちが強い。普通なら会社を大きくするために、直営店をどんどん増やしていこうとか、フランチャイズ化しようとか、そっちで発想する。でも、フランチャイズなんて、絶対にあり得ない。どこにでもあるというのが、一番つまんないことだと思うので。直営店だって、東京にひとつと関西にひとつあればいい。その次に出店するとしたら、いきなりニューヨークぐらいで。ロケーションの妙味って重要ですよね。江面としてみた時に笑っちゃう感じがないと。僕も千葉の田舎育ちですから下町に偏見はありませんが、東京でも北千住に男前豆腐店があったんじゃ、意外性がない。面白くもなんともない。やっぱり二子玉川とか銀座みたいな高級な場所で浮きまくるのがロケンローです。
・普通、夏場に向けて、出荷が3倍増ししていくんです。やっぱり冬場に豆腐は売れないので。しかし、05年の冬は出荷が減らずに逆に増えていったから、「06年の夏はどうなっちゃうんだろう?」と心配してた。春段階、4月のピークは1日2万パックでしたが、2万パックの3倍なんていうと6万パックとか、考えられない数字になるので。ところが、その予想すら上回る注文が入ってきていて・・・・・。ジョニーの1日の出荷量で見ると、5月に3万5000パックを超え、6月には6万パックに近づいた。夏本番はこれからですから、ここで再びラインを大増強して、7月には1日10万パック超を作れる体制にしました。しかも、これは京都だけの数字です。茨城で作ってるぶんを合わせると、とんでもない数字になる。関西のセブンイレブンやジャスコがジョニーを扱ってくれることになったとき、1日に8000パックなんて注文が入るんですよ。ひとつの会社だけで。ついこないだまでトータルで何千パックという売り買いをやっていたのが、自分でも想像を絶する世界に入っちゃった。あっという間です。
・「社長的な業務」って、そんなに重視していない。僕の仕事はネタ作り。つまり、テストして新商品を作って、どう売るかの仕組みを考えること。それが90%です。ものを作るのが楽しくて、その延長線上で会社をやってる感じがある。経営者である前に、豆腐のことばっかり考えている。経営者面して外ばっかり出て、握手して名刺交換して・・・・・そんなんで何が生まれるんだろうって思ってる。僕なんかオーラがゼロですよ。食堂でもちっちゃくなって飯食ってますから。「やあやあやあ、君たち元気かい?」なんてことは絶対にいわない。社長風情みたいなののどこが格好いいんだろう、と感じてるほうなので。でも、一緒にものを作ってる人間にとっては、やっぱりウザイ存在だと思いますねえ。相変わらず自分が納得するまで妥協しない。現場の人間は「社長は何が気に食わないんだろう?いまのままでも十分おいしいのに」って感じてると思います。一人でグジグジ悩んでるから、はたから見たらかなり格好悪いんじゃないかな。工場にはほぼ毎日出ています。土日も関係ありません。午前中だけ休みをとったりする程度で、基本的には年中無休。毎日行って設備の調整やってれば、何かしらの発見があるんですよ。あまり仕事だと思ってませんから。僕にとってのストレスは、物事が動いていかないこと、ひらめかないこと、刺激がないこと。だから、仕事がストレス発散になっている。機械だって、ものすごくカスタマイズしています。何度も工程を変えるから。商品が完成して世に出てからも、よりおいしくしようと作り方を改良する。毎日ものすごい試行錯誤がある。
・思えば小学校から中学高校、大学と、僕はずっと悶々としていた。自己表現が全然できなくて。仕事を始めてからのほうがよっぽど自己実現できている。同級生がいまの僕を見たら、「あんな地味だったやつが、なぜ?」って感じだと思います。学校時代って、価値観がひとつじゃないですか。足が速くて明るい子だけがモテて。僕なんか運動がまったくダメで、バスケットボールでシュート入れたりすると、体育の先生がビクリした顔をする。あのときの先生の顔が忘れられない。最初からバカにしてるんですよね。そういう世界が嫌いで嫌いで仕方なかった。浮谷東次郎を読んで「自分のアイデンティティとは何か」なんて考えるようになったのも、主流派じゃなかったからなんでしょう。コンプレックスの塊ですよ。本当は僕だってホームラン打ちたいんですよね。そりゃ格好いいですよ、甲子園に出たりとかね。でも、どうしてもできなかった。それで、その悔しさを、どっかほかの分野で晴らしてやろうって気持ちが強かったのかもしれません。そういう意味で、僕は最初から行き詰ってるんです。「世の中、なんてつまんねえんだ」ってとこから出発してますから。どっかに必ず面白いもんがあるはずだと探し続けて、いまに至っている。誰も彼もが同じものを格好いいとすることに対して抵抗があるのは、そういう背景があるんだと思います。「みんなと違ってもいいんだ」と確信がもてるようになったので、いまのほうが全然楽しいですよ。ルックスがいいわけでもない僕がジョニーを名乗り、男前豆腐店を名乗る。ギャグなんですよ。でも、それは大きな意味でのデザインなんです。格好悪くても、格好いいものが作れるんだっていう。堂々と男前を名乗ってる心意気こそが男前なんです。
<目次>
まえがき
1安い豆腐に未来はない
まさか豆腐屋になるなんて
うまいもんがあれば幸せだよね
豆腐作らない人間がこんなに?
