<金曜は本の紹介>
「佐藤可士和の超整理術」の購入はコチラ
「佐藤可士和の超整理術」という本は、アートディレクター/クリエイティブディレクターである著者が、その経験から「空間→情報→思考」それぞれのレベルでの整理術について、具体的に分かりやすく説明したものです。
そして、空間を整理するにはプライオリティをつけることが大切で、プライオリティをつけるには視点の導入が必要で、視点を導入するためにはまず思考の情報化が必要とのことです。
私自身もさっそくこの本を読んで、デスク周りやカバンなどの空間の整理を図って常にすっきりさせ、また日頃も常に目的を意識し、そして問題の本質に迫るため最適な視点を考える癖をつけたいと思いましたね。
また視点を引いて俯瞰して客観視すること、自分の思い込みを捨てること、視点を転換し多面的にみることも大切ですね。
また思考の整理では、自分や相手の考えを言語化し、仮説を立てて相手にぶつけてみること、他人事を自分事にして考えることも大切ということがよく分かりました。
空間・情報・思考が整理できると素晴らしい人生になりそうですね。
「佐藤可士和の超整理術」という本は、より良い人生にするためのヒントが満載で、そして具体的で分かりやすく、とてもオススメです!!
以下はこの本のポイント等です。
・どんなプロセスで整理を行っていけば、問題の本質をきちんと捉えて対処することができるのか。僕はたいがい、このような順序で進めています。
1.状況把握/対象(クライアント)を問診して、現状に関する情報を得る。
2.視点導入/情報に、ある視点を持ち込んで並べ替え、問題の本質を突き止める。
3.課題設定/問題解決のために、クリアすべき課題を設定する。
プロセスとしては、実に単純です。でも、ひとつひとつに大きな意味がある。面倒だからといって、これらを飛ばして行動に移ると、本質から程遠い、的外れな結果になってしまいます。
・「モノを絞って、すっきりと気持ちいい環境のなかで、効率的に仕事をしたい」これが僕の”空間”の整理を行ううえでの大前提になっています。整理がきちんとできれば、自分が把握していないものがいっさいない、クリアな状態になる。そうすれば仕事の効率も上がるし、リスク回避にもなるのです。片づいていて、かつどこに何があるかを完璧に把握していれば理想の状態。一見ゴチャゴチャしているようでいて、本人が把握できているのなら、まだいいほうです。最悪なのは、どこに何があるかわからないのに、作業する空間をうんと圧迫しているという状態。こうなると、作業がしにくいうえに、いざ何かを探すというだけでかなりの時間をとられてしまうし、トラブルのもとになることは明白です。自分の仕事場の状況を想像してみてください。モノが少なくすっきり片づいた机と、天板が見えないほどゴチャゴチャと散乱した状態の机。どちらの環境が快適かは、一目瞭然です。それはわかっていても、ついつい散らかしがちにしてしまうという場合は多いですよね。おそらく、仕事を優先するあまり、机周りの整理は後回しになってしまうのでしょう。でも、それでは順番が逆なのです。まず、仕事をする場所をすっきりさせることが、仕事の効率をアップさせることにつながるのです。ですから、”空間”の整理術は、年末の大掃除のような義務感や、しようがないという気持ちで取り組むのはおすすめしません。整理することは、仕事の精度アップに直結する-こうしたポジティブな目的のもとに、積極的な気持ちで取り組んでください。
・皆さんは、ふだんのオンの日には、どんなカバンを持ち歩いていますか。そして、その中身は。ちなみに、僕はたいてい手ぶらです。持ち物といえば、
・携帯電話
・自宅の鍵
・カードケース(中身はクレジットカード2枚、事務所のカードキー、紙幣数枚)
・小銭
この程度なので、分散してポケットに入れています。
・こうやって進めていったカバンのスリム化計画ですが、僕も一度にすべてを実行してしまうのは不安がありました。やはり、何かしら不具合が起こると思ったのです。そこで、まずは1週間のうち、”手ぶらの日”を何日か作って実験してみました。何か困ったことが起こるかな、とドキドキしましたが、結果的には全く困りませんでした。それどころか、うんと開放的な気分になれたのです。これは、予想外の発見でした。手ぶらになると、断然身軽になります。そうすると気分もふわっと軽くなって、無性に歩きたくなるのです。街を散歩したり、ぶらぶらしたり。重いカバンを持っていたときには思いもよらなかったほど、周りを見て楽しむゆとりが生まれました。精神的にものすごく解放されるのです。この気分を一度味わうと、どうしてもっと早く手ぶらにならなかったのだろう、と後悔したくらい。それ以来、手ぶらは僕の基本スタイルになりました。
・「机は何のための場所なのか?」そう、作業をする場所です。物置でも倉庫でもありません。ですから、基本的には天板には何も載せないことが理想なのです。机の上で省けないものといえば、電話とPCぐらいでしょうか。あとは、その都度の作業に必要なものだけを置き、作業が終わったら常にしまうことを習慣づけるのです。そうすれば、寿司屋のカウンターのように、いつもきれいでまっさらな状態が保てる。板前さんがネタを切って、握って、出し終わったら板場をさっと拭いてきれいにする、あの仕事ぶりのイメージです。そのために欠かせないのが、それぞれモノの定位置を決めておくこと。これは肝に銘じておくべきです。さらに、定位置に入りきれないくらい増えてしまった場合の、対応の仕方もポイントです。たとえば、ペンケースがいっぱいになってしまったからといって、別の引き出しにあふれたぶんを入れてしまっては、モノが増えていくばかり。別の場所に進出させるのではなく、いまある場所に収まる範囲にとどめる。これが大切です。あふれそうになったら中身を一度見直して整理し、常に定位置のキャパシティ内でやりくりするのです。
・置き場所の範囲内からはみ出しがちなモノの筆頭として、ステーショナリーが挙げられます。たとえば筆記具。まず、置き場所ですが、デスクの引き出しにペントレイがあるなら迷わずそこに。デスクの上にペンスタンドを置くのは、作業場をなるべく広く確保する必要性からもおすすめしません。それでも、気がつけばペン類はなぜか増えているもの。ですから、カバンの場合と同様、アップデートがマスト事項です。こちは毎日でなくても、月に一度くらいで十分。毎月、月初めの月曜日というように、決めておくとより確実です。あとはやはり、プライオリティをつけること。「いま本当に、仕事に必要なのはどれなのか?」と真面目に自問すると、数本程度に絞れるのではないでしょうか。
・やっかいなのが書類や資料類。ステーショナリー以上に、増えてかさばりがちな存在です。こちらも、まずは同じものを省いてひとつにすること。また、企画書などバージョンが進化していくものは、最終バージョンだけをとっておくようにします。さらに、可能なものはデジタルデータ化する。現在進行中の書類をスリム化することはもちろん、過去のプロジェクトの資料も、終了後すぐに整理することです。捨てるかしまうか判断する。しまっておくにしても、まずスリム化です。
・人の精神は、視界にすごく左右されます。多くのモノが見えていると、気が散ってしまう。いろいろなことがいっぺんにできると思っていても、結局一度にひとつのことしかできないものなのです。だから、そのひとつに集中できるように、視界をとことんすっきりさせました。キャビネットのドアパネルを開ければ、中身は一目瞭然。ひとつのモジュールの中にさらにドロワーボックスを設置したりして、定位置を細かく設定しています。使ったら必ず定位置に戻すというのも徹底しています。
