<金曜は本の紹介>
「脳には妙なクセがある(池谷裕二)」の購入はコチラ
「脳には妙なクセがある」という本は、脳研究に携わる科学者が、過去5~6年ほどの間に雑誌やネット上で書きためていた100近いエッセイを再編成してつくられたものです。
特に「運動が得意ほど勉強の成績がよいこと」「カロリーを抑えると長寿効果がある」「応援は効果がある」とは知っていましたが、ネアンデルタール人とヒト(黄色人種と白人)は交配していたや、マイコプラズマを化学合成して人造生物として作られていたとは驚きましたね!
親がいないつまり進化していない生物とは、何だか考えさせられてしまいます。
そのほか以下についても面白いなぁと興味深く読めましたね。
・脳が大きな人ほどIQが高い
・運動が得意な生徒ほど、勉強の成績もよいが特に算数と国語の読解力に相関があった
・人差し指が短い人は投資が強い
・テストステロンというホルモンが多かった朝は投資家は儲かる
・脳は入力より出力が重視されているので参考書を繰り返し読むより、問題集を解く方が効果的な学習
・体温が低いと寿命が長い
・赤色や黄色などの長波長の光は充足感を感じるので認知機能を低下させる。そのため勉強するならカーテンは赤色系はやめたほうがよい。
・音痴の人は空間処理能力が低い
・ビタミン剤を飲むと犯罪が減る
・脳によい栄養素は、オメガ3不飽和脂肪酸(DHAなど)、クルクミン、フラボノイド、ビタミンB類、ビタミンD、ビタミンE、その他のビタミン、コリン、亜鉛、セレン、銅、鉄。脳にあまりよくない栄養素は飽和脂肪、カルシウム
・プレッシャーのかかる試験では、「試験への不安を書き出す」と点数が向上しやすい
・女性に「どっちがいいと思う?」と服などを尋ねられたら「本当はもう心の中で決まってるんでしょ?」と返答するのがベスト
・「よく生きる」ことは「よい経験をする」こと
・就寝前は記憶のゴールデンアワー
・学習は一気に詰め込むより適度な間隔を保ちコツコツと行うほうが記憶保持という点でよい
・寝ている間は記憶の整理と定着が交互に行われている
・右側の頭頂葉の「角回」と呼ばれる部位を刺激すると被験者の意識は2mほど舞い上がり、幽体離脱をを体験できる
・何事も始めた時点で、もう半分終わったようなもの
「脳には妙なクセがある」という本はとてもオススメです!
以下はこの本のポイントなどです。
・わずかな傾向とはいえ、脳の大きな人ほどIQが高いことがわかりました。とくに「大脳皮質」がポイントで、皮質が厚ければ厚いほどIQは高かったのです。博士らは、さらにデータを解析し、皮質の中でも「前頭前野」と「後側頭葉」が決め手であることを突き止めました。
・イリノイ大学のヒルマン博士らが公立小学校の3年生と5年生について運動能力と学力の関係を大規模に調べたところ、両者に正の相関を認めたというのです。つまり「運動が得意な生徒ほど、勉強の成績もよい」という、なんとも身もふたもない関係があるというわけです。とくにエアロビクスなどの有酸素運動が学力とよく一致しました。逆にBMIが高い生徒、つまり肥満気味の生徒は、学業の成績が低い傾向にありました。
・カリフォルニア州の教育省も、運動と学力について、ほぼ同じようなデータを発表しています。こちらはさらに面白いものです。科目別に解析されているのです。運動能力については、たとえば20mの「反復シャトル走」を指標としています。この成績ともっとも強く相関する科目は、どうやら「算数」らしいのです。運動と算数の成績は、なんと48%もの率で一致するといいます。国語の読解力についても40%の一致率を示すといいます。
・なんと、人差し指が薬指より短いひとのほうが、株取引で「儲け上手」だというのです。ケンブリッジ大学のコーツ博士らは、ロンドンの個人投資家49名を集め、指の比率と株取引における年間損得額を比較しました。その結果、薬指に対する人差し指の比率が小さければ小さいほど収入が多いことがわかったのです。比率の小さい人ほど、ビジネス現場で長くサバイバルできることも示されました。