これじゃあ下請けじゃねえか
なるほど、無理なんだな
大量生産風じゃないやつを
わざわざ輪ゴムをかけた
でっかいからこそ売れるんだ
固まらなくてもいいや
涙のような豆腐
充填豆腐に可能性を見る
ドンドコドンドンドン
寄せ豆腐の水を切ったら?
水もしたたるいいトーフ
ハレの日に食べる豆腐
番長の響きが欲しかった
2ジョニーはなぜ売れたのか
機械にしかできないこと
にがりでうまくなるのは嫌
デザートでいいじゃねえか
大豆を捨ててナンボ
ついに味方がいなくなった
ジョニーが売れちゃおかしい
薄くて広い理由がある
1俵から300パックだけ
ジョニーって微妙に格好悪い
異端児が正統派に勝った
日本もまだまだ面白い
ブログが支えてくれている
キーワードは「UFO」
お湯に入れたら溶けるぞ
恥ずかしさが絵になる
ストロングスタイルでありたい
3妄想こそ創造の原点
第1回ふんどし祭
どこにでもあったら、つまらない
店は上品にまとめた
限定商品はいつも考えている
不親切なほうが面白い
女やねんけど男前
待ってたんだよ
大手メーカーまで倒産した
操業は一度も止めなかった
安く買えたから設備投資を
キャラ先行の豆腐が生まれた
一気に何万パックの世界へ
薄口のジョニーなんてあり得ない
ギターだってカスタマイズするでしょ
なんか最近のジョニーうまくない?
誤解されるぐらいでいい
摩天楼の下で豆腐を作る
4格好悪いから格好いい
JBひとつください
次に出るのはジョニ黒だ
世界の豆を固めてみたい
避けてきた世界に挑戦する
ケの日の豆腐は海外産大豆で
裏テーマはホストクラブ
野外ライブで豆腐の屋台
なんだかもう物凄く
最初で最後の解散ライブ
世界観がなきゃ売れない
「ハズし」でウケたらやめられない
4時間目の下敷き
日本独自の格好悪さ
格好悪いが格好いい
でっけえ顔を格好いいんだよ
悔しくて仕方なかった
年譜
「OTOKOMAE TOFUTEN The Inside Story」
面白かった本まとめ(2010年下半期)
<今日の独り言>
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この「風に吹かれて豆腐屋ジョニー(伊藤信吾)」という本は、「男前豆腐」や「風に吹かれて豆腐屋ジョニー」という豆腐を作っている男前豆腐店代表取締役社長の伊藤信吾さんが書いた本で、特に豆腐作りのこだわりについて書かれています。
価格競争に巻き込まれないように、良いものをとことんこだわって作ることが大切ということがよく分かりましたね。
それから、妄想を実現させること、ネットで知り合った人とも一緒に仕事をしているというのも面白いと思いました。
また、矢沢永吉の本にかなり影響を受けたそうで、おそらく「成りあがり」という本を読んだのだろうなぁと思いました^_^;)
この本もオススメです。
以下はこの「風に吹かれて豆腐屋ジョニー(伊藤信吾)」という本のポイント等です。
「風に吹かれて豆腐屋ジョニー(伊藤信吾)」という本は、とてもオススメです!