・どんどん増えていくものとしては、名刺もやっかいな存在です。整理が甘いと、それこそ必要なときに見つけるのはひと苦労。アイウエオ順、業種別など、いろいろな分類が考えられますが、皆さんはどのようにファイリングしているでしょうか。僕もいろいろ試行錯誤しましたが、最近はプロジェクトごとの分類を採用しています。なぜなら、「サムライ」の仕事は、プロジェクト単位で進行しているから。常に何十個ものプロジェクトが同時進行する状態なので、スタッフもプロジェクト別に担当を持つことにしているのです。そこで、プロジェクトごとにファイルを作り、それぞれ各担当者がキープすることにしました。二穴のファイルに、資料とともに関係者名刺を入れたホルダーもまとめておくのです。僕と担当者がそれぞれもつのではなく、あくまで1つのプロジェクトは一つのファイルに統一します。オフィス内での定位置を決めているので、別々にもつ必要もないし、探すのに困ることもありません。
プロジェクトが終了したら、必要な名刺をピックアップして、マネージャーに渡します。そうすると、マネージャーがそれらをPCで業種別にデータベース化してくれる。こういう手順で、効率的に整理できるようになりました。
・データ類に加えて、メールの整理も気が抜けません。僕はメールに関しても、プロジェクトごとのフォルダを作って分類していますが、仕事のスタイルに合わせて各々で工夫すればいいと思います。大切なのは、受信メールをチェックしたら、その場で処理するということ。僕は、その日の受信ボックスは必ずゼロにしてから帰ります。これも”とりあえず”との闘い。放っておくと膨大な数になりますから、面倒でもその場で対処するしかない。分類する、捨てる、返信する。よっぽど熟考が必要なものは例外ですが、たいがい瞬時で判断できるものです。この細かい処理の積み重ねが、整理の経験値にもなるのです。
・バーチャル空間の整理に関して、僕はスタッフにも耳が痛くなるほど徹底させています。「毎週月曜日の朝は、Macの中のデータを整理すること。午前中いっぱいかかってもいいから、納得いくまですっきりさせるように」と。これも、空間の場合と同じ理屈です。忙しいから整理は後回しではなく、仕事の効率を上げるために整理をするのです。週はじめにきちんと片づいた状態になれば、週末までの1週間の進行が、断然スムーズになりますから。システムのメンテナンスをきっちりすれば、アプリケーションがさくさく動くのです。考え方を柔軟に切り替えて、ぜひ定期的に行ってみてください。
・このシステムを思い立った背景には、”オフィスにおける情報の共有化”という視点があります。そもそも、「同じモノをスタッフ全員で共有できるような仕組みを作りたい」と考えたのがきっかけなのです。ぷるプロジェクトを3人で担当することになった場合、3人それぞれが資料をもつより、ひとつにして定位置を決めてしまったほうが、量も3分の1になるし、何があるか把握しやすくなる。結果として、デスク周りの整理の場合と同様、仕事の効率化とリスク回避に確実につながると思いました。実際、システム構築後は、驚くほど空間がすっきりし、かつ誰もが目的のモノを探しやすくなりました。”情報の共有化”の効果は絶大です。
・”空間”の整理の要点を以下にまとめてみましょう。
1.前提として”すっきりした空間を作ることで仕事の効率が上がり、リスク回避になる”というポジティブな目標をもつこと。
2.整理とは、自分のなかの不安や”とりぜず”との闘い。それに打ち勝つためには、”捨てる”勇気が必要。捨てるモノを決めるためには、プライオリティをつけることが不可欠。厳しく自問自答して、下位のものは時間軸で区切って処分するといい。
3.せっかく整理したものを再び増やさないためにも、定期的な見直し(アップデート)が欠かせない。メールなど、放っておくだけで増えていくものは、その場で処理することが大切。
4.目の前の作業環境をすっきりさせておくために、モノは常に定位置に置き、使ったらすぐ戻すこと。すぐに整理できないモノの避難場所となる、フリースペースを設けておくのも便利。
5.わかりやすく分類するために、フレームを決めてフォーマットを統一する。こうすれば、さまざまな種類のものがすっきり片づくうえに、シンプルなシステムなので把握もしやすくなる。
・伝えるということは、本当に難しい。企画書を作ったり、プレゼンやスピーチをしたりといったビジネスシーンでも、情報をどう整理するかによって、相手に伝わる精度は格段に違ってきます。その際にいちばん大切なのが、自分なりの視点を持ち込んできっちり筋を通すこと。大切な情報をしっかり見極め、情報同士の因果関係をクリアにしていくことで、進むべき道が見えてくるのです。つまり、情報の整理とは、視点を導入して問題の本質に迫ることで、真の門だ解決を行うためのものなのです。
・”空間”の整理の章で、プライオリティをつけることで本当に大事なモノが見つかると述べましたが、このプライオリティも視点がないと決まりません。空間の場合は、”どのくらいの頻度で使うか””いますぐ必要か”など、時間軸の視点で設定しました。情報の場合は、身体感覚で判断が下しにくいぶん、さらに意識的に視点をもつことが求められます。これがなかなか見つけにくいから、情報の整理は難しいのです。視点を持ち込むという感覚は、インターネットの検索エンジンを思い浮かべるとわかりやすいかもしれません。莫大な量のデータベースから、欲しい情報を取り出すためには、キーワードを入力する必要がある。このキーワードが、ひとつの視点なのです。キーワードの選び方や複数入れる場合の順番のつけ方など、工夫次第で欲しい情報にアクセスしやすくなります。
・本質を探るということは、一見、物事の奥深くに入り込んでいくようなイメージがあるでしょう。でも実は、どんどん引いて離れていくことだと思うのです。客観的に見つめてこそ、いままで気づかなかった真実や大事なエッセンスを発見することができる。脳科学者の茂木健一郎さの著書「「脳」整理法」に、「ディタッチメント」という言葉が出てきます。これは、あたかも”神の視点”に立つがごとく、ものすごく俯瞰して物事を見つめるということ。神のように達観した視点をもつことが、科学者の基本姿勢として非常に大切だと述べられていて、頷かされました。同じことが、”情報”の整理の場合にもいえると思ったからです。
・ビジョンにつながる確固たる視点を見つけるためには、正面からでなく、いろいろな角度から見てみることも大切です。これも、言うは易く、行うは難し。”自分の思い込みをまず捨てる”ということから始めてみてください。個人のエゴが入っていては、プロジェクト本来のビジョンから少しずつ、ずれていってしまいます。相手からもらった情報が足りないからといって、自分勝手な憶測を盛り込んでしまうと、ちぐはぐなまとまりのないイメージになってしまう。相手の立場に立ち、相手がもっている材料のなかから、魅力を最大限に引き出すという姿勢で臨まなければ、クライアントの課題を解決することはできません。とはいえ、いきなり自分を捨てて相手の立場に立つということは、なかなかできることではありません。ビジネスを介したいろいろなしがらみやパワーバランスなどがありますから、どうしても雑念が入りがちになります。ですから、まずは完全な第三者の立場になってみてはどうでしょう。親戚のおばさんとか、学生時代の同級生とか、該当の仕事とは全く関係のない第三者になったつもりで、クライアントのことを考えてみるのです。引いた立場から状況を客観視すると、思いのほか冷静になれる。結果として、相手の立場にスムーズに立てるようになれると思うのです。また、思い込みを捨てるには、あえて極論を考えてみるというのも手です。無謀なほど極端な気持ちになってみないと、自分を捨てることは難しいものです。ですから「そもそもこのプロジェクトは必要ないのではないか?」くらいの思い切った気持ちになれれば、ふっきれて視界が広がってくると思います。
