日本のロック・シーンで最も清涼感のある声をもつ男、草野マサムネ(vo&g)を筆頭に、三輪テツヤ(g)、田村明浩(b)、崎山龍男(dr)から成るスピッツの『花鳥風月』『色色衣』に続く、special album第3弾。2002年以降、各種トリビュート盤に収録されたカヴァー曲、2004年以降のシングル・カップリング曲等、スピッツとしてのアルバム初収録曲のみで構成された10年間のレア・トラック&カヴァー曲集。
1991年「ヒバリのこころ」でデビューだから今年デビュー21年目になるスピッツ。しかしここに流れるのは21年という歴史の重みでは無く、まるでデビューしたてのバンドのような初々しさと弾けるような爽やかなメロディである。奥田民生、荒井由美、原田真二、はっぴぃえんど、花*花などのカヴァーも草野マサムネ氏の声で歌われると見事にスピッツ・カラーに染まり、他のオリジナル・ナンバーと違和感無く並んでいる。バンドも20年経てば何らかの違った方向や実験に走りがちであり、それが時にはファンを裏切る独善的な作品を産んでしまうこともある。そんな中デビュー当時の初期衝動そのままにブレないスタイルを保ち続けるスピッツの在り方は、ある意味アナクロで不器用に見えるかもしれない。しかしファンにとってはこの常に変わらぬスタンスが心の拠り所であり、何かあったらスピッツの基へ帰ればいい、という避難所のような存在なのである。
いつもアングラだ前衛だと騒いでいる私もそんな冒険に疲れた時一番安心出来るのはスピッツだったりする。ブルーハーツが好きでギターを手にしたというマサムネ氏がロックンロールではなくよりメロディ重視のアコースティック路線を進むことになったのは自らの声の特性を自覚したからに違いない。常に自分たちに一番相応しい道を選択し無理な負担を感じること無く唯我独尊歩み続けてきた彼らがいるからこそ日本のロック・シーンを信じることが出来るのだと思っている。タイトル通り彼らは実はJ-Rockシーンにおける真の”オルタナティヴ”なのかもしれない。
スピッツに
平和を託す
凸凹世界
当たりまえと思ってたら壊れてく(「テクテク」より)