<金曜は本の紹介>
「傷はぜったい消毒するな(夏井睦)」の購入はコチラ
「傷はぜったい消毒するな」という本は、ケガをしたら消毒して乾かすという世間の常識は実は間違っていて、傷は消毒せず乾燥させなければ、痛まず早くしかもきれいに治るということについて、分かりやすく説明した本です。
消毒は、細菌をやっつけますが、人間の体にも害を与え、だから痛みが増すというのはナルホドと思いましたね。
また、カサブタは組織が乾燥して死んだものなので、カサブタを作らずに早くきれいに治すのが良いというのもナルホドと思いました。
具体的に擦りむき傷等には以下のものがあれば良いようです。
・創部を洗浄する水(水道水、糖分が入っていないペットボトルのお茶などでも可)
・血液や汚れを拭き取るもの(タオル、ティッシュペーパー、ガーゼなど)
・創部を覆うもの(プラスモイスト、市販のハイドロコロイド被覆材(キズパワーパッドなど)、食品包装用ラップ、白色ワセリンなど
・その他(絆創膏、包帯など)
それから、この治療法でアトピーが治るということや、石鹸やシャンプー、化粧も実は体には良くないと言うことがわかりました。
そのほか、医学治療の歴史や生物進化についても分かりやすく説明があります。
そして、このような医学だけでなくいろんなことで今までの常識を疑い、生活などをより良くする必要があるということを考えさせられました。
とてもオススメな本です!
以下はこの本のポイントなどです。
・「湿潤治療」とは、10年ほど前から筆者が独自に始めたもので、薬も、高価な治療材料も使わずに擦りむき傷も熱傷(ヤケド)も治してしまうという治療である。実際、大学病院の熱傷センターで「これは入院して手術しないと治らない」と宣告された重症熱傷なのに、湿潤治療に切り替えて外来通院だけで二週間で完治したという例が多数あるのだ。しかも治療法そのものは極めてシンプルで簡単なため、素人でも実行できる。なぜ、擦りむき傷も熱傷も同じ方法で治ってしまうのかというと、創傷治癒過程(傷が治る過程)の徹底的な研究に基づき、過去の治療理論とのしがらみを全て切り捨ててゼロから作り上げた治療だからだ。擦りむき傷と熱傷では原因は異なっているが、そこから治っていく過程は同じである。だから、その治る過程の邪魔をせず、助けてやればいい。そう突き詰めていった結果として、シンプルで簡単な治療になっただけのことである。治療の原則は次の二つだ。
①傷を消毒しん。消毒薬を含む薬剤を治療に使わない。
②創面を乾燥させない。
この治療法は、現時点での傷の治療の原則である「消毒して乾燥させる(=ガーゼで覆う)」と正反対であり、多くの病院で常識的に行われている傷の治療を完全否定するものだ。もちろん、確固たる根拠があって完全否定している。この治療法が正しいことは、擦りむき傷を食品包装用ラップで覆ってみればわかる。あのヒリつくような痛みが軽くなるからだ。痛みが軽くなった瞬間、あなたの体はあなたに「この治療は正しい」と教えてくれるはずだ。
・人間は水なしには数日しか生存できないように、人体を構成するあらゆる細胞も乾燥状態ではすぐに死んでしまう。だから、傷口を乾燥させると皮膚の細胞も真皮組織も肉芽組織も死んでしまう。そして死んだ人間が生き返ることがないように、一旦死んだ細胞も組織も蘇ることはなく死骸になる。それがカサブタだ。つまり傷の上にできるカサブタとは、乾燥して死に、ミイラになったようなものだ。従来は、カサブタができると治る、と誤解されていた。だから、早くカサブタができるようにとせっせと乾かしてきたわけだが、何のことはない、傷が治らないように、細胞が早く死ぬようにと一生懸命乾かしていたのだ。カサブタは要するに、中にばい菌を閉じこめて上からふたをするようなものである。だから、カサブタになるといつまでも治らないし、閉じ込められたばい菌が暴れ出せば化膿することになる。逆に傷を乾かさないようにすれば、真皮も肉芽も、その上を移動する皮膚細胞も元気いっぱいだ。その結果、傷の表面は新たに増えた皮膚細胞で覆われ、皮膚が再生することになる。