・長年、アートディレクションという仕事で経験していても、視点を見つけることは往々にして難しいもの。そこで、もうひとつヒントとなるアプローチを紹介しましょう。それは、「迷ったら具体的なシーン思い浮かべてみる」ということです。つまり、さまざまなTPOを想定して、自分が取り組んでいる物事をどのように説明するかを考えてみるのです。会社でプレゼンする場合、彼女に説明する場合、取材されて答える場合・・・。このとき、ユーザーやクライアントなど、あまりに漠然とした相手を想定してはダメです。リアリティに欠けるので、それぞれが抱いている価値観の違いが把握できません。ユーザーは彼女、クライアントは××社の社長というふうに、具体的な人物像をきちんと設定することです。
・視点を引いて客観視することも、視点を転換することも、思い込みを捨てることも、すべては「多面的な視点で物事を見る」ということのバリエーションです。情報という、実体のないものを整理するために、こうした柔軟なアプローチが不可欠なのです。そして何より、目指すべきビジョン、つまり”あるべき姿”を目指して整理するという大前提があってこそ、ポジティブに、意欲的に取り組めると思うのです。その結果、伝えることの精度がぐんと上がればしめたもの。”情報”の整理のベクトルは、コミュニケーションの理想形を指し示しているのです。考えに行き詰まったり、意志の疎通が難しいと感じた場合は、とにかく視点を変えてみてください。
・「Aさんが話すとあまり理解できなかったことが、Bさんが話すとすごくよくわかった。同じ内容なのに、なぜこんなに印象が違うんだろう?」こんな経験、皆さんもあるのではないでしょうか。相手に自分の考えていることをきちんと伝えるのは、すごく難しい-今まで繰り返し述べてきたことです。これがうまくできる人というのは、”思考”の整理に非常に長けている人。つまり、自分の考えを整理して精度を上げることで、いちばん大事なことをブレずに、明確に伝えることができているのです。これがなぜ難しいのか。それはやはり、”思考”が目に見えないものだからです。”情報”は、まだテキストや画像といった第三者が認識できるものとして存在しますが、”思考”は頭の中にしかない抽象的な概念。だから、”思考”の整理は”情報”の整理より、さらに難度が高いのです。
・自分の考えだけでなく、相手の考えもきちんと整理して理解することができれば、コミュニケーションの精度も格段にアップします。つまり、抽象的だった思考が、明確な情報としてやりとりされることになる。そう、思考の整理のポイントは、思考を情報化していくことなのです。その後のプロセスは、情報の整理と同じ。ですから、思考の整理は、情報の整理のより高度な応用編といえるでしょう。
・思考を情報化するためにはどうしたらいいか。必要不可欠なのが、”無意識の意識化”というプロセスです。漠然とした状態の心理や、心の奥深くに埋もれている大切な思いなどを掘り起こして、はっきりと意識する。そうすれば、整理したり、秩序だてたりといった次の段階に進むことができます。哲学的な難解さを感じる言葉かもしれませんが、これも一種のトレーニング。経験値を積むことが、整理術の何よりの早道です。その際に、いちばん大事なことは、”言語化していくこと”です。もやもやとしていた思いを言葉にすることができれば、筋道を立てた人に伝えることができますから。言語化することで、思考は情報になるのです。
・”無意識の意識化”とは、フロイトの心理療法にも出てくる言葉です。フロイトは、”無意識”という概念を初めて理論だてて提唱した学者。心の病というのは、知らず知らずのうちに抑圧さえてきた欲望や衝動が原因だと位置付け、その感情を掘り起こして意識化することで、病の根本がわかると考えました。その根本的な問題に対峙し、克服することで抑圧が解消され、病が治るというのです。では、どうやって意識化したらいいか-フロイトが考案したのは「自由連想法」という方法です。患者自身が恐れている無意識の世界を掘り起こすのは非常に困難ですから、一種のフリートーキングを行いながら、徐々に核心に迫っていくのです。患者が心に浮かんだことを話し、治療者がそれに対して解釈を述べる。その反応によって再び別の解釈を試みる・・・ということを繰り返しているうちに、患者から強い感情が引き出せるようになっていきます。その感情こそが、無意識の世界の病因につながっているという解釈です。これはまさに、思考の整理で、”仮説を相手にぶつける”ことと同じです。「自由連想法」が心の病すべてに万能かどうかはわかりませんが、相手の無意識のなかに深く入り込んでいく方法としては、かなり効果的だと思います。他人に対して仮説をぶつけていく方法にある程度慣れたら、自分に対しても自問自答してみてください。頭の中だけで行っていては混乱しますから、やはり言葉にして書き出してみると理解しやすいでしょう。
・「他人事を自分事にする」これは思考の整理で非常に大切なポイントです。あいまいなものを情報にして、さらには問題点を見出して解決していくわけですから、自分との接点を見出さないと実感が湧かず、目指すビジョンも空々しいものになってしまう。これは、決してエゴを持ち込むことではありません。自分勝手なイメージを作り上げるのではなく、対象のなかから本質を導き出すというアプローチだからこそ、いかに自分のモチベーションを上げていくかが大事になってくるのです。ですから、対象をねじ曲げて自分に引き寄せるのではなく、対象と自分との接点に近づいていくことでリアリティが生まれるのです。
・これまで、”空間”→”情報”→”思考”というレベルごとに、僕なりの整理術を紹介してきました。身近なことから、徐々に難度を上げていきましたが、おおまかな感覚はつかめたでしょうか。各章のポイントを、改めて挙げています。
・空間の整理・・・整理するには、プライオリティをつけることが大切
・情報の整理・・・プライオリティをつけるためには、視点の導入が不可欠
・思考の整理・・・視点を導入するためには、まず思考の情報化を
空間から思考へとレベルが進むにつれて、難度とともに要するモチベーションも高いものになっていきました。とはいえ、どの整理の場合も、根本的に核となることは共通しているのです。それが、”視点を導入すること”です。繰り返しますが、視点の持ち込み方によて、整理の方向性は全くといっていいほど変わってきます。言い換えると、優れた視点を導入することができれば、問題解決に向けての大枠の方向性が定まるのです。まずは、視点の軸をいくつも挙げてみて、TPOに応じていちばん有効と思われるものを選んでください。
・”空間”の整理の場合は、”どのくらいの頻度で使うのか””いますぐ必要なもなかどうか”など、主に時間軸という視点でソートしましたが、”いちばん機能性の優れたものはどれか””デザインが美しいものはどれか”といった、いろいろな視点があり得ます。すべてを同じ視点で整理する必要もありません。書類は時間軸で、文房具は機能という軸で、というふうに、TPOに応じて自分がいちばん快適に過ごせるような視点を見つけてください。”情報”や”思考”の整理の場合は、さらに千差万別です。その時々の問題点によって、視点をさまざまに変えてみてください。対象のなかに必ず答えはありますから、あせらず何度も試してみることです。また、視点というのは、一度見つければそれで終わりではありません。整理の視点は、時とともにアップデートされていくものです。自分自身のライフスタイルもいずれは変化しますからプライオリティもその都度変わってくることでしょう。自らの成長とともに整理術も成長し、磨かれていくのです。これを実感するのも、整理の醍醐味といえるでしょう。