・トレードの損得額と血中ホルモンとの関係をつぶさに調べたところ、興味深い傾向が見えてきました。テストステロンが多かった朝は、その日に儲ける金額が多かったのです。逆に、大損する日はテストステロンが少ない。運勢は朝にすでに決まっている-この実験データを知ってしまうと、「今日はツイテるぞ」といった勘は、単なる思い込みではすまされない「何か」が、私たちの身体で実際に生じているようにも思えてきます。強運のトレーダーたちは、「勝負日」や「引きどころ」の体内シグナルを、本能的に感知しているのかもしれません。
・私たちの脳は、情報を何度も入れ込む(学習する)よりも、その情報を何度も使ってみる(想起する)ことで、長期間安定して情報を保存することができるのです。これを拡大して解釈すれば、「参考書を繰り返し丁寧に読むより、問題集を繰り返しやるほうが、効果的な学習が期待できる」となります。入力よりも出力を重視-脳はそう設計されているようです。
・「カロリス」という言葉をご存じでしょうか。カロリー・リストリクションを省略した用語で、大ざっぱに言えば「カロリー摂取を控えて健康に気を遣おう」という意味です。食事量を抑えれば脂肪率や血糖値は低下するでしょうから、いかにも健康によさそうな雰囲気があります。しかもダイエットや食費節約にもなって一石二鳥です。しかし、カロリスの話題は想像以上に深いようです。カロリスの効果が顕著に表れるのが寿命です。その長寿効果は強烈で、小さな虫からほ乳類に至るまで、生物界にほぼ普遍的に観察されます。サーチュインやインスリン関連の分子など、長寿効果のメカニズムも科学的に解明されつつあります。どのくらい食事量を制限すればよいかは研究者によって意見が異なりますが、およそ20~30%くらいと見積もられています。
・日本人を含むアジア人は、欧米人にくらべ、平均して0.5℃以上も体温が低いのです。ネズミでも、遺伝的に体温が低い血統は、寿命が長いことが知られています。0.3~0.5℃体温が低いと、同じカロリー摂取量でも、オスで12%、メスで20%も寿命が延びます。日本人の長寿も体温と関係があるかもしれません。
・赤色や黄色などの長波長の光は「幸福感」と関連しています。幸福感は一種の充足感であり、充足感は学習欲を、ひいては認知機能を低下させます。たしかに、人は満足するとそれ以上を欲しなくなる傾向があります。勉強部屋に赤色系のカーテンは厳禁であるとはしばしば聞く通説ですが、そんな経験則も無根な都市伝説ではなさそうです。
・実験によれば、文章のミス探しや、説明書の重要事項を記憶するときには、むしろ赤色のほうが成績が向上するようです。博士らによれば、赤色は心理的に回避的な傾向を生み、警戒心を高め、一方で、青色は積極的で好戦的な傾向に促すといいます。したがって、極度な集中力が要求されるケースでは赤色が、新しいデザインを考えたり、ブレインストーミングをしたりと、創造性が要求されるケースでは青色が成績がよいといいます。
・意外なことに、ビルキー博士らのデータによれば、音痴の人は空間処理能力が低いというのです。これはメンタル回転という簡単な試験で確かめられます。立体図形を頭の中でグルグルと回転させる試験です。モニターに映し出された物体を立体的に回転させ、その図形が別のどの図形と一致するのかを言い当てるのです。すると、音痴の人の正答率は、通常の半分以下であることがわかります。不思議です。音程感覚と空間把握力に一体どんな関係があるというのでしょう。現時点では謎としか言いようがないのですが、ロンドン大学のバタワース博士らは「もともと音階は空間として表現されるもの」と指摘しています。たしかに五線譜では上のほうに音符があるほど高音であることを意味していますし、鍵盤では右に行くほど高音です。バタワース博士は「数学的知覚と音楽的知覚はともに演奏活動に関与する空間表象を共有している」と考察しています。もしかしたら、メロディーの音程構造は立体図形と同じ脳回路で処理されているのかもしれません。
・カリフォルニア大学ロサンゼルス校のゴメス=ピニルラ博士らが作成した最新の脳によい/わるい12の栄養素・最新リストは以下の通り。このリストには「よい」ものだけでなく、「わるい」ものも含まれていることに注意してください。
1.オメガ3不飽和脂肪酸(DHAなど)
ヒト:高齢者の認知機能低下の改善、ムード障害の治療