・まさか豆腐屋になるとは思ってませんでした。父の仕事は建築業で、子供のころは漠然と「自分も建築をやるのかなあ」ぐらいに考えていた。ところが僕が高三だった1986年、父が豆腐工場の経営にも乗り出した。豆腐と関係ができたのはそのときからです。特別こだわって、おいしいものを作るような工場じゃありません。スーパーが増えてきた時期に、同じ規格の豆腐を大量に安く供給することを目的に作られた普通の量産工場です。大量生産をコンセプトにした工場ですから、要は資金を寝かせないことが重要になる。どんどん作って、どんどん利益を回収する。資金ぐりのスパンを考えたら、建築より豆腐のほうが圧倒的に短い。2~3ヶ月でカネが入ってくるわけで。そういう部分が父には面白かったんだろうと思います。
・当時の僕は浮谷東次郎や矢沢永吉の本にかなり影響を受けていて、「自分は自分の世界観を突き詰めるんだ」なんて鼻息ばかり荒かった。だから、父の仕事を継ぐとかいう発想はあんまりなくて、別の道を歩んでいくんだと思っていた。
・おたま豆腐が人を驚かせたのは、その量でした。600グラムもあったからです。普通の豆腐は300~400グラムだから、倍近くある。当時は「個食化」がキーワードになっていて、豆腐のパックも小型化する傾向があった。だから、おたま豆腐をバイヤーに持ち込んだときも、「こんなでかいの売れるはずがない」と言われました。でも、僕はそうは思わなかった。「うまい豆腐ならいっぱい食うはず。もし残ったら次の日に味噌汁に入れりゃあいいじゃん」ぐらいに考えていた。安い豆腐に未来はないと思ってましたから、商品単価を上げたかった。これは初めて200円ぐらいする商品だったんです。
・お客さんの心理としては、量が半分になったとすると、値段は3分の1ぐらいまで下がらないと高いと感じてしまう。「消費者というのは、値段が高くても少ない量でいろんな種類を食べたいんだ」なんてマーケティングの人はいうけど、実際はそんな商品は「高い!」の一言で敬遠される。みんな豆腐は安いものだと思い込んでいるんですよ。枕詞のように「豆腐のくせに」といわれますから。高い豆腐なんて存在しちゃいけないみたいに。それが悔しいから、僕は「おたま豆腐」「トカタマ。」「どんどこ豆腐」で200円の壁に挑戦し、続く「男前豆腐」「風に吹かれて豆腐屋ジョニー」で300円の壁に挑戦した。
・01年に2代目おたま豆腐、トカタマ、どんどこ豆腐と3つの新商品を出し、ようやくうちの会社のイメージが変わりつつありました。安い豆腐を大量に作ってる、どこにでもある豆腐メーカーのひとつ。そんなイメージが少しずつ少しずつ崩れていったんです。バイヤーも「三和さん、最近うまいの作るじゃん。次はどんなのやるの?」なんていってくれるようになった。値段だけで評価される世界から抜け出す道が見えてきたのかな、ぐらいの時期ですね。値下げ競争に巻き込まれたら、一巻の終わりです。そうなれば、豆腐に「魂」を入れることなんてできませんから。僕がいまでも豆腐の形に異常にこだわるのは、値下げ競争やパクリから自由でいるためです。変わった形というのは、自分たちの味を守る手段でもあるんです。
・実際思ったより幅広い層に受け入れられて、保守的だろうと予想していた女性たちもファンになってくれた。スーパーで縦置きされてる男前豆腐を見たお客さんが、「この水切り板の意味が分かってるんですか!」と店員をしかりつける事件まであったぐらいで。男前豆腐あたりからマスコミで紹介される機会も増えたんですが、やっぱりお客さんが盛り上げてくれたおかげだと思ってます。評判を聞きつけたお客さんがスーパーに「男前豆腐を入れて」と投書してくれたり途中で入荷をやめた店でも、お客さんのリクエストで再度並べてくれたり。そんなことが何度もありました。僕たちの営業力というより、お客さんがスーパーの定番商品に育ててくれた。
・でも、やっぱり周囲から反対されましたよ。工場でもバイヤーからも、さんざんにいわれました。「豆腐は庶民の食べ物なんだから、こんな高くちゃ買うわけないよ」と。「豆腐のくせに」って発想ですよね。メーカーにとっては、30円の豆腐を100パック売るのと、300円の豆腐を10パック売るのじゃ、まったく意味合いが違う。商品単価が生命線なんです。僕としては単価の高い豆腐にしか生き残る道はないと考えてるわけで、この部分でゆずれるはずがない。バイヤーから「あと5円下げろ」「あと10円下げろ」と迫られる世界から解放されて、メーカー主導で納得のいく豆腐を作る。これだけいい原料を使い、これだけ製法を工夫したから、この値段になりますと。そういう直球勝負がしたい。スタート地点からもう発想が違うわkです。高い豆腐を毎日食べる必要はないんです。僕もそんなことは求めてない。1週間に一度でも2週間に一度でもかまわない。「よーし。今日は豆腐食うぞ!」って日にだけ買ってくれればいい。「ハレの日に食う豆腐」という位置づけなんです。
