A Challenge To Fate

私の好きな一風変わった音楽を中心に徒然に綴ったページです。地下文化好きな方は見てやって下さいm(_ _)m  

坂田明&芳垣安洋バースデイ・ライヴ@新宿ピットイン 2012.2.21 (tue)

2012年02月23日 00時45分40秒 | 素晴らしき変態音楽


坂田さん67歳、芳垣氏53歳。誕生日が同じ2月21日の新旧(芳垣さんもベテランだが)フリージャズ界を代表するふたりが毎年開催しているバースデイ・ライヴ。私は初参戦だが、毎回豪華ゲストを迎えて賑やかにドシャメシャ・パーティを繰り広げている。今年のラインナップは坂田明(Sax,Cl)、芳垣安洋(Ds)、大友良英(G)、水谷浩章(B)、高良久美子(Per,Vib)、高岡大祐(Tuba)、坂田学(Ds)と中堅~若手で固めた鉄板の布陣。これは期待するなという方が無理ってもの。

早くに予約をしたので最前列の芳垣さんのドラムの目の前の席を確保できた。会場は満員とはいかないものの熱心なファンの熱気に満ち溢れている。ミュージシャンの姿もチラホラ。やはり巨匠ふたりの誕生日を祝いに訪れた様子。

まず主役のふたりが登場。いきなり坂田さんが「以上のようなわけで演奏をするわけです」と挨拶し笑わせる。ふたりで誕生日が同じ有名人の名前を挙げておいて「そんなにいませんね(爆笑)。それじゃ演奏でもやりますか」と和やかなムードから一変、坂田さんのフリーキーなアルトが炎を吹く。芳垣氏も呼応して爆音プレイが炸裂。ふたりが一歩も引かないストロング・プレイはのっけから物凄い迫力。芳垣氏のドラムの連打が脳髄に突き刺さる。激しい掛け合いに手に汗握ったあとは、芳垣氏が引っ込み、ゲストの水谷氏、高岡氏、高良嬢と坂田さんのクラリネットで室内楽的な静的な演奏。先ほどの緊張感が解けてリラックスした雰囲気に身を委ねる。続いて今度は芳垣氏と坂田学氏のツイン・ドラムと大友氏のギターのトリオ。芳垣氏は最初「奥さんもステージに上げて坂田ファミリーで演奏しては」と提案したのだが却下され、「私が坂田明さん、大友さんが奥さん役の疑似坂田ファミリーです」と紹介。大友氏は「俺奥さんなの?始めて聞いた」とボケをかます。このトリオの演奏がヒートアップしてまた凄かった。ふたりのドラムがこれでもかとばかりに火花を散らす中に大友氏のノイズ・ギターが掻き消されるほどの迫力。とにかく大音量の爆裂プレイに興奮。第1部の最後は全員で割と大人しめの集団即興。坂田さんはクラリネットとアルトを交互に演奏。じわじわ盛り上がる演奏が最高潮に達する直前で終了。ここまで1時間。もう満腹というくらいにバラエティ豊かな演奏だった。まだ半分残っているのが楽しみやら怖いやら。

休憩中カウンター近くでCD即売に来ていたdoubt musicの沼田氏とダベッていると坂田さんが入口から顔を出し「そろそろ始めます」と店員に伝える。

第2部は坂田さん+大友氏+水谷氏+学氏のカルテットからスタート。またもや坂田さんは初っ端から全開モード。オーソドックスな編成のカルテットで坂田さんのブロウが聴けるのは嬉しい。ジャズの基本だね。続いて芳垣氏+高岡氏+高良嬢の変則トリオによる演奏。先ほどのカルテットとは打って変わってユーモラスな高岡氏のチューバと高良嬢のヴィブラフォンを中心にした上品な演奏。心地よくて眠ってしまいそうだ。最後は再び全員によるセッション。今回は最初から丁々発止のインプロヴィゼーションが展開されるスリリングな演奏。坂田さんがマイクに向かって歌いもした。エンディングは全員が最大限のエナジーを発散する強力な磁場を持った轟音の嵐が吹き荒れる。芳垣氏の発する気合いが直に伝わってきて金縛りに合ったような気分。演奏終了後「演奏はいつかは必ず終わりますから安心してください」と坂田さん得意のフレーズ。洋輔さんが今年71歳でナベサダさんは79歳になるという。「そうして年々去る人もいるわけです。今ステージにいる人たちも明日は我が身ですから」。それにしても70歳近くなってもこの過激さに溢れたパワーがいったいどこから湧いてくるのか、と舌を巻いたライヴだった。



ふたりとも
歳を取るのさ
同じ日に

灰野さんは阿部薫さんと同じ誕生日(5/3)である。阿部さんが生きていたらやはり一緒にバースデイ・ライヴをやったのだろうか、と想像すると楽しい。
コメント
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