・人間の体は自前で傷を治すメカニズムを持っていて、それがあの傷口のジュクジュクだったのだ。この傷のジュクジュクはいわば、人体細胞の最適の培養液なのである。だから、傷口が常にこのジュクジュクで覆われるようにしてやれば、傷は簡単に治ってしまうのだ。せっかく「傷を治す物質」があるのなら、それを利用しない手はないのである。ではどうするか、といえば、話は簡単で、先にも述べた通り、傷口に分泌されているジュクジュク、つまり滲出液が外にこぼれないように、「水を通さないもの、空気を通さないもの」で覆ってやればいい。そうすれば傷の表面は常に滲出液で潤った状態になって乾燥しなくなり、傷表面のさまざまな細胞は活発に分裂し、傷はどんどん治ってしまう。これが「湿潤治療」の原理だ。では傷の上を覆うものは何がいいのだろうか。実は何だっていい。人体に有害な成分が含まれてさえいなければ、
①傷にくっつかない。
②滲出液(=細胞成長因子)を外に逃がさない。
この2つの条件をクリアしていれば十分だ。
さらにもう一つ、
③ある程度水分(滲出液)吸収能力がある。
という条件が加わればベストである。なぜ、水分吸収能力が必要かといえば、それがないと傷周囲の皮膚に汗疹ができたり、膿か疹(いわゆる「とびひ」)ができたりするのだ。皮膚は防御器官であるとともに排泄器官であり、体外に汗と不感蒸泄(発汗以外に皮膚および気道から蒸散する水分)を出すという重要な役目を持っているからである。だからそれを無視してラップなどで皮膚を密封すると、皮膚は排泄器官としての働きができずに機能不全に陥り、その結果としてさまざまなトラブルが起こることにん。そのトラブルが汗疹であり膿か疹なのだ。また、滲出液が皮膚についているだけで、皮膚炎を起こすこともある。要するに滲出液(=細胞成長因子)は傷を治すには最善の治療薬だが、皮膚にとっては余計物、厄介者なのである。
・この3つの条件を満たした治療材料を「創傷被覆材」といい、1980年代から病院での傷や褥そう(床ずれ)の治療に使われ始めている。その一つがハイドロコロイドという素材で、現在、「キズパワーパッド」という商品名でドラッグストアなどで販売されている。また、「プラスモイスト」という治療材料もこの3つの条件を兼ね備えており、しかも値段がハイドロコロイドより安価であり、調剤薬局の店頭やインターネットで購入できる。水分吸収能力という点ではプラスモイストはハイドロコロイドをはるかにしのいでおり、素人が傷の治療に使用してもまず失敗することがなく、安心して使える治療材料である。
・湿潤治療について、その特徴をまとめると次のようになる。
①すぐに傷が治る。
②痛みもなくなる。
③擦りむき傷も深い創も熱傷も同じ方法で治療できる。
④消毒薬も軟膏も不要。
⑤最低限、水とラップと絆創膏があれば治療でき、極めて安価。
⑥治療材料が軽くてかさばらない。
⑦治療方法が簡単、勘弁
・日常遭遇することの多い擦りむき傷(擦過創)とヤケド(熱傷)を例にとり、実際の治療法について説明しよう。その他、浅いキリ傷も同じ方法で治療できる。治療に必要なものは次の通りだ。
○創部を洗浄する水(水道水、糖分が入っていないペットボトルのお茶などでも可)
○血液や汚れを拭き取るもの(タオル、ティッシュペーパー、ガーゼなど)
○創部を覆うもの(プラスモイスト、市販のハイドロコロイド被覆材(キズパワーパッドなど)、食品包装用ラップ、白色ワセリンなど
○その他(絆創膏、包帯など)
