重量級絶望系ドローン・ノイズ・ユニットSUNN O))) にも参加するオーストラリアの鬼才オーレン・アンバーチをドラムに迎えてのトリオの3年連続になるSDLX公演。昨年のライヴ録音LP/CD「いみくずし」のリリース記念でもある。トリオとして1月19日(木)に北九州芸術劇場でアメリカのミニマリストの重鎮シャルルマーニュ・パレスタインと共にコンサートを行い、先週26日(木)にはオーレンとジムのデュオでSDLXに出演、そしてこの日は再びトリオ公演。先日当ブログに書いたように新作音源は灰野さんとしては自分のライヴで買ってほしいとの意向だったが、我慢できず物販でLPを購入。昨年リリースされた同トリオのLP 「またたくまに すべてが ひとつに なる だから 主語は いらない」と同様デザインはSUNN)))のスティーヴン・オマーリーの作品で豪華内袋付見開きジャケット仕様。しばしその美しさに見惚れる。
SDLXは通常とは異なり縦のセッティング。奥の壁側がステージで椅子が並べられている。一昨年のペーター・ブロッツマンの時と同じレイアウト。私は例によって最前列中央の椅子を確保。それにしてもお客さんが入っている。椅子は満席、立ち見多数の満員御礼。しかも若い観客が多い。外国人客の姿が目立つのも六本木ならでは。灰野さんの久々のSDLX出演ということもあるだろうが、時代が灰野さんを求めているという気がする。今年は還暦という記念すべき年だから注目が高まるのは灰野さんにとっても嬉しいはず。
ライヴはまずシャルルマーニュ・パレスタイン氏と石橋英子嬢がゲスト参加しグラス・ハープ演奏でスタート。5人がワイングラスを手に奏でる妙なる響きに乗せて灰野さんが歌う天上の音楽。まずジムがベースを構え、オーレンのドラムとビートを刻み始める。灰野さんがSGでビートの上に複雑なコード・プログレッションを展開。徐々にうねりが高まりソリッドな8ビートに轟音ギターが炸裂する展開に。先日の不失者の演奏が意図的に抑制されたストイックなものだっただけに、この日は灰野さんの感情を全て吐き出すような激しいアクションとギター・プレイが爆発する。ジムも激しくヘッドバンギングし驚異的に這いずり回るようなベースラインを紡ぎだす。オーレンのパワー・ドラムはまるでハード・ロッカーのようだ。灰野さんの歌はところどころに不失者でも歌われたフレーズを挟み込み聴き手の耳に突きささる。途中で灰野さんの要請で照明が落とされる。暗闇のパワー・トリオ。放射されるエネルギーに聴き手は唖然とするばかり。3曲50分の演奏で休憩。
第2部は灰野さんがフルートで静かに始まるがすぐにギターに持ち替え再び爆音演奏。第1部よりもアンプのヴォリュームを上げたようで容赦ない大音量に耳核の奥まで洗浄される気分。その心地よさに酔っているうちに時間の感覚が麻痺する。3人の技がぶつかり合い火花を散らす演奏はひたすらエキサイティングだった。1曲ぶっ通しで40分の演奏。アンコールはなし。観客はそれで十分満足した様子だった。
楽屋でさっそく買ったばかりのLPに3人のサインを貰う。昨年も貰ったのでこれで2枚目だ。元マネージャーの人やビデオ撮影のスタッフやサインを求める外国人客など挨拶に来る人が絶えない。上機嫌で対応する灰野さんはとても楽しそうだった。
強力に
グルーヴしてる
パワー・トリオ
最近今一つ面白いイベントがなくて足が遠のいていたSDLXだが、広くて音もいいので今年はもっと灰野さん関連のイベントを企画してほしい。