・常に心に留めておくべきことh、「何のために整理をするのか?」という目的をもつことです。整理のための整理では、何も生まれません。たとえば、”空間”の整理において、捨てることは、不安や”とりあえず”との闘いだと述べました。人間は、身体感覚で味わえないとなかなか理解できないから、”捨てる”という行為が一番ダイレクトに訴える方法だ、と。捨てる勇気をもつことで、空間も自分の気持ちも整理することができますから、ぜひ実行してほしい行為です。でも、決して”捨てる”ことが目的なのではありません。あくまで手段なのです。「何のために捨てるのか?」といえば、本当に大事なものを決めるため。そして、大事なものを、より大切に扱うためなのです。こうした目的を意識しないと、整理の方向性がブレてしまいます。さらに、
・定期的にアップデートをする→モノを増やさないため
・モノの定位置を決め、使用後はすぐに戻す→作業環境をすっきりさせるため
・フレームを決めてフォーマットを統一する→わかりやすく分類するため
このように、どのヒントにも、それぞれ目的があるのです。そして、これらはすべて「すっきりした空間を作ることで仕事の効率が上がり、リスク回避につながる」という、”空間”の整理全体の大きな目標につながっているのです。”情報”や”思考”の場合も同様です。
・視点を引いて客観視してみる
・自分の思い込みをまず捨てる
・視点を転換し、多面的に見てみる
これらは、”情報”の整理におけるポイントです。”思考”の整理では、
・自分や相手の考えを言語化してみる
・仮説を立てて、恐れず相手にぶつけてみる
・他人事を自分事にして考える
こうしたポイントを挙げました。”思考”の整理の目的は、”思考の情報化”を行い、頭の中の漠然とした思いをスムーズに相手とやりとりするということです。その後は、”情報”の整理と同じく、問題解決につながる視点を見つけるという目的に沿って、各々のポイントを参考にしていけばいい。そして、”情報”や”思考”の整理の最終的な目標といえば、「ビジョン=あるべき姿に近づくこと」です。”あるべき姿=理想的な作業環境”と置き換えれば”空間”の整理にも当てはまること。さまざまなポイントを使いこなすことで、理想的な視点を見つけることができれば、”あるべき姿”に向けての大きな一歩が踏み出せるのです。
・”整理をすること”と”問題解決”は、別ものだと思っていた人も多いのではないでしょうか。整理は事務的な作業、問題解決は別の次元のクリエイティブな作業だ、と。そんなことはないのです。「整理と問題解決は、同じベクトルでつながっている」ということが、各章の内容から感じてもらえたと思います。”問題解決”は、”あるべき姿を見つけること”と置き換えてもいい。あるべき姿を見つけるひとつの方法として、整理術があるのです。
<目次>
まえがき
1章 問題解決のための”超”整理術
いい仕事に、整理術は欠かせない
アートディレクター=ドクター
大切なのは、相手の思いを整理すること
本質を捉えなければ、いい結果は生み出せない
整理術は、仕事も生活も劇的に変える!
2章 すべては整理から始まる
問題の本質が見えないまま、対処していないか
複雑すぎる世の中に、危機感をもって挑むべき
その場しのぎの対処では、問題は解決しない
プロセスに沿って、整理術を確実に身につける
状況把握・視点導入・課題設定の順に進める
微妙なニュアンスまで、問診で把握する
視点を持ち込んで、問題の本質に迫る
課題を見つければ、問題の半分は解決する
課題=登るべき山と考え、コースを見極める
空間から思考まで、目指すは3レベルのクリア
3章 レベル1「空間」の整理術-プライオリティをつける
空間の整理の目的は、快適な仕事環境を作ること
整理を徹底して、リスク回避を図る
身体を使う作業で、整理の効果を実感
まずは、身近なカバンの中身の整理から
果たして、カバンの中身はすべて必要か
スリム化を加速させた、携帯電話の進化
”手ぶら”がもたらした、予想外の解放感
”捨てる”勇気が、価値観を研ぎ澄ます
”捨てる”ことは、不安との闘いである
捨てるためには、プライオリティ設定が不可欠
捨てることは、”とりあえず”との闘いでもある
デスク周りの最適環境を作る
モノの定位置を決めると、把握しやすくなる
迷ったら、機能が似ているものを比較する
書類や資料は、最終バージョンだけとっておく
棚のフリーペースを、一時避難場所に
名刺整理は、アイウエオ順がいいとは限らない
バーチャル空間も、シンプル・イズ・ベスト
ファイルのネーミングがキモ
PC上にもフリースペースを作る
フレームを駆使して、オフィス環境を快適に
バーチャル空間を転用した、オフィス空間整理術
フレームを決めれば、全体像が把握できる
大切なものの見極めを、身体で覚える
4章 レベル2「情報」の整理術-独自の視点を導入する
問題の本質に迫るため、情報に視点を持ち込む
視点導入の最終目標は、ビジョンを導き出すこと
相手の心の中に、イメージを建築する
理想形となる”ビジョン”を見つける
視点が決まれば、ビジョンが見えてくる
自分なりの視点を見つけるには
本質を探るには、引いて見つめることが大切
思いこみを捨てることから、視野が広がる
視点の転換で導き出した、明治学院大学のビジョン
見方を変えれば、マイナスもプラスになる
ビジョンを凝縮して、シンボルマークで表現
暗号解読のように組み立てた、国立新美術館のシンボル
あいまいな状況から、強い視点は見つけにくい
”新しい”という視点で、すべてをプラスに転化
表現の段階で、ビジョンを明確に研ぎすます
迷ったら、具体的なシーンを思い浮かべてみる
常にビジョンを目指す、ポジティブな姿勢が大切
第5章 レベル3「思考」の整理術-思考を情報化する
思考を情報化すれば、コミュニケーションの精度が上がる
自分自身を知ることは、とてつもなく難しい
まず、考えを言語化することから始める
仮説をぶつけて、相手の思いを確認する
フロイトの心理療法にある”無意識の意識化”
自己の無意識を意識化した、ドコモの携帯電話
プロダクト完成後に、コンセプトの言語化を模索
自分自身に仮説をぶつけて、発見したコンセプト
自分との接点を見出した、地域産業のブランディング
リアリティがなければ、問題意識は生まれない
他人事を自分事にできると、リアリティが生まれる
本質を研ぎすました、ユニクロの”あるべき姿”
問診しながら掘り起こした、ユニクロの本質
日本発ブランドという気概を込めたロゴデザイン
無意識に深く踏み込んだ、ファーストリテイリングのCI
頭の中にあるビジョンを、どうやって引き出すか
仮説をぶつけて、クライアントの思考を探る
”革新”という視点を、真紅のシンボルで表現
Tシャツの新しい買い方をデザインしたUT
Tシャツのメディア性から生まれたビジネスモデル
世界一のTシャツブランドを目指したシステム作り
ペットボトルのパッケージで、問題点を付加価値に転化
思考の整理で浮かびあがった、新しい病院の姿
今日の医療環境が抱える、問題の本質を探る
コンセプトは、”リハビリテーション・リゾート”
6章 整理術は、新しいアイデアの扉を開く
最大のポイントは、視点を見つけること
目的をもてば、テクニックも生きてくる
答えは必ず、目の前にある!