まず、創部洗浄用の液体だが、滅菌水である必要はなく、通常飲めるものなら創部洗浄に使用して大丈夫だ。ただし、糖分が含まれているもので洗うと痛いので避けた方が無難だろう。また、流水中には創感染を起こす細菌は存在しないため、川の水で洗っても問題はない。血液や汚れを拭き取るにはタオルやティッシュペーパーを使用するが、こちらも家庭で使っているものでよい。創部を覆うものには前述のプラスモイスト、ハイドロコロイド被覆材、食品包装用ラップのいずれかでよい。まず、プラスモイストだが、これは筆者が傷の治療のために開発したもので、インターネットや一部の調剤薬局で購入できる。ハイドロコロイドは、「キズパワーパッド」という商品名でドラッグストアやコンビニエンスストアで販売されている。ちなみにキズパワーパッドの説明書には「最大5日間、貼ったままでよい」などと書かれているが、これは鵜呑みにしない方がいい。貼りっぱなしにすると汗疹や膿か疹(とびひ)になるからだ。やはり一日一度は張り替えた方がいいだおう。これらが入手できない場合には、ラップ(サランラップなど)も治療に有用だ。ラップは創面には固着せず、創面の乾燥を防ぐという目的に適した素材である。しかし吸水力が全くないため、暑い時期に使用するとラップで覆った部位の皮膚にやはり汗疹やとびひを作ったりするので注意が必要だ。これを防ぐためには、汗をかく時期には一日に数回ラップをはがして傷周囲の皮膚をよく洗って貼り替えるのが効果的だ。ラップにはさまざまな種類の商品があるが、薄い方が密着性がよく、鎮痛効果が高い。ラップに白色ワセリンを塗るとさらに鎮痛効果が高い。白色ワセリンは、原油の生成過程で得られる鎖状飽和炭化水素の一種で、炭素数が16から20の混合体を指す。ちなみに炭素数が21の炭化水素がパラフィン(石蝋)、22以上のものは潤滑油と呼ばれている。高純度の白色ワセリンは、分子量が280前後と小さいために抗原性(アレルギーを起こす性質)を持たず、常温での反応性は乏しく、生体との反応もほとんどなく、非常に安全な物質といえる。実際、白色ワセリンは、口から入っても目に付いても、害がないことが確認されている。なお、白色ワセリンは「白色ワセリン」「プロペト」「Vasellin」の商品名で各社から販売されていて、ドラッグストアなどで購入できる。
・日常、最も多いケガといえば擦りむき傷だ。ちょっと擦りむいてヒリヒリしている程度から、出血しているようなものまでさまざまだが、これらは全て同じ方法で治療できる。
①まず出血を止める。これは創部にタオルなどを当てて、その上から軽く圧迫すれば数分で止まる。出血部を顔くらいの高さに拳上するとさらに効果的。なお、心臓に近い部位を縛ると逆に出血が多くなるため、心臓に近い部位は絶対に縛ってはいけない(これは手足の裂傷でも同じ)
②傷の周りの皮膚の汚れを拭き取る。もしも傷の中に砂などが入っていたら、水道かシャワーで洗い落とす。
③ハイドロコロイドの場合は直接傷の上に貼り、絆創膏などは不要
④プラスモイストとラップの場合は、傷よりやや大きめのサイズに切って、薄く白色ワセリンを塗り傷を覆い、絆創膏で固定する。
⑤ラップの場合はラップの上にタオルかガーゼを当て(漏れだしてくる滲出液を吸収するため)、その上から包帯を巻く。
⑥ハイドロコロイドとプラスモイストは1日1回は貼り替える。ラップの場合は、寒い時期なら1日1回、暑い時期であれば1日2~3回交換する。交換の際は傷周囲の皮膚をよく洗って、汗や滲出液を十分に洗い落とす。
⑦傷の部分がツルツルした皮膚で覆われ、滲出液が出なくなったら、もうプラスモイストやラップで覆う必要はない。
⑧治療が終了した後も、顔面などの露出部の場合は、直接日光を避けるようにする。再生したての皮膚は色素沈着を起こしやすいからだ。遮光の方法は、市販のUVカットのクリームなどでよく、顔面の場合は3ヶ月くらい続ける。
・とはいえ、次のような場合は、病院を受診してほしい。
①創面に砂や泥が入り込み、汚染されている場合
②傷が深い場合
③治療の途中で発熱(38度台の熱)があったり、創部に痛みがある場合
①の場合には、麻酔をしないと砂などが除去できず、破傷風の予防注射も必要になるためだ。③の場合は傷が化膿したための発熱である可能性があり、抗生物質の点滴や内服が必要となる。
・カサブタが小さい場合は、白色ワセリンを塗ったラップかプラスモイスト、あるいはハイドロコロイドで覆っておくと、数日で自然に溶解し、まるで引き上げ湯葉のようにつるりと取れる。