・結果的に、ジョニーはものすごく手間のかかる豆腐になりました。一口食べただけで、分かる同業者には分かると思います。相当、手間をかけて作ってるなぁと。色物的にヒットした部分もありますが、中身は本格派なんです。
・実は、僕が一緒に仕事してる人の多くは、ネット上で知り合った人々なんです。トカタマの村上由香さんもそうだし、いま懐刀となってくれている切り絵作家のアンクル・ボブさんもそう。ホームページ制作をお願いしてるモンキーダッシュの太陽さんもそうですね。のちに京都に移るとき、工場のシンボルとして建てたジョニー像を作ってくれた職人さんとも、御影石で男前豆腐店の看板を作ってくれた石屋さんとも、ネットでつながった。
・みんなで相談してって世界からは、いいものは生まれないという確信がある。音楽でいえば、作詞作曲の世界を組織化することはできませんよね。やっぱりクリエイティブなところは個人作業でないと無理な部分がある。実際、稟議の世界の豆腐メーカーはことごとくつぶれていってるわけだから。みんなで賛成してやったことで倒産したら、いったい誰が責任をとるんだと。民主主義でもの作りはなかなか難しいと思うんですね。じゃあ、僕が何を基準にしてるのかというと、自分が見てきたものを基準にしてるんでしょうね。いままで食ってきたもの、見てきたもの、いろいろです。味だけでなく、デザインについてもそうです。造形でいえばハーレーのエンジンが格好いいなとか、ロングボードのフィンの形が格好いいなとか、豆腐とは関係ないような、いろんな世界に影響を受けている。
・なぜ二子玉川なのか。高級住宅街のマダムたちと男前豆腐店のギャップがちょうどいい感じに思えたからです。僕は経営者というより、ものを作る人間として面白いことをやりたいという気持ちが強い。普通なら会社を大きくするために、直営店をどんどん増やしていこうとか、フランチャイズ化しようとか、そっちで発想する。でも、フランチャイズなんて、絶対にあり得ない。どこにでもあるというのが、一番つまんないことだと思うので。直営店だって、東京にひとつと関西にひとつあればいい。その次に出店するとしたら、いきなりニューヨークぐらいで。ロケーションの妙味って重要ですよね。江面としてみた時に笑っちゃう感じがないと。僕も千葉の田舎育ちですから下町に偏見はありませんが、東京でも北千住に男前豆腐店があったんじゃ、意外性がない。面白くもなんともない。やっぱり二子玉川とか銀座みたいな高級な場所で浮きまくるのがロケンローです。
・普通、夏場に向けて、出荷が3倍増ししていくんです。やっぱり冬場に豆腐は売れないので。しかし、05年の冬は出荷が減らずに逆に増えていったから、「06年の夏はどうなっちゃうんだろう?」と心配してた。春段階、4月のピークは1日2万パックでしたが、2万パックの3倍なんていうと6万パックとか、考えられない数字になるので。ところが、その予想すら上回る注文が入ってきていて・・・・・。ジョニーの1日の出荷量で見ると、5月に3万5000パックを超え、6月には6万パックに近づいた。夏本番はこれからですから、ここで再びラインを大増強して、7月には1日10万パック超を作れる体制にしました。しかも、これは京都だけの数字です。茨城で作ってるぶんを合わせると、とんでもない数字になる。関西のセブンイレブンやジャスコがジョニーを扱ってくれることになったとき、1日に8000パックなんて注文が入るんですよ。ひとつの会社だけで。ついこないだまでトータルで何千パックという売り買いをやっていたのが、自分でも想像を絶する世界に入っちゃった。あっという間です。
・「社長的な業務」って、そんなに重視していない。僕の仕事はネタ作り。つまり、テストして新商品を作って、どう売るかの仕組みを考えること。それが90%です。ものを作るのが楽しくて、その延長線上で会社をやってる感じがある。経営者である前に、豆腐のことばっかり考えている。経営者面して外ばっかり出て、握手して名刺交換して・・・・・そんなんで何が生まれるんだろうって思ってる。僕なんかオーラがゼロですよ。食堂でもちっちゃくなって飯食ってますから。「やあやあやあ、君たち元気かい?」なんてことは絶対にいわない。社長風情みたいなののどこが格好いいんだろう、と感じてるほうなので。でも、一緒にものを作ってる人間にとっては、やっぱりウザイ存在だと思いますねえ。相変わらず自分が納得するまで妥協しない。現場の人間は「社長は何が気に食わないんだろう?いまのままでも十分おいしいのに」って感じてると思います。一人でグジグジ悩んでるから、はたから見たらかなり格好悪いんじゃないかな。工場にはほぼ毎日出ています。土日も関係ありません。午前中だけ休みをとったりする程度で、基本的には年中無休。毎日行って設備の調整やってれば、何かしらの発見があるんですよ。あまり仕事だと思ってませんから。僕にとってのストレスは、物事が動いていかないこと、ひらめかないこと、刺激がないこと。だから、仕事がストレス発散になっている。機械だって、ものすごくカスタマイズしています。何度も工程を変えるから。商品が完成して世に出てからも、よりおいしくしようと作り方を改良する。毎日ものすごい試行錯誤がある。