2.クルクミン(ウコンのスパイス成分)
動物:脳損傷による認知機能低下の改善、アルツハイマー病モデル動物で認知機能低下の改善
3.フラボノイド(ココア、緑茶、銀杏の葉、柑橘類、ワインに含まれる)
ヒト:高齢者の認知機能の向上
4.飽和脂肪(バター、ラード、ヤシ油、綿実油、クリーム、チーズ、肉に多い)
ヒト:高齢者の認知機能低下を促進
5.ビタミンB類(豆類、豚肉)
ヒト:ビタミンB6やB12や葉酸の補充によって、広範な年齢の女性で記憶力が向上
6.ビタミンD(魚の肝、キノコ、牛乳、豆乳、シリアル食品)
ヒト:高齢者の認知機能に重要
7.ビタミンE(アスパラガス、アボカド、豆類、オリーブ、ホウレンソウ)
ヒト:加齢による認知力低下を遅延
8.その他のビタミン
ヒト:抗酸化作用のあるビタミンA、C、Eは高齢者の認知機能低下を遅延
9.コリン(卵黄、大豆、牛肉、鶏肉、レタス)
ヒト:欠乏すると認知機能が低下
10.カルシウム(牛乳)、亜鉛(カキ、豆類、穀物)
セレン(豆類、シリアル食品、肉、魚、タマゴ)
ヒト:血清中のカルシウムが高いと加齢による認知機能低下が促進。亜鉛は加齢による認知力低下を遅延。長期にわたるセレン不足は認知機能低下に関与
11.銅(カキ、牛・羊、肝臓、黒糖蜜、ココア、黒こしょう)
ヒト:アルツハイマー病の認知機能低下の程度は血漿中の銅濃度の低さと相関
12.鉄(赤身肉、魚、家禽、豆類)
ヒト:若い女性において認知機能を改善
・とりわけ一回の試験で人生が決まってしまうような強いプレッシャーのかかる状況では、普段どおりの実力を発揮することは誰でも困難なはずです。そんなときはどうしたらよいのでしょうか。博士らが提案する対応策は「試験への不安を書き出す」ことです。すると緊張感がほぐれて、10%ほど点数が向上しました。ちなみに、堂々として緊張しないタイプの生徒では、書いても成績は変わらなかったとのこと。誰にでも効果があるわけではないようです。
・目の前のモニターに「握れ」と表示が出たら、手元のグリップを軽く握るという実験です。そして、時々、「握れ」の合図の前に、サブリミナル映像で「ガンバレ」「ナイス」などとポジティブな単語を一瞬だけ表示するのです。あまりに一瞬ですので、どんな文字が出たのかはわかりません。ところが、握る力が二倍に上昇しました。励ましとは関係のない文字を表示しても効果はありませんでした。つまり、応援は本当に効果があるというわけです。しかも、かりに励ましが意識に上らなくても、励まされれば確かにやる気が出るのです。
・衝撃的なことは、ヒト自身もネアンデルタール人と交配してきたらしいのです。ネアンデルタール人は50万年前に人類と分岐した後、別の「種」として生き、3万年前に絶滅しました。ところがネアンデルタール人の骨からゲノム解析を行った結果、彼らの絶滅の直前にヒトと交雑した形跡があることが判明しました。私たち現生人類の遺伝子の1%以上がネアンデルタール人に由来しているのです。
・ネアンデルタール人の交雑の発見から、もう少し奥深いことがわかってきました。混血が認められるのは、現代人でも白人や黄色人なのです。アフリカ系の黒人にはネアンデルタール人との混血はみられませんでした。つまり、こういうことです。数万年前、私たちの祖先の現代人の一部が、果敢にもアフリカ大陸を離れて、ヨーロッパ大陸に渡ったのです。そこには、すでにネアンデルタール人が住んでいました。新参者のヒトと古参者のネアンデルタール人とのあいだで、どのような交流があったのかは想像の域を出ませんが、いずれにしてもDNAに残る痕跡から、交雑が生じたことは確かです。新大陸へ移住した冒険家(あるいは、逃亡者、または追放された者?)が、その後、白人・黄色種へと変化したというわけです。つまり、ヒトという「種」で考えた場合、アフリカ黒人こそが純血、つまり血統証付き現代人ということになります。
