1970年代半ばベルギーで結成。イギリスのヘンリー・カウ、フランスのアール・ゾイ等と共にチェンバー・ロックの創始者としてプログレッシヴ/ユーロ・ロック界に衝撃を与えた暗黒の室内楽団ユニヴェル・ゼロの初来日公演。1980年代プログレ専門誌「Fool’s Mate」に心酔した者にとってはその名は魔法のように魅惑的に響く。招聘はユニヴェル・ゼロ来日実行委員会。ツイッターのつぶやきを読むとどうも代表者は女性のようだ。いずれにせよ35年近い時を経てようやく来日に漕ぎつけた努力は称賛に値する。
会場が私の地元吉祥寺ということもあり妙に身近な存在に感じられる。公演前日にはタワーレコード渋谷店でサイン&撮影会(!)が開催され根がミーハーな私は喜び勇んで参加した。オリジナル・メンバーのダニエル・ドゥニ(ds)とミシェル・ベルクマン(bassoon/oboe)がサインをしてくれ、全メンバーと一緒に記念撮影もしてもらった。ホクホク。
ファンにとっては歴史的な来日だけに3公演(11日夜・12日昼夜)全部行ったツワモノも結構いたらしい。私は一番空いていた12日の昼公演を観たのだが、開演前に並ぶ観客は95%が男性、それも往年のプログレ・マニアのおっさんといかにも音楽好きそうな地味な草食系男子ばかり。傍から見たらコンサートに並んでいるというより場外馬券売り場に並ぶ列のように思われただろう。私は整理番号18番だったので前から3列目の中央の席を確保。ステージ上にはドラム・セットを中心に左右に椅子と譜面台が並んでおり正に室内楽的な雰囲気を醸し出している。
開演時間通りにメンバーがステージに登場。リーダーのダニエルが登場すると割れんばかりの拍手が湧きあがる。夜の部は日本のバンドが前座を務めたが、昼の部は前座なしなので万全の態勢で彼らの演奏に臨むことができた。ミニマルなピアノと品のある木管楽器のユニゾンに驚異的に表情豊かなドラムスが加わった途端にサウンドが異端の悪魔的な香りを発散し出す。私は彼らの音源は最初の3枚をアナログで持っているだけなので久しく聴いておらず、曲名も覚えていない。しかしその感触は学生時代に彼らをはじめレコメン系のアーティストのレコードを聴き狂っていた頃に感じたモノと全く同質であり、当時の興奮が蘇ってきて懐かしさに夢見心地になってしまう。若手の新メンバーもそれぞれ高度な音楽教育を受けた実力派揃いだけにとにかく演奏が物凄く上手い。複雑な編拍子が重層的に重なる高度な曲構成を次々と畳み掛けてくるので一瞬たりとも気を抜くことが出来ない。それでいて難解さを感じさせない独特のグルーヴのある音世界に酔った100分間だった。
物販では来日記念の「ユニヴェル・メモ」が売っていて駄洒落のセンスに思わず爆笑。招聘元も楽しんでるところがイイね!
ユニヴェルと
言えばゼロと応える
魔法の合言葉
ダニエル・ドゥニはオフの時間は中古レコード漁りに精を出していたそうだ。いくつになっても失わぬ音楽への興味に強く共感する。
*この夜私は灰野さんと太田惠資さんのデュオを観に下北沢へ。そのレポは明日書きます。