あとがき
面白かった本まとめ(2013年下半期)
<今日の独り言>
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私自身もさっそくこの本を読んで、デスク周りやカバンなどの空間の整理を図って常にすっきりさせ、また日頃も常に目的を意識し、そして問題の本質に迫るため最適な視点を考える癖をつけたいと思いましたね。
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2.視点導入/情報に、ある視点を持ち込んで並べ替え、問題の本質を突き止める。
3.課題設定/問題解決のために、クリアすべき課題を設定する。
プロセスとしては、実に単純です。でも、ひとつひとつに大きな意味がある。面倒だからといって、これらを飛ばして行動に移ると、本質から程遠い、的外れな結果になってしまいます。
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・皆さんは、ふだんのオンの日には、どんなカバンを持ち歩いていますか。そして、その中身は。ちなみに、僕はたいてい手ぶらです。持ち物といえば、
・携帯電話
・自宅の鍵
・カードケース(中身はクレジットカード2枚、事務所のカードキー、紙幣数枚)
・小銭
この程度なので、分散してポケットに入れています。
・こうやって進めていったカバンのスリム化計画ですが、僕も一度にすべてを実行してしまうのは不安がありました。やはり、何かしら不具合が起こると思ったのです。そこで、まずは1週間のうち、”手ぶらの日”を何日か作って実験してみました。何か困ったことが起こるかな、とドキドキしましたが、結果的には全く困りませんでした。それどころか、うんと開放的な気分になれたのです。これは、予想外の発見でした。手ぶらになると、断然身軽になります。そうすると気分もふわっと軽くなって、無性に歩きたくなるのです。街を散歩したり、ぶらぶらしたり。重いカバンを持っていたときには思いもよらなかったほど、周りを見て楽しむゆとりが生まれました。精神的にものすごく解放されるのです。この気分を一度味わうと、どうしてもっと早く手ぶらにならなかったのだろう、と後悔したくらい。それ以来、手ぶらは僕の基本スタイルになりました。
・「机は何のための場所なのか?」そう、作業をする場所です。物置でも倉庫でもありません。ですから、基本的には天板には何も載せないことが理想なのです。机の上で省けないものといえば、電話とPCぐらいでしょうか。あとは、その都度の作業に必要なものだけを置き、作業が終わったら常にしまうことを習慣づけるのです。そうすれば、寿司屋のカウンターのように、いつもきれいでまっさらな状態が保てる。板前さんがネタを切って、握って、出し終わったら板場をさっと拭いてきれいにする、あの仕事ぶりのイメージです。そのために欠かせないのが、それぞれモノの定位置を決めておくこと。これは肝に銘じておくべきです。さらに、定位置に入りきれないくらい増えてしまった場合の、対応の仕方もポイントです。たとえば、ペンケースがいっぱいになってしまったからといって、別の引き出しにあふれたぶんを入れてしまっては、モノが増えていくばかり。別の場所に進出させるのではなく、いまある場所に収まる範囲にとどめる。これが大切です。あふれそうになったら中身を一度見直して整理し、常に定位置のキャパシティ内でやりくりするのです。
・置き場所の範囲内からはみ出しがちなモノの筆頭として、ステーショナリーが挙げられます。たとえば筆記具。まず、置き場所ですが、デスクの引き出しにペントレイがあるなら迷わずそこに。デスクの上にペンスタンドを置くのは、作業場をなるべく広く確保する必要性からもおすすめしません。それでも、気がつけばペン類はなぜか増えているもの。ですから、カバンの場合と同様、アップデートがマスト事項です。こちは毎日でなくても、月に一度くらいで十分。毎月、月初めの月曜日というように、決めておくとより確実です。あとはやはり、プライオリティをつけること。「いま本当に、仕事に必要なのはどれなのか?」と真面目に自問すると、数本程度に絞れるのではないでしょうか。
・やっかいなのが書類や資料類。ステーショナリー以上に、増えてかさばりがちな存在です。こちらも、まずは同じものを省いてひとつにすること。また、企画書などバージョンが進化していくものは、最終バージョンだけをとっておくようにします。さらに、可能なものはデジタルデータ化する。現在進行中の書類をスリム化することはもちろん、過去のプロジェクトの資料も、終了後すぐに整理することです。捨てるかしまうか判断する。しまっておくにしても、まずスリム化です。
・人の精神は、視界にすごく左右されます。多くのモノが見えていると、気が散ってしまう。いろいろなことがいっぺんにできると思っていても、結局一度にひとつのことしかできないものなのです。だから、そのひとつに集中できるように、視界をとことんすっきりさせました。キャビネットのドアパネルを開ければ、中身は一目瞭然。ひとつのモジュールの中にさらにドロワーボックスを設置したりして、定位置を細かく設定しています。使ったら必ず定位置に戻すというのも徹底しています。
・どんどん増えていくものとしては、名刺もやっかいな存在です。整理が甘いと、それこそ必要なときに見つけるのはひと苦労。アイウエオ順、業種別など、いろいろな分類が考えられますが、皆さんはどのようにファイリングしているでしょうか。僕もいろいろ試行錯誤しましたが、最近はプロジェクトごとの分類を採用しています。なぜなら、「サムライ」の仕事は、プロジェクト単位で進行しているから。常に何十個ものプロジェクトが同時進行する状態なので、スタッフもプロジェクト別に担当を持つことにしているのです。そこで、プロジェクトごとにファイルを作り、それぞれ各担当者がキープすることにしました。二穴のファイルに、資料とともに関係者名刺を入れたホルダーもまとめておくのです。僕と担当者がそれぞれもつのではなく、あくまで1つのプロジェクトは一つのファイルに統一します。オフィス内での定位置を決めているので、別々にもつ必要もないし、探すのに困ることもありません。
プロジェクトが終了したら、必要な名刺をピックアップして、マネージャーに渡します。そうすると、マネージャーがそれらをPCで業種別にデータベース化してくれる。こういう手順で、効率的に整理できるようになりました。
・データ類に加えて、メールの整理も気が抜けません。僕はメールに関しても、プロジェクトごとのフォルダを作って分類していますが、仕事のスタイルに合わせて各々で工夫すればいいと思います。大切なのは、受信メールをチェックしたら、その場で処理するということ。僕は、その日の受信ボックスは必ずゼロにしてから帰ります。これも”とりあえず”との闘い。放っておくと膨大な数になりますから、面倒でもその場で対処するしかない。分類する、捨てる、返信する。よっぽど熟考が必要なものは例外ですが、たいがい瞬時で判断できるものです。この細かい処理の積み重ねが、整理の経験値にもなるのです。