・神がヒトに与え給いし賜物とも言える「奇跡の遺伝子」があります。「FOXP2」という名の遺伝子です。ヒトを他の動物たちと決定的に隔てているのは、高度な認知機能です。文章を作ったり、道具を使ったり、踊ったり、料理をしたり、芸術作品を生んだりと、ヒトの創意・創作の能力は卓越しています。人類考古学的な調査によれば、20万年以前の遺跡には創造的行為を感じさせる痕跡はほとんどありませんが、ホモサピエンスが誕生して以降、後期旧石器時代に、創作力の爆発が起きていることがわかります。これに相当する時期、ヒトのFOXP2遺伝子の2カ所に変異が起こっていると考えられます。FOXP2はヒトだけでなく、サルやマウスをはじめ、ほかの動物たにもあります。しかし、ヒトのFOXP2は、その2カ所で変異が生じているのです。わずかな2カ所の変化ではありますが、この変異こそがヒトの能力に劇的な相転移を引き起こしたようです。この新しいFOXP2を手に入れたことによって、ヒトは言葉を操ることができるようになったようなのです。そもそもFOXP2の発見の経緯が言語の研究からです。言語障害のある家系で、原因となる遺伝子を探っていったところ、FOXP2の変異に行き着いたというわけです。ですから、FOXP2が言語と深い関係があることは確かなことです。この人類の至宝ともいうべきヒト型FOXP2遺伝子を、なんとマウスに組み込んでみるという、神をも恐れぬ大胆な実験が行われました。マックス・プランク研究所で行われた研究です。マウスは、言語を操るための舌や咽頭などの身体道具は持っていませんから、さすがに言葉をしゃべったりはしませんが、ヒト型FOXP2を埋め込まれたマウスは声質や探索意欲が変化していることがわかったのです。さらに、大脳皮質の一部で、神経繊維が長くなり、シナプス伝達の可塑性も増強されていました。
・「ねえ、どっちがいいと思う?」、洋服を両手に持ちながらそう尋ねる女性。男性のセエンスが試されているのでしょうか。カップルだったらブティックで、夫婦だったら外出前の朝のシーン-どれほど多くの男性が、女性のこの質問に頭を悩ませていることでしょう。この質問に対するベストな返答は、「本当はもう心の中では決まってるんでしょ?」と爽やかな笑顔で切り返すことだと。
・脳という自動判定装置が正しい反射をしてくれるか否かは、本人が過去にどれほどよい経験をしてきているかに依存しています。だから私は、「よく生きる」ことは「よい経験をする」ことだと考えています。すると「よい癖」がでます。「頭がよい」という表現には多義性がありますから、その定義を一概に論じるのは難しいのですが、私は、頭のよさを「反射が的確であること」と解釈しています。その場その場に応じて適切な行動ができることです。苦境に立たされても、適切な決断で、上手に切り抜けることができる。コミュニケーションの場では、瞬時の判断で、適切な発言や気遣いができる。そんな人に頭のよさを感じます。このような適切な行動は、その場の環境と、過去の経験とが融合されて形成される「反射」です。だからこそ、人の成長h「反射力を鍛える」という一点に集約されるのです。そして、反射を的確なものにするためには、よい経験をすることしかありません。
・睡眠時間が短いことはなんの自慢にもならないし、ましてや免罪符にもなりません。理由としては、睡眠は必須な生物学的プロセスであるということ。睡眠が実質上すべての動物に認められるという事実がそれを物語っています。実際、睡眠を完全に剥奪すれば必ず死に至りますし、わずかな睡眠不足でも学習・認知機能が低下します。睡眠は単なる休憩ではありません。仕事に匹敵、いえ、それ以上に大切な行為だと思います。短眠を強調することは、栄養失調や拒食症であることを自慢することに似て、健全ではありません。
・短眠タイプの遺伝子はいくつか発見されています。たとえばカリフォルニア大学のフー博士らの研究が有名です。彼らの発見した遺伝子はDEC2ですい。博士らは、短眠家系で原因遺伝子を追跡し、DEC2を割り出しました。DEC2はアミノ酸が482個連なったタンパク質ですが、短眠タイプの家族では、このうちのわずか1つ、385番目のアミノ酸が通常タイプのものと異なっていたのです。博士らは、この短眠型の変異DEC2遺伝子を、ネズミに組み込んでみました。すると、ネズミの一日の活動時間が2.5時間も延びることがわかりました。同じような現象は、なんと、ハエに組み込んだときにも観察されました。どうやら変異DEC2の効果は、動物種を超えて普遍的なようです。
