<金曜は本の紹介>
「タクシー王子、東京を往く。(川鍋一朗)」の購入はコチラ
この本は、日本交通というタクシー会社の3代目若社長である川鍋一朗さんが、実際に社長自らがタクシーを運転した記録です。
具体的には2007年大晦日から2008年1月28日にわたって繰り広げられた、笑いあり、涙あり、意外な出会いあり・・・学びと気づきに満ちた13乗務の奮闘劇です。
徹底した高品質な顧客サービス、ITを活用したデジタルGPS無線配車システムを活用して、1日に売り上げを9万円を達成したり、逆に料金踏み倒されたり、お相撲さんを乗せたり、知り合いを乗せたり、飲食業にスカウトされたりと、その生々しい姿には興味を持ちながら楽しく読むことができました。
一般の新人の場合、1日300km走り、30回お客様を乗せるのが一つの指標のようです。早い段階でそれに到達しないドライバーはその後も成長しないことが多いようです。なお、1日平均売り上げは約51,000円とのことです。
それから、意外とチップをもらっているんだなぁということが分かりました。
この本は、タクシーの実情等がよくわかり、とても面白いと思います。とてもオススメです!
以下は、そのほか面白かった点などです。
・地理がわからないのが、最大の心配事だった。でも、それ以前に、やるべきルーティンと、言うべきせりふばかりに気をとられて、肝心の行き先を忘れた。ちゃんと復唱したにもかかわらず!よっぽど緊張していたんだろうなぁ。自分では気づかなかったが、班長によれば、目一杯アクセルを踏み込んで、ものすごい勢いで走り出したらしい。
・道行く人がお客様かどうかの判断も予想以上に難しかった。班長によると、経験を積めば遠くからでもお客さまが手を挙げるかどうか、そして行き先もある程度読めるようになってくるというから驚きだ。それと、途中で他社のタクシーに追い抜かれてお客様をとられてしまったケースもあった。昔は追い抜いてお客様を奪うことは、暗黙のルールでご法度だったのだが、規制緩和で新規参入が自由化され、タクシーの台数が急増した今や、お客様の奪い合いは仁義なき戦いと化しているのだ。
・特に微笑むわけでも、哀れむわけでもなく。ただ淡々と、彼女は千円札を残して、デパートの中に消えていった。そのさりげなさに目頭が熱くなる。普通、チップは、「お釣りとっておいて」というのが主流。お釣りを受け取った後、わざわざチップをくれると、なにかありがたみが増した感じだ。
・東京の地理を覚える上でまず最初に暗記したのが、皇居を起点に放射線状に伸びる幹線道路だった。まず、内堀通り沿いに位置する9つの起点を丸暗記。「祝田橋、桜田門、国会前、三宅坂(息継ぎ)、半蔵門、田安門、九段下、平川門、大手門」そしてそれぞれ、愛宕下通り、桜田通り、六本木通り、青山通り、新宿通り、早稲田通り、目白通り、白山通り、永代通りの起点になっている。
・冷静になるともうひとつピンと来た。これも丸暗記した山手線29駅、そのかなりの部分が明治通りと並走しているのだ。恵比寿、渋谷、原宿、代々木、新宿、新大久保、高田馬場、目白、池袋、大塚、巣鴨、駒込、田端・・・・・地図を再確認すると、この区間、つかず離れず走っている。つまり、渋谷から池袋まで行くなら、明治通りというのは当たり前のルートだったわけだ。
・なお、私の携行品は以下のようなものである。日報板、地図「都内交通案内地図」(東京タクシーセンター)、「東京通り名マップ」(昭文社)、「首都高速マップ」(首都高速株式会社)、携帯&ハンズフリーのイヤホン、デジカメ、ハンドタオル&歯ブラシセット、兵糧(バナナ、おにぎり、カロリーメイト、ソイジョイ、チョコレートなど。あと気分転換にフリスクは必須アイテム。飲み物は、コンソールボックスに入る350ミリリットルのエビアンのペットボトル、オロナミンC、眠眠打破。眠眠打破はカフェインだけでは効かないときの最終兵器だ。
・蘇我を2回引き、銀座に並べば一発目から八王子。そして、終盤に来て幻の成田を釣り上げた。「さすがに社長は引きが強い」と、社内ではちょっとした評判になっているという。フフフッ。振り返ってみれば、オドオド、ドギマギしていた最初の頃に比べれば、格段の進歩を遂げたと思う。もちろん、前回の3000円自腹の一件といい、まだまだ失敗はある。道が分からなくて、ビクッとするたびに、ちょっとずつ寿命が短くなっているんじゃないかと思う。でも、なんとか切り抜ける術をずいぶん学んだ。そして、それほど運転が好きなほうでもない私が、長時間の運転をまったく苦にしなくなってきた。ドライビング・ポジションが完璧にはまって、自分とクルマが人馬一体になる感覚が芽生え、一日16時間ハンドルを握っているうちに、”ランニング・ハイ”ならぬ”タクシー・ハイ”も経験するようになった。この状態に入ると、道を行く歩行者の挙動が見るともなく自然に目に入り、微妙に手が挙がりかける予備動作のようなものだけで停車できるようになる。まるで狩人のようだ。狭い路地の車幅感覚もすごく精密になった(バックは相変わらずヘタですが)。
<目次>
序文
2007年
12月27日(木)晴れ
私はなぜタクシーに乗るのか
「社長、それだけはやめてください!」と言われながら
12月28日(金)曇り
社員へのドライバー宣言
「1ヵ月間、私はいなくなったと思ってください」
12月29日(土)小雨
同乗指導でさっそくパニック!