・思えば小学校から中学高校、大学と、僕はずっと悶々としていた。自己表現が全然できなくて。仕事を始めてからのほうがよっぽど自己実現できている。同級生がいまの僕を見たら、「あんな地味だったやつが、なぜ?」って感じだと思います。学校時代って、価値観がひとつじゃないですか。足が速くて明るい子だけがモテて。僕なんか運動がまったくダメで、バスケットボールでシュート入れたりすると、体育の先生がビクリした顔をする。あのときの先生の顔が忘れられない。最初からバカにしてるんですよね。そういう世界が嫌いで嫌いで仕方なかった。浮谷東次郎を読んで「自分のアイデンティティとは何か」なんて考えるようになったのも、主流派じゃなかったからなんでしょう。コンプレックスの塊ですよ。本当は僕だってホームラン打ちたいんですよね。そりゃ格好いいですよ、甲子園に出たりとかね。でも、どうしてもできなかった。それで、その悔しさを、どっかほかの分野で晴らしてやろうって気持ちが強かったのかもしれません。そういう意味で、僕は最初から行き詰ってるんです。「世の中、なんてつまんねえんだ」ってとこから出発してますから。どっかに必ず面白いもんがあるはずだと探し続けて、いまに至っている。誰も彼もが同じものを格好いいとすることに対して抵抗があるのは、そういう背景があるんだと思います。「みんなと違ってもいいんだ」と確信がもてるようになったので、いまのほうが全然楽しいですよ。ルックスがいいわけでもない僕がジョニーを名乗り、男前豆腐店を名乗る。ギャグなんですよ。でも、それは大きな意味でのデザインなんです。格好悪くても、格好いいものが作れるんだっていう。堂々と男前を名乗ってる心意気こそが男前なんです。
<目次>
まえがき
1安い豆腐に未来はない
まさか豆腐屋になるなんて
うまいもんがあれば幸せだよね
豆腐作らない人間がこんなに?
これじゃあ下請けじゃねえか
なるほど、無理なんだな
大量生産風じゃないやつを
わざわざ輪ゴムをかけた
でっかいからこそ売れるんだ
固まらなくてもいいや
涙のような豆腐
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ドンドコドンドンドン
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ジョニーって微妙に格好悪い
異端児が正統派に勝った
日本もまだまだ面白い
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お湯に入れたら溶けるぞ
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第1回ふんどし祭
どこにでもあったら、つまらない
店は上品にまとめた
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女やねんけど男前
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大手メーカーまで倒産した
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安く買えたから設備投資を
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一気に何万パックの世界へ
薄口のジョニーなんてあり得ない
ギターだってカスタマイズするでしょ
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誤解されるぐらいでいい
摩天楼の下で豆腐を作る
4格好悪いから格好いい
JBひとつください
次に出るのはジョニ黒だ
世界の豆を固めてみたい
避けてきた世界に挑戦する
ケの日の豆腐は海外産大豆で
裏テーマはホストクラブ
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なんだかもう物凄く
最初で最後の解散ライブ
世界観がなきゃ売れない
「ハズし」でウケたらやめられない
4時間目の下敷き
日本独自の格好悪さ
格好悪いが格好いい
でっけえ顔を格好いいんだよ
悔しくて仕方なかった
年譜
「OTOKOMAE TOFUTEN The Inside Story」
面白かった本まとめ(2010年下半期)
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