・「睡眠の効果を最大限に利用するためには、起床後の朝ではなく、睡眠直前の夜に習得したほうがよい」と解釈できるからです。実際私は、就寝前の1~2時間は仕事に充てるよう、普段から気をつけています。一種のおまじないのようなものかもしれませんが、「就寝前は記憶のゴールデンアワー」であることを信じて、以前から実践しています。
・結局、学習は、一気に詰め込むよりも、適度な感覚を保ちつつコツコツと行うほうが、記憶保持という観点からよいといえます。
・寝ている間には、浅い眠りと深い眠りが繰り返されます。大ざっぱにいえば、浅い眠りの時には「海馬」がシータ波という脳波を出し、情報の脳内再生を行っています。逆に、浅い眠りの時には大脳皮質がデルタ波を出し、記憶として保存する作業を行っています。つまり寝ている間には、記憶の「整理」と「定着」が交互に行われているというわけです。
・生命倫理を揺るがす衝撃な実験がついに行われました。いや、行われてしまった、と言うべきでしょうか。人造生物が誕生したのです。造られたのはマイコプラズマという細菌。マイコプラズマは肺炎の病原菌としてご存じの方も多いと思いますが、生命科学界では、ゲノムの全DNA配列が解読された世界初の生命体の一つとして有名です。次に彼らが着手した実験が、解読したDNA配列を手本にし、試験管の中で全ゲノムを化学合成することです。高度な科学技術を駆使し、この試みは見事に成功しました。そして、この人工DNAを、別種の細菌のDNAと入れ替えたところ、その細菌がマイコプラズマに変身したのです。この人造生物は、正常な新陳代謝を行い、分裂増殖する「完全なる生命体」でした。生物には親もあれば、子もあるのが普通です。しかし、この細菌の祖先は「誰」なのでしょう。それだけではありません。ヴェンター博士らは遺伝子のミスコピーまでを意図的に導入して、変異マイコプラズマを創り出しました。これは遺伝疾患、つまり「病気」のマイコプラズマと呼んでよいでしょうか、それとも異形の新生物種でしょうか。既成の生命観が崩壊し、クラクラとめまいがしてきます。神をも恐れぬ試み。科学者の飽くなき好奇心はどこまで突き進むのえしょうか。
・右側の頭頂葉の「各回」と呼ばれる部位を刺激すると、被験者の意識は2mほど舞い上がり、天井付近から「ベッドに寝ている自分」が部分的に見えるというのです。心と体が分離して、他人の視点から自分を観察している。これは、いわば幽体離脱です。
・寝室に入って、電気を消して、布団をかぶって、横になる。すると自然に睡魔が訪れます。身体をそれにふさわしい状況に置くから「眠くなる」わけです。身体が先で眠気は後です。就寝の姿勢(出力=行動)を作ることで、それに見合った内面(感情や感覚)が形成されるわけです。ときに会議中や授業中に眠くなるのも、静かに座っている姿勢が休息の姿勢でもあるからだといえます。あくまでも身体がトリガーです。「やる気」も同様です。やる気が出たからやるというより、やり始めるとやる気が出るというケースが多くあります。年末の大掃除などはよい例で、乗り気がしないまま始めたかもしれませんが、いざ作業を開始すると、次第に気分が乗ってきて、部屋をすっかりきれいにしてしまったという経験は誰にでもあるはずです。「何事も始めた時点で、もう半分終わったようなもの」とはよく言ったものです。私たちの脳が「出力を重要視する」ように設計されている以上、出力を心がけた生き方を、私は大切にしたいと思っています。
<目次>
はじめに
1 脳は妙にIQに左右される|脳が大きい人は頭がいい!?
脳は大きければ大きいほど知的か?
IQが120を超える図抜けた脳のヒミツ
運動が得意な生徒ほど、勉強の成績もよい?
脳の衰えを錯覚する理由
2 脳は妙に自分が好き|他人の不幸は蜜の味
不安の脳回路が活性化するとき
他人の不幸を気持ちよく感じてしまう脳
脳は自分を「できる奴」だと思いこんでいる
クセになる快感を生む場所
弱気な社長はあまりいない
「プライド」と「pride」の違い
「誇り」と「喜び」とは別の感情である
3 脳は妙に信用する|脳はどのように「信頼度」を判定するのか?