まさか、いま聞いたばかりの行き先を忘れるなんて・・・・・
12月31日(月)晴れ 乗務初日
大晦日、いざ出陣!
明治通りが輝いて見えた/いきなりの羽田空港行き/お客様から飲食業へのスカウトが
2008年
1月2日(水)晴れ 乗務2日目
お正月、澄んだ空気のなかを往く
デジタルGPS無線でタクシーが変わる!/成田は遠い・・・・・/早くも顔バレ/料金踏み倒されました(涙)
1月4日(金)晴れ 乗務3日目
「お客さま、道に不案内なもので・・・・・」
1日の乗務の流れ<朝編>/社長としての乗務/お相撲さんと中央フリーウェイ
1月7日(月)曇りのち雨 乗務4日目
車内全面禁煙が始まった
タクシー運転手トイレ事情/日交ファンに心から感謝/接客のクオリティで勝負/禁煙で車内に気まずい空気が/歌舞伎町、破れた千円札の悲哀
1月9日(水)曇り 乗務5日目
タクシー仁義なき戦い
お天道さまは見ている!/「ラジオつけて」のリクエスト/どこを走っているかはバレている/超ロング!蘇我へGO!
1月11日(金)晴れ 乗務6日目
営収8万円超え!タクシーの女神が微笑んだ
社内からのさまざまな反響/タクシーはいいね/ビバ蘇我!アゲイン!/手抜きなし、洗車にかける心意気
1月14日(月)曇り 乗務7日目
2つの「桜」の残した「徳」
母を乗せての珍道中/路上仮眠、「魔」の誘惑/心の拠り所は家族/社長就任の翌日に逝った父
1月16日(水)晴れ 乗務8日目
戦々恐々、夜の銀座乗り場に突撃!
運転手になって「ファクト」を知る/「左3回」の法則/夜の銀座はプロの領域
1月18日(金)曇り 乗務9日目
勤勉さで勝負。営業回数自己新記録を更新
「急ぎめで」という表現/まさか後輩が乗ってくるなんて
イチロー流タクシー術 タクシーの基本/タクシーの応用
1月21日(月)曇り 乗務10日目
専用乗り場を徹底的に攻める
チップ最高記録更新(涙)/爆睡しているお客様を起こす秘密兵器
イチロー流タクシー術<特別編>地理音痴が紹介する都内抜け道ガイド
1月23日(水)雪のち雨 乗務11日目
雪の日に待ちかまえていたものは
マッキンゼー同窓会/理想と現実の間で/スリル満点の成田行き/ついに致命的なミス発生か!?/営収自己最高記録を更新!
1月25日(金)晴れ 乗務12日目
走って、走って、走りぬく!限界への挑戦
月末で金曜で50日で給料日/お客さまに教わる最新ホスト事情/営収9万円超え、超人の領域へ
1月28日(月)曇り 乗務13日目・最終日
タクシードライバーとしての誇り
絨毯爆撃でなく、ツボを突こう/給料日直後は1万円札の連続/「黒タク スタンダードマニュアル80」/拾うから選ぶタクシーへ
あとがき
面白かった本まとめ(2007年)
面白かった本まとめ(2006年)
面白かった本まとめ(~2006年)
<今日の独り言>
4歳の息子は毎日ピアノを練習しているのですが、毎日少しずつうまくなっているのには驚きます。やはり継続は力なりですね・・・。私も最近ピアノを毎日練習しているのでうまくなってきました。昔よりうまくなったのでは?と勘違いしそうです・・・。