・水ぶくれはできていないが、赤くてヒリヒリする浅いヤケドで面積が小さい場合は市販のハイドロコロイドを貼付、面積が広い場合は、プrスモイストに白色ワセリンを塗布して貼るか、ラップに白色ワセリンを塗布して貼れば、ヒリヒリした痛みはすぐに治まるはずだ。半日ほどして剥がし、赤みがなくなってヒリヒリ感もなくなれば治療終了である。同様に、日焼けし過ぎてピリピリと痛い場合にも、同じ方法で治療すると痛みはすぐに治まる。日焼けにしても熱湯によるヤケドにしても、ヒリヒリ、ピリピリとした痛みは、患部が直接空気に触れて乾燥したこtが原因なのである。
・水ぶくれが大きい場合(おおよその目安で5cmを超える水ぶくれ)には、湿潤治療をしている病院を受診し、治療を受けてほしい。また、個々の水ぶくれは小さくても、それが多発している場合も同様で、病院を受診した方がよい。小さな水ぶくれが数個できている程度であれば、そのまま白色ワセリンを塗ったラップかプラスモイストで覆う。その後は擦りむき傷と一緒で、ラップやプラスモイストの交換を続け、水ぶくれが平らになったら治療終了となる。水ぶくれが2~3cm以上だったら、水ぶくれを破って水ぶくれの表面を除去する。通常は痛みなく除去できる。そして白色ワセリンを塗ったラップかプラスモイストで創面を覆う。ラップやプラスモイストを交換する際、新たな水ぶくれができていたら必ず除去する。以後は前述の方法と同じで、水ぶくれの部分が乾燥してつるつるした皮膚で覆われたら治療終了である。
・次のような場合はさすがに素人療法は危険であり、抗生剤投与や切開などの治療が必要になるため、必ず病院を受診してほしい。
・刃物を深く刺した
・異物(木片、金属、魚骨など)を刺し、中に破片が残っている
・古い釘を踏んだ
・動物にかまれて血が出ている
・動物にかまれて腫れている
・深い切り傷、大きな切り傷
・皮膚がなくなっている(欠損している)
・切り傷で出血が止まらない
・指や手足が動かない
・指などがしびれている
・大きな水ふくれができているヤケド
・面積が広いヤケド
・貼るタイプのアンカ、湯たんぽ、電気カーペットなどによる低温熱傷
・砂や泥が入り込んでいる切り傷、擦りむき傷
・赤く腫れて痛みがある傷
・解決の糸口は意外なところにあった。数学者クルト・ゲーデル(1906~1978)の不完全性定理である。「任意の系が与えられた時、その系の内部では証明できない命題が常に存在する」という数理哲学の定理だ。そのような命題については、より高い次元に移り、そこから俯瞰しなければ真偽は判定できないことをゲーデルは証明している。そうであれば、医学の問題を医学で解決するのはおかしいことになる。では、医学より高次のものとは何か、それは生物学であり物理学であり化学しかない。つまり、化学や生物学の事実をベースにしてそこから演繹的思考を積み重ね、医学の諸問題を解決すればいいのではないか。それなら何も古い文献を引っ張り出す必要もないし、他人のデータに頼らなくとも問題が解決できることになる。そして私は数学の証明をするように医学の問題が証明できる可能性に気がついたのだ。この頃から私は医学書も医学論文も読まなくなった。読むなら生物学、微生物学の研究書であり、暇な時間には物理学や化学、数学の本を読むようになった。特に微生物学や生物学の基礎を学ぶことにより、医学にたくさんある「常識の嘘」が手に取るように見えてきた。だが、このよな治療を実際に行うと、どうしても同じ病院内の医師やその地域の開業医の先生方と重大なあつれきが生じることになる。なぜ他の病院で治らない傷が数日で治ってしまったのかと患者に問われたら、それまでの治療法が悪かったから、他の医師が治療法を知らなかったから、としか答えようがないからだ。これで患者からは納得してもらえるが、収まらないのは他の医師である。当然、一つの病院で長く勤めることが難しくなり、病院を転々とする医師生活になってしまった。