・バーチャル空間の整理に関して、僕はスタッフにも耳が痛くなるほど徹底させています。「毎週月曜日の朝は、Macの中のデータを整理すること。午前中いっぱいかかってもいいから、納得いくまですっきりさせるように」と。これも、空間の場合と同じ理屈です。忙しいから整理は後回しではなく、仕事の効率を上げるために整理をするのです。週はじめにきちんと片づいた状態になれば、週末までの1週間の進行が、断然スムーズになりますから。システムのメンテナンスをきっちりすれば、アプリケーションがさくさく動くのです。考え方を柔軟に切り替えて、ぜひ定期的に行ってみてください。
・このシステムを思い立った背景には、”オフィスにおける情報の共有化”という視点があります。そもそも、「同じモノをスタッフ全員で共有できるような仕組みを作りたい」と考えたのがきっかけなのです。ぷるプロジェクトを3人で担当することになった場合、3人それぞれが資料をもつより、ひとつにして定位置を決めてしまったほうが、量も3分の1になるし、何があるか把握しやすくなる。結果として、デスク周りの整理の場合と同様、仕事の効率化とリスク回避に確実につながると思いました。実際、システム構築後は、驚くほど空間がすっきりし、かつ誰もが目的のモノを探しやすくなりました。”情報の共有化”の効果は絶大です。
・”空間”の整理の要点を以下にまとめてみましょう。
1.前提として”すっきりした空間を作ることで仕事の効率が上がり、リスク回避になる”というポジティブな目標をもつこと。
2.整理とは、自分のなかの不安や”とりぜず”との闘い。それに打ち勝つためには、”捨てる”勇気が必要。捨てるモノを決めるためには、プライオリティをつけることが不可欠。厳しく自問自答して、下位のものは時間軸で区切って処分するといい。
3.せっかく整理したものを再び増やさないためにも、定期的な見直し(アップデート)が欠かせない。メールなど、放っておくだけで増えていくものは、その場で処理することが大切。
4.目の前の作業環境をすっきりさせておくために、モノは常に定位置に置き、使ったらすぐ戻すこと。すぐに整理できないモノの避難場所となる、フリースペースを設けておくのも便利。
5.わかりやすく分類するために、フレームを決めてフォーマットを統一する。こうすれば、さまざまな種類のものがすっきり片づくうえに、シンプルなシステムなので把握もしやすくなる。
・伝えるということは、本当に難しい。企画書を作ったり、プレゼンやスピーチをしたりといったビジネスシーンでも、情報をどう整理するかによって、相手に伝わる精度は格段に違ってきます。その際にいちばん大切なのが、自分なりの視点を持ち込んできっちり筋を通すこと。大切な情報をしっかり見極め、情報同士の因果関係をクリアにしていくことで、進むべき道が見えてくるのです。つまり、情報の整理とは、視点を導入して問題の本質に迫ることで、真の門だ解決を行うためのものなのです。
・”空間”の整理の章で、プライオリティをつけることで本当に大事なモノが見つかると述べましたが、このプライオリティも視点がないと決まりません。空間の場合は、”どのくらいの頻度で使うか””いますぐ必要か”など、時間軸の視点で設定しました。情報の場合は、身体感覚で判断が下しにくいぶん、さらに意識的に視点をもつことが求められます。これがなかなか見つけにくいから、情報の整理は難しいのです。視点を持ち込むという感覚は、インターネットの検索エンジンを思い浮かべるとわかりやすいかもしれません。莫大な量のデータベースから、欲しい情報を取り出すためには、キーワードを入力する必要がある。このキーワードが、ひとつの視点なのです。キーワードの選び方や複数入れる場合の順番のつけ方など、工夫次第で欲しい情報にアクセスしやすくなります。
・本質を探るということは、一見、物事の奥深くに入り込んでいくようなイメージがあるでしょう。でも実は、どんどん引いて離れていくことだと思うのです。客観的に見つめてこそ、いままで気づかなかった真実や大事なエッセンスを発見することができる。脳科学者の茂木健一郎さの著書「「脳」整理法」に、「ディタッチメント」という言葉が出てきます。これは、あたかも”神の視点”に立つがごとく、ものすごく俯瞰して物事を見つめるということ。神のように達観した視点をもつことが、科学者の基本姿勢として非常に大切だと述べられていて、頷かされました。同じことが、”情報”の整理の場合にもいえると思ったからです。
・ビジョンにつながる確固たる視点を見つけるためには、正面からでなく、いろいろな角度から見てみることも大切です。これも、言うは易く、行うは難し。”自分の思い込みをまず捨てる”ということから始めてみてください。個人のエゴが入っていては、プロジェクト本来のビジョンから少しずつ、ずれていってしまいます。相手からもらった情報が足りないからといって、自分勝手な憶測を盛り込んでしまうと、ちぐはぐなまとまりのないイメージになってしまう。相手の立場に立ち、相手がもっている材料のなかから、魅力を最大限に引き出すという姿勢で臨まなければ、クライアントの課題を解決することはできません。とはいえ、いきなり自分を捨てて相手の立場に立つということは、なかなかできることではありません。ビジネスを介したいろいろなしがらみやパワーバランスなどがありますから、どうしても雑念が入りがちになります。ですから、まずは完全な第三者の立場になってみてはどうでしょう。親戚のおばさんとか、学生時代の同級生とか、該当の仕事とは全く関係のない第三者になったつもりで、クライアントのことを考えてみるのです。引いた立場から状況を客観視すると、思いのほか冷静になれる。結果として、相手の立場にスムーズに立てるようになれると思うのです。また、思い込みを捨てるには、あえて極論を考えてみるというのも手です。無謀なほど極端な気持ちになってみないと、自分を捨てることは難しいものです。ですから「そもそもこのプロジェクトは必要ないのではないか?」くらいの思い切った気持ちになれれば、ふっきれて視界が広がってくると思います。
・長年、アートディレクションという仕事で経験していても、視点を見つけることは往々にして難しいもの。そこで、もうひとつヒントとなるアプローチを紹介しましょう。それは、「迷ったら具体的なシーン思い浮かべてみる」ということです。つまり、さまざまなTPOを想定して、自分が取り組んでいる物事をどのように説明するかを考えてみるのです。会社でプレゼンする場合、彼女に説明する場合、取材されて答える場合・・・。このとき、ユーザーやクライアントなど、あまりに漠然とした相手を想定してはダメです。リアリティに欠けるので、それぞれが抱いている価値観の違いが把握できません。ユーザーは彼女、クライアントは××社の社長というふうに、具体的な人物像をきちんと設定することです。