幸せな気分に浸っているときこそ要注意
脳はどのように信頼度を判定するか
「ざまを見ろ」に至るプロセス
整理整頓の極意は「使えるものは捨てる」
「もったいない」はどこから生まれてくるか
「痛そうな写真」を見るとどうなるか
4 脳は妙に運まかせ|「今日はツイテる!」は思い込みではなかった!
人差し指が短い人は株で儲ける!?
巨万の富を稼ぐトレーダーには男性ホルモンの影響が
運勢はいつ決まるのか
決断能力を調べる「最後通牒ゲーム」
社会通念や思い込みといった信念も「真実」を生み出す
脳科学の発見は哲学を超えるか?
新たな技術革新を恐れない
5 脳は妙に知ったかぶる|「○○しておけばよかった」という「後知恵バイアス」とは?
それほど「やっぱり」ではない
避けようにも避けられない「後知恵バイアス」の不思議
所持効果という奇妙な現象
損するとわかっていても宝くじを買ってしまう
動揺するとどうなるか
6 脳は妙にブランドにこだわる|オーラ、ムード、カリウマ・・・見えざる力に動いてしまう理由
有機栽培というブランド
音楽評論家たちを困惑させたリパッティ事件
脳はブランドに反応する!?
苦労して稼いだ10万円、宝くじで当たった10万円
7 脳は妙に自己満足する|「行きつけの店」しか通わない理由
脳は感情を変更して解決する
サルにも自己矛盾を回避する心理がある
レタス新キャベツ、どちらを買うか
思い切って冒険脳を解放しよう
用意されていた絶対価値を推量する回路
8 脳は妙に恋し愛する|「愛の力」で脳の反応もモチベーションも上がる!?
意中の人の左側に座る「ジュードネグレクト」効果
鳥にも左側重視の傾向がある
恋をすると脳の処理能力が上がる!?
母親の経験は子どもに遺伝する!?
よい環境に恵まれた生活がなぜ大切か
9 脳は妙にゲームにはまる|ヒトはとりわけ「映像的説明」に弱い生き物である
脳トレは本当に有効か?
ワーキングメモリを向上させるトレーニング
脳研究と心理学、哲学にあった溝を狭めたMRI
いかにも本当らしい説明を信じる
プレゼンの決め手!
10 脳は人目を気にする|なぜか自己犠牲的な行動を取るようにプログラムされている
人前でオナラをしないのはなぜか?
協調性のあるサカナ
なぜ私たちは人も物も盗まないのか?
自己犠牲の清き(?)精神
協力か逃亡か-「ジレンマゲーム」
罰はなぜ存在するのか
「泣いて馬しょくを斬る」という二律背反の葛藤
無根拠に歪んだ、人間らしさ
11 脳は妙に笑顔を作る|「まずは形から」で幸福になれる!?
コミュニケーションの最強の武器とは
笑顔を作るから楽しいという逆因果
ボトックスの意外な効果
ヒトはなぜ笑うのか
姿勢を正せば自信が持てる!?
日本語は気合いで、英語は身体で元気を出す
甘い記憶、苦い思い出
ダーウィンが指摘した表情の先天性
12 脳は妙にフェロモンに惹かれる|汗で「不安」も「性的メッセージ」も伝わる!?
汗を介して不安が他人に伝わる!?
セクシー・フェロモンは実在するか?
性的妄想は女性にガレてる!?
香りの刺激は直接脳に届く
コーヒー豆の香りをかぐと、どうなるか
1000年以上にわたるコーヒーの芳香の秘密
13 脳は妙に勉強法にこだわる|「入力」よりも「出力」を重視!
もっとも効果的な勉強法とは?
記憶力向上効果のある「カロリス」とは?
ビル・ゲイツが惚れ込んだ「センスキャム」
14 脳は妙に「赤色に魅了される」|相手をひるまあえ、優位に立つセコい色?
アイスコーヒーよりホットコーヒーに親近感
スポーツの成績は赤色で勝率が高まる!?