・実は、消毒薬は人間の細胞膜タンパクも変性し、人間の細胞膜を破壊するのだ。なぜかというと、消毒薬には人間の細胞膜タンパクと細菌の細胞膜タンパクの区別がつかないからだ。というより、人間のタンパク質だろうが細菌のタンパク質だろうが、タンパク質と見るとそれに結合しては破壊しようとするのが消毒薬なのだ。タンパク質と見れば無差別攻撃をかけてくるのである。
・誰でも一度や二度、傷をヨーチンはイソジンで消毒されたことがあるだろう。すごく痛かったと思う。なぜ痛かったのだろうか。それは、消毒薬が傷口にむき出しになった細胞膜タンパクを破壊し、細胞を壊し、傷口を深くしたからだ。消毒薬は傷口の破壊薬だから、傷口が破壊されて痛かったのだ。消毒薬による傷の消毒とは、言ってみれば「傷の熱湯消毒」と変わりないのである。
・消毒するとまず痛みが生じる。消毒薬のタンパク変性作用が、痛み刺激を伝える神経末端に刺激し、それが痛みとして脳に伝えられたためだ。つまり、体は消毒薬による作用を「有害作用!体に危険!」と判断し、これから逃げないとヤバイと警告を発したのだ。しかし、この神経からの警告を無視してさらに消毒を続けると、その次は表皮、そして真皮も破壊される。もちろん、皮膚には再生能力があるから多少の攻撃には耐えられるが、各種の「組織破壊軟膏」が使われたりすると皮膚の破壊は決定的なものとなる。つまり、それまで浅かった傷は深くなる。そして深くなるにつれ、傷が化膿する危険性もさらに増していく。化膿を防ぐために傷口に配備された各種免疫細胞も消毒薬で殺されるからだ。というわけで、一生懸命に傷を消毒すればするほど、傷の治癒が遅れ、場合によっては傷が深くなり、その結果として傷が化膿する危険性が高くなることになる。
・こういう時は実験するのが手っ取り早い。私は治療薬に疑問を持ったら、自分の体に傷をつけてその治療薬を付けてみて、どうなるかを観察することにしている。自分の体を使った人体実験である。方法は簡単で、自分の前腕や上腕に荷造り用テープ(いわゆるガムテープ)を貼っては剥がすという操作を40回前後繰り返す。こうすると皮膚が傷つき、うっすらと出血するようになる。表皮欠損創であり、ちょっと痛い。その部分を3つに分けて、それぞれの部分に「治療薬を塗布」、「なにもしない(=乾燥)」、「プラスモイストを貼付」という処置をするだけだ。実験結果は、私が管理しているインターネットサイト(「新しい創傷治療」)に詳しく載せているので見ていただきたいが、次のようなことを身をもって体験した。
①イソジン、イソジンゲルを傷に付けると強い痛みがあ、数日で潰瘍を生じた
②カデックス軟膏、ゲーベンクリームはさらに痛く、さらに短い時間で深い潰瘍を生じた
③アクトシン軟膏の痛みは最強であり、潰瘍を作る効果も強い
もちろん、これらの実験結果に対し、「消毒薬が人体に有害なわけがない、ゲーベンクリームは熱傷治療に有効だ」とお考えの医師はいるだろうが、まず自分の体で同様の実験を行ってみることをお勧めする。もちろん、これらの薬剤を作っているメーカーの人間も、同様の実験をすべきである。しかも、これらの治療薬の効能書きにも注意書きにも、「強烈な痛みがある」こと、「傷を深くして潰瘍を作る」ことは一切書かれていない。私に言わせればこれらは明らかな副作用なのだが、メーカーは本当の意味での安全性を確かめずにこれらを製造・販売していると言わざるを得ない。
・アトピー性皮膚炎といえば、治らない慢性皮膚疾患の代表格で患者も非常に多いが、実はその多くは簡単に治ってしまう。私は皮膚科医でもなければアトピー性皮膚炎についての知識も持っていないのだが、なぜか時々、10年以上いろいろな病院を渡り歩いても治らないアトピーの方や、さまざまな病院で治療を受けているのに治らない乳児湿疹の赤ちゃんが受診される。そしてそのほとんどが白色ワセリンとプラスモイストだけで治っているのである。治療方法は単純明快であって、乾燥を徹底して防ぐこと、これだけである。例えばアトピー性皮膚炎の場合には、
①かゆみのある部位にたっぷり白色ワセリンを塗布して時間をかけて十分にすり込む