・視点を引いて客観視することも、視点を転換することも、思い込みを捨てることも、すべては「多面的な視点で物事を見る」ということのバリエーションです。情報という、実体のないものを整理するために、こうした柔軟なアプローチが不可欠なのです。そして何より、目指すべきビジョン、つまり”あるべき姿”を目指して整理するという大前提があってこそ、ポジティブに、意欲的に取り組めると思うのです。その結果、伝えることの精度がぐんと上がればしめたもの。”情報”の整理のベクトルは、コミュニケーションの理想形を指し示しているのです。考えに行き詰まったり、意志の疎通が難しいと感じた場合は、とにかく視点を変えてみてください。
・「Aさんが話すとあまり理解できなかったことが、Bさんが話すとすごくよくわかった。同じ内容なのに、なぜこんなに印象が違うんだろう?」こんな経験、皆さんもあるのではないでしょうか。相手に自分の考えていることをきちんと伝えるのは、すごく難しい-今まで繰り返し述べてきたことです。これがうまくできる人というのは、”思考”の整理に非常に長けている人。つまり、自分の考えを整理して精度を上げることで、いちばん大事なことをブレずに、明確に伝えることができているのです。これがなぜ難しいのか。それはやはり、”思考”が目に見えないものだからです。”情報”は、まだテキストや画像といった第三者が認識できるものとして存在しますが、”思考”は頭の中にしかない抽象的な概念。だから、”思考”の整理は”情報”の整理より、さらに難度が高いのです。
・自分の考えだけでなく、相手の考えもきちんと整理して理解することができれば、コミュニケーションの精度も格段にアップします。つまり、抽象的だった思考が、明確な情報としてやりとりされることになる。そう、思考の整理のポイントは、思考を情報化していくことなのです。その後のプロセスは、情報の整理と同じ。ですから、思考の整理は、情報の整理のより高度な応用編といえるでしょう。
・思考を情報化するためにはどうしたらいいか。必要不可欠なのが、”無意識の意識化”というプロセスです。漠然とした状態の心理や、心の奥深くに埋もれている大切な思いなどを掘り起こして、はっきりと意識する。そうすれば、整理したり、秩序だてたりといった次の段階に進むことができます。哲学的な難解さを感じる言葉かもしれませんが、これも一種のトレーニング。経験値を積むことが、整理術の何よりの早道です。その際に、いちばん大事なことは、”言語化していくこと”です。もやもやとしていた思いを言葉にすることができれば、筋道を立てた人に伝えることができますから。言語化することで、思考は情報になるのです。
・”無意識の意識化”とは、フロイトの心理療法にも出てくる言葉です。フロイトは、”無意識”という概念を初めて理論だてて提唱した学者。心の病というのは、知らず知らずのうちに抑圧さえてきた欲望や衝動が原因だと位置付け、その感情を掘り起こして意識化することで、病の根本がわかると考えました。その根本的な問題に対峙し、克服することで抑圧が解消され、病が治るというのです。では、どうやって意識化したらいいか-フロイトが考案したのは「自由連想法」という方法です。患者自身が恐れている無意識の世界を掘り起こすのは非常に困難ですから、一種のフリートーキングを行いながら、徐々に核心に迫っていくのです。患者が心に浮かんだことを話し、治療者がそれに対して解釈を述べる。その反応によって再び別の解釈を試みる・・・ということを繰り返しているうちに、患者から強い感情が引き出せるようになっていきます。その感情こそが、無意識の世界の病因につながっているという解釈です。これはまさに、思考の整理で、”仮説を相手にぶつける”ことと同じです。「自由連想法」が心の病すべてに万能かどうかはわかりませんが、相手の無意識のなかに深く入り込んでいく方法としては、かなり効果的だと思います。他人に対して仮説をぶつけていく方法にある程度慣れたら、自分に対しても自問自答してみてください。頭の中だけで行っていては混乱しますから、やはり言葉にして書き出してみると理解しやすいでしょう。
・「他人事を自分事にする」これは思考の整理で非常に大切なポイントです。あいまいなものを情報にして、さらには問題点を見出して解決していくわけですから、自分との接点を見出さないと実感が湧かず、目指すビジョンも空々しいものになってしまう。これは、決してエゴを持ち込むことではありません。自分勝手なイメージを作り上げるのではなく、対象のなかから本質を導き出すというアプローチだからこそ、いかに自分のモチベーションを上げていくかが大事になってくるのです。ですから、対象をねじ曲げて自分に引き寄せるのではなく、対象と自分との接点に近づいていくことでリアリティが生まれるのです。
・これまで、”空間”→”情報”→”思考”というレベルごとに、僕なりの整理術を紹介してきました。身近なことから、徐々に難度を上げていきましたが、おおまかな感覚はつかめたでしょうか。各章のポイントを、改めて挙げています。
・空間の整理・・・整理するには、プライオリティをつけることが大切
・情報の整理・・・プライオリティをつけるためには、視点の導入が不可欠
・思考の整理・・・視点を導入するためには、まず思考の情報化を
空間から思考へとレベルが進むにつれて、難度とともに要するモチベーションも高いものになっていきました。とはいえ、どの整理の場合も、根本的に核となることは共通しているのです。それが、”視点を導入すること”です。繰り返しますが、視点の持ち込み方によて、整理の方向性は全くといっていいほど変わってきます。言い換えると、優れた視点を導入することができれば、問題解決に向けての大枠の方向性が定まるのです。まずは、視点の軸をいくつも挙げてみて、TPOに応じていちばん有効と思われるものを選んでください。
・”空間”の整理の場合は、”どのくらいの頻度で使うのか””いますぐ必要なもなかどうか”など、主に時間軸という視点でソートしましたが、”いちばん機能性の優れたものはどれか””デザインが美しいものはどれか”といった、いろいろな視点があり得ます。すべてを同じ視点で整理する必要もありません。書類は時間軸で、文房具は機能という軸で、というふうに、TPOに応じて自分がいちばん快適に過ごせるような視点を見つけてください。”情報”や”思考”の整理の場合は、さらに千差万別です。その時々の問題点によって、視点をさまざまに変えてみてください。対象のなかに必ず答えはありますから、あせらず何度も試してみることです。また、視点というのは、一度見つければそれで終わりではありません。整理の視点は、時とともにアップデートされていくものです。自分自身のライフスタイルもいずれは変化しますからプライオリティもその都度変わってくることでしょう。自らの成長とともに整理術も成長し、磨かれていくのです。これを実感するのも、整理の醍醐味といえるでしょう。