パソコンのモニタ枠を赤色にすると仕事の能率が低下する
「勉強部屋に赤色系のカーテンは厳禁」の信憑性
15 脳は妙に聞き分けがよい|音楽と空間能力の意外な関係
「RとL」、発音下手の理由
新生児は母国語と外国語を聞き分けている
怖いくらい通じるカタカナ英語のすすめ
音痴の人は空間処理能力が低い!?
オーケストラの楽団員たちの空間能力
16 脳は妙に幸せになる|歳をとると、より幸せを感じるようになる!
幸福感は年齢とともにどう変化するか?
年齢とともにネガティブバイアス
悪しき感情が減っていく
17 脳は妙に酒が好き|「嗜好癖」は本人のあずかり知らぬところで形成されている
ウィスキーは二日酔いがひどい!?
アルコール摂取時の脳内メカニズム
なぜ酒を飲んだとき「でっかくなった気分」になるのか?
アル中の親からアル中の子が生まれる
「ただなんとなく」・・・の裏側
18 脳は妙に食にこだわる|脳によい食べ物は何か?
ビタミン剤を飲むと犯罪が減る!?
胃腸の具合が脳の状態とリンクしている!?
健全な精神は健康な胃腸に宿る
脳のパフォーマンスを向上させる「ドコサヘキサエン酸(DHA)」
脳によい/わるい、12の栄養素・最新リスト
19 脳は妙に議論好き|「気合い」や「根性」は古くさい大和魂?
問題解決に議論し合うほうがよい?
効果的なリーダーシップとは
本番で実力を発揮するには?
脳科学にみる「気合い」「根性」の有用性
20 脳は妙におしゃべり|「メタファー(喩え表現)」が会話の主導権を変える
ヒトはネアンデルタール人と交配してきた!?
血統証付き現代人
人種差別はなぜ、なくならないのか
「奇跡の遺伝子」が生み出したものとは
言語に秘められた二つの役割
「目覚まし時計は拷問だ」というレトリック
メタファー(喩え表現)を利用する
ジョークを楽しんでいるときの脳
21 脳は妙に直感する|脳はなぜか「数値」を直感するのが苦手
無意識の自分はなかなかできる奴である
「ひらめき」と「直感」の違いとは?
論理的思考と推論的思考
「直感がアテにならない」というレアケース
ヒトの脳の弱みとは
22 脳は妙に不自由が心地よい|ヒトは自分のことを自分では決して知りえない
80%はおきまりの習慣に従っている
自由意志は脳から生まれない
自分の力で決定したつもり
無意識の自分こそが真の姿である
”脳の正しい反射”をもたらすものとは
そもそも脳にとって自由とは何か
意識に現れる「自由な心」はよくできた幻覚
どの脳部位が何を担当しているかを示す脳地図
「自己認識された自分」と「他者から見た自分」
23 脳は妙に眠たがる|「睡眠の成績」も肝心!
睡眠時間が短いことは自慢にならない
短眠タイプの遺伝子
怠惰思考のすすめ
就寝前は記憶のゴールデンアワー
「地道な努力型」か「要領よく一夜漬け」か?
睡眠中は記憶の整理と定着が交互に行われている
バラの香りで記憶力アップ!?
24 脳は妙にオカルトする|幽体離脱と「俯瞰力」の摩訶不思議な関係
生命倫理を揺るがす人造生物の誕生
「神」の脳回路を刺激したら何が起こるか?
神を科学で解剖することは冒涜か?
催眠術にかかりやすい人、まったくかからない人
催眠は、いわば人工認知証
「自分」という存在とは?
幽体離脱の脳回路とは?
25 脳は妙に瞑想する|「夢が叶った」のはどうしてか?
瞑想と脳の親密な関係
集中することはよいことか?
「20分の瞑想を5日間」でどう変化するか
体の動きと「未来イメージ」との奇妙な関係
「老ける」とは夢を持てなくなること?
26 脳は妙に使い回す|やり始めるとやる気が出る
「身体が痛むとき」と「心が痛むとき」
ヒトの思考はどこから派生しているか
「心」は脳回路における身体性の省略
すえにあるシステムをリサイクルする脳
脳は何のために存在するのか?
脳に言語が生まれたのは、いつ?
心はどこにあるのか
ヒトの心がどれほど身体や環境に支配されているか
何事も始めたら半分は終了!?
身体運動を伴うとニューロンが10倍強く活動する
おわりに
参考文献一覧
索引一覧
面白かった本まとめ(2013年上半期)
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