②キッチンペーパーなどでごしごしと余分なワセリンをふき取り、べたつきを完全に取る。要するに床や車のワックスがけの要領である
③これを一日に数回繰り返す
これだけでほとんどの患者さんはよくなっている。乳児湿疹の場合も同じで、滲出液が多い部位をプラスモイストで覆い、それ以外は白色ワセリンの塗布を何度も行う。四肢や腹部はプラスモイスト、顔面は白色ワセリンの塗布という使い分けでもよい。さらに主婦手湿疹や手荒れの治療も同じで、白色ワセリンをたっぷり塗って十分に塗り込み、その後ごしごしとワックスがけをするだけである。白色ワセリンは無味無臭で口に入っても無害なため、そのまま野菜や肉を触っても大丈夫だ。もちろん、かかとのガサガサもこれだけで治っている。
・最近、子どもたちの間で乾燥肌やアトピーが増えていることは周知の事実である。実際、けがで受診した子どもさんを見ても、カサカサと粉を吹いている皮膚を見るのはまれではなく、むしろケガをした患児の半数以上は乾燥肌のように見える。どうもこれは石鹸で洗い過ぎているためではないかと思う。石鹸で洗えば界面活性剤で皮脂が洗い流されるからだ。また、テレビコマーシャウで「弱酸性だから赤ちゃんの肌に安全」と宣伝している某商品も問題だ。確かに赤ちゃんを含め人間の皮膚は弱酸性だが、だからといって「弱酸性の石鹸は安全」ではないからだ。実際に、石鹸の使用を止めてお湯だけで洗うように指導しただけで、赤ちゃんの大半の乾燥肌は改善してくる。実は、人間の皮膚から分泌される物質(石鹸メーカーはこれを「汚れ」と称している」で、温水で溶けない物はないのだ。つまり、皮膚についている物は通常、温水で洗い落とせるのだ。石油や機械油などは石鹸でなければ落ちないが、それ以外の皮膚の汚れに石鹸はそもそも不要なのである。シャンプーも同様である。頭皮から分泌されるもので水溶性でないものはない。筆者は2年ほど前にこの事実に気づき、実験的にシャンプーの使用を一切止め、一日一回の温水洗髪にしているが、驚くことにシャンプーを止めてから明らかにフケが減り、かやみがなくなり、しかも抜け毛も減少した。おまけに、枕カバーにつく臭いも少なくなり、毎日シャンプーで洗髪していた頃の方が明らかに変な酸っぱい臭いだったことを記憶している。これも考えてみたら当たり前である。シャンプーの強力な界面活性剤が皮脂を洗い流し、しかも神経質に地肌をゴシゴシとこすっていれば、皮膚常在菌以外のさまざまな細菌が繁殖するようになるからだ。これらの細菌が臭気の原因だたのだろう。しかも、皮脂を洗い流された頭皮はその皮脂不足を補うためにさらに多くの皮脂を分泌するようになり、その結果、頭皮はかえってベタベタになったと考えられる。同様に、角質が界面活性剤で損傷され、それを修復しようとして皮膚の新陳代謝が過剰に起こり、その結果、フケが多くなったのではないだろうか。ちなみに私の経験からすると、毛髪に関してシャンプーでないと取れないものは、タバコや焼き肉の臭いなどであり、これらを落とすにはシャンプーは必要だ。だから、これらのにおいが気になる場合には、毛髪だけをシャンプーで洗い、地肌はシャンプーで洗わないようにするとよいようだ。
・さらに深刻なのは、化粧品というか、化粧という行為そのものが皮膚に与える影響だ。この皮膚の老化は、化粧品の成分を調べてみると簡単に説明がつく。クリームにしてもローションにしても化粧水にしても、洗浄力の強い界面活性剤を含んでいて、クリームもローションも皮膚を皮膚常在菌が棲めない状態にするからだ。いかに皮膚に良い成分が含まれている化粧品だろうと、基剤が界面活性剤を含んでいては元も子もないのである。
<目次>
はじめに
第1章 なぜ「消毒せず、乾かさない」と傷が治るのか
1 「湿潤治療」とは
2 傷を治すための治療、治さないための治療
3 傷が治る過程(創傷治癒過程)
4 乾燥は厳禁-カサブタはミイラである
5 傷のジュクジュクは最強の治療薬
6 傷を覆うのは何がベストか
7 湿潤治療は地球を救う?