・常に心に留めておくべきことh、「何のために整理をするのか?」という目的をもつことです。整理のための整理では、何も生まれません。たとえば、”空間”の整理において、捨てることは、不安や”とりあえず”との闘いだと述べました。人間は、身体感覚で味わえないとなかなか理解できないから、”捨てる”という行為が一番ダイレクトに訴える方法だ、と。捨てる勇気をもつことで、空間も自分の気持ちも整理することができますから、ぜひ実行してほしい行為です。でも、決して”捨てる”ことが目的なのではありません。あくまで手段なのです。「何のために捨てるのか?」といえば、本当に大事なものを決めるため。そして、大事なものを、より大切に扱うためなのです。こうした目的を意識しないと、整理の方向性がブレてしまいます。さらに、
・定期的にアップデートをする→モノを増やさないため
・モノの定位置を決め、使用後はすぐに戻す→作業環境をすっきりさせるため
・フレームを決めてフォーマットを統一する→わかりやすく分類するため
このように、どのヒントにも、それぞれ目的があるのです。そして、これらはすべて「すっきりした空間を作ることで仕事の効率が上がり、リスク回避につながる」という、”空間”の整理全体の大きな目標につながっているのです。”情報”や”思考”の場合も同様です。
・視点を引いて客観視してみる
・自分の思い込みをまず捨てる
・視点を転換し、多面的に見てみる
これらは、”情報”の整理におけるポイントです。”思考”の整理では、
・自分や相手の考えを言語化してみる
・仮説を立てて、恐れず相手にぶつけてみる
・他人事を自分事にして考える
こうしたポイントを挙げました。”思考”の整理の目的は、”思考の情報化”を行い、頭の中の漠然とした思いをスムーズに相手とやりとりするということです。その後は、”情報”の整理と同じく、問題解決につながる視点を見つけるという目的に沿って、各々のポイントを参考にしていけばいい。そして、”情報”や”思考”の整理の最終的な目標といえば、「ビジョン=あるべき姿に近づくこと」です。”あるべき姿=理想的な作業環境”と置き換えれば”空間”の整理にも当てはまること。さまざまなポイントを使いこなすことで、理想的な視点を見つけることができれば、”あるべき姿”に向けての大きな一歩が踏み出せるのです。
・”整理をすること”と”問題解決”は、別ものだと思っていた人も多いのではないでしょうか。整理は事務的な作業、問題解決は別の次元のクリエイティブな作業だ、と。そんなことはないのです。「整理と問題解決は、同じベクトルでつながっている」ということが、各章の内容から感じてもらえたと思います。”問題解決”は、”あるべき姿を見つけること”と置き換えてもいい。あるべき姿を見つけるひとつの方法として、整理術があるのです。
<目次>
まえがき
1章 問題解決のための”超”整理術
いい仕事に、整理術は欠かせない
アートディレクター=ドクター
大切なのは、相手の思いを整理すること
本質を捉えなければ、いい結果は生み出せない
整理術は、仕事も生活も劇的に変える!
2章 すべては整理から始まる
問題の本質が見えないまま、対処していないか
複雑すぎる世の中に、危機感をもって挑むべき
その場しのぎの対処では、問題は解決しない
プロセスに沿って、整理術を確実に身につける
状況把握・視点導入・課題設定の順に進める
微妙なニュアンスまで、問診で把握する
視点を持ち込んで、問題の本質に迫る
課題を見つければ、問題の半分は解決する
課題=登るべき山と考え、コースを見極める
空間から思考まで、目指すは3レベルのクリア
3章 レベル1「空間」の整理術-プライオリティをつける
空間の整理の目的は、快適な仕事環境を作ること
整理を徹底して、リスク回避を図る
身体を使う作業で、整理の効果を実感
まずは、身近なカバンの中身の整理から
果たして、カバンの中身はすべて必要か
スリム化を加速させた、携帯電話の進化
”手ぶら”がもたらした、予想外の解放感
”捨てる”勇気が、価値観を研ぎ澄ます
”捨てる”ことは、不安との闘いである
捨てるためには、プライオリティ設定が不可欠
捨てることは、”とりあえず”との闘いでもある
デスク周りの最適環境を作る
モノの定位置を決めると、把握しやすくなる
迷ったら、機能が似ているものを比較する
書類や資料は、最終バージョンだけとっておく
棚のフリーペースを、一時避難場所に
名刺整理は、アイウエオ順がいいとは限らない
バーチャル空間も、シンプル・イズ・ベスト
ファイルのネーミングがキモ
PC上にもフリースペースを作る
フレームを駆使して、オフィス環境を快適に
バーチャル空間を転用した、オフィス空間整理術
フレームを決めれば、全体像が把握できる
大切なものの見極めを、身体で覚える
4章 レベル2「情報」の整理術-独自の視点を導入する
問題の本質に迫るため、情報に視点を持ち込む
視点導入の最終目標は、ビジョンを導き出すこと
相手の心の中に、イメージを建築する
理想形となる”ビジョン”を見つける
視点が決まれば、ビジョンが見えてくる
自分なりの視点を見つけるには
本質を探るには、引いて見つめることが大切
思いこみを捨てることから、視野が広がる
視点の転換で導き出した、明治学院大学のビジョン
見方を変えれば、マイナスもプラスになる
ビジョンを凝縮して、シンボルマークで表現
暗号解読のように組み立てた、国立新美術館のシンボル
あいまいな状況から、強い視点は見つけにくい
”新しい”という視点で、すべてをプラスに転化
表現の段階で、ビジョンを明確に研ぎすます
迷ったら、具体的なシーンを思い浮かべてみる
常にビジョンを目指す、ポジティブな姿勢が大切
第5章 レベル3「思考」の整理術-思考を情報化する
思考を情報化すれば、コミュニケーションの精度が上がる
自分自身を知ることは、とてつもなく難しい
まず、考えを言語化することから始める
仮説をぶつけて、相手の思いを確認する
フロイトの心理療法にある”無意識の意識化”
自己の無意識を意識化した、ドコモの携帯電話
プロダクト完成後に、コンセプトの言語化を模索
自分自身に仮説をぶつけて、発見したコンセプト
自分との接点を見出した、地域産業のブランディング
リアリティがなければ、問題意識は生まれない
他人事を自分事にできると、リアリティが生まれる
本質を研ぎすました、ユニクロの”あるべき姿”
問診しながら掘り起こした、ユニクロの本質
日本発ブランドという気概を込めたロゴデザイン
無意識に深く踏み込んだ、ファーストリテイリングのCI
頭の中にあるビジョンを、どうやって引き出すか
仮説をぶつけて、クライアントの思考を探る
”革新”という視点を、真紅のシンボルで表現
Tシャツの新しい買い方をデザインしたUT
Tシャツのメディア性から生まれたビジネスモデル
世界一のTシャツブランドを目指したシステム作り
ペットボトルのパッケージで、問題点を付加価値に転化
思考の整理で浮かびあがった、新しい病院の姿
今日の医療環境が抱える、問題の本質を探る
コンセプトは、”リハビリテーション・リゾート”
6章 整理術は、新しいアイデアの扉を開く
最大のポイントは、視点を見つけること
目的をもてば、テクニックも生きてくる
答えは必ず、目の前にある!
あとがき
面白かった本まとめ(2013年下半期)
<今日の独り言>
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