第2章 傷の正しい治し方
1 湿潤治療に必要なもの
2 擦りむき傷の治療
3 ヤケドの治療
4 病院を受診した方がよい外傷
第3章 ケガをしたら何科に行く?
1 どの病院で湿潤治療をしているのか
2 内科か外科か、大学病院か診療所か
3 診療科の違いについて
4 ヤケドは皮膚科?
第4章 私が湿潤治療をするようになったわけ-偶然の産物
1 外科研修医時代の日々
2 形成外科に入局-「外科の常識」は「形成外科の非常識」だった!
3 褥そう治療で目覚めた
4 そしてインターネットとの幸福な出会い
5 「根拠のある医療」との闘い
第5章 消毒薬とは何か
1 消毒薬-家庭常備薬の王
2 消毒薬はどうやって細菌を殺しているのか
3 消毒薬は人間の細胞幕タンパクも破壊する
4 消毒薬は人間にとって、安全でも無害でもない
5 消毒すると傷が深くなる
6 なぜ一生懸命消毒をしているのか
第6章 人はなぜ傷を消毒し、乾かすようになったのか
1 ケガの手当の歴史-黎明期から近代まで
2 二人の戦士-ゼンメルワイスとリスター
3 なぜ「消毒して乾燥させる治療」が主流になったのか
4 実は消毒薬の問題は古くからわかっていた
5 それでも消毒薬は必要とされた
6 パスツールの亡霊が医学会をさまよう
第7章 「化膿する」とはどういうことか
1 傷の化膿をめぐる医療現場の混乱
2 傷の化膿とはどういう症状か
3 傷口に細菌がいても化膿しているわけではない
4 傷口に細菌が入れば化膿するわけでもない
5 傷が化膿するメカニズム
6 細菌はどこからやってきたのか
7 細菌の侵入はどうしたら防げるのか
第8章 病院でのケガの治療-ちょっと怖い話
1 病院でのケガの治療の現実
2 傷の治癒を阻害する治療薬
第9章 医学はパラダイムの集合体だ
1 トンデモ治療の系譜-しゃ血療法・水銀療法
2 トンデモ治療はなぜ支持されたのか
3 現代医学の治療は未来永劫正しいか
4 パラダイムとは何か
5 天動説に見るパラダイムの構造
6 パラダイムを支えるもの
7 天動説の終焉はどのようにして起きたのか
8 パラダイムシフトの起こり方-パラダイムは信者が死ぬまで変わらない
9 旧パラダイムと新パラダイムは非連続だ
10 専門家と素人で知識が逆転する瞬間
11 熱傷治療に見るパラダイムの構造-熱傷学会に喧嘩を売る
12 褥そう(床ずれ)治療に見るパラダイム
13 切り傷だから縫合する?
第10章 皮膚と傷と細菌の絶妙な関係
1 灯台下暗し-体の内部よりも表面の方が未知の世界!?
2 細菌との共生
3 人間、至るところに常在菌あり
4 閉鎖空間で生きる術
5 皮膚常在菌の生き方
6 人間が常在菌と共生する理由
7 人体の一部としての常在菌
8 手の洗い過ぎに注意
9 黄色ブドウ球菌参上!
10 耐性ブドウ球菌(MRSA)について-実はひ弱なMRSA
11 石鹸、シャンプーと皮膚の健康
12 化粧は皮膚を老化させる
13 化粧というパラダイム
第11章 生物進化の過程から皮膚の力を見直すと・・・・・-脳は皮膚から作られた!?
1 はじめに-一冊の本との出会い
2 細菌という生き方-より速く、よりシンプルに
3 真核生物の論理-邪魔者は飲み込め!
4 なぜ細菌は多細胞化できなかったのか
5 最初の多細胞生物が直面した問題-体にくっついてくる細菌たち
6 外胚葉生物の知覚-体表面全体がセンサー
7 二胚葉生物の知覚と神経系-次第に高まる能力
8 三胚葉生物のもたらした革命-軍拡競争のなかで
9 脳は皮膚から作られた
10 そして、新しい創傷治癒システムへ
11 裸のサル
12 皮膚角質層の問題-浅い損傷の方が治療に難渋するという謎
13 現代都市文明が皮膚を痛めつける
あとがき
面白かった本まとめ(2011年下半期)
<今日の独り言>
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