黒い森(シュヴァルツヴァルト)はドイツ南西部バーデン地方の南北160kmの地帯のことである。ドイツトウヒの木が生い茂り暗く(黒く)見えるのでこの名がついた。牧歌的な農村地帯で名前からイメージする暗黒世界とは結びつかない。しかし黒い森はドイツ文化に内在する神秘主義の背景を考えると誠に象徴的である。ドイツ表現主義・新即物主義・退廃芸術などドイツ芸術の流れの深淵には目には見えない暗い思索の森が沈殿している。ロックでは1970年代のクラウト・ロック、1980年代のノイエ・ドイチェ・ヴェレ、1990年代のテクノなど内容よりも形を重視した即物的なスタイルが目立つがその一方でワーグナー的な大袈裟なほど起伏の豊かな感情表現もある。彼の国のポップムージックはドイツ語の鉱物的なカクカクした響きと相まってどこかアンチヒューマン(反人間)な狂気が滲み出るような気がする。女性歌手の多くが女優としても活躍し恐ろしい程の美貌で鋭角的な歌を唄うので何だか異星人の歌を聴いているような居心地の悪さを感じてしまう。その宙に浮かぶような感覚は中毒性が高くクセになるほど魅惑的。
●マレーネ・ディートリッヒ
ワイマール共和国時代に花開きハリウッド女優として活躍。第二次大戦時反ナチスの立場で戦地に赴き「リリー・マルレーン」を歌い兵士の心を癒した。人間を超えた美貌と刹那的な歌は現在でも信奉者が多い。
Marlene Dietrich - Lili Marleen
●ロッテ・レーニャ
ウィーン生まれ、ドイツのミュージカル舞台で活躍しクルト・ワイルと結婚。ブレヒト「三文オペラ」で映画デビュー。歌手活動が中心で映画には生涯5作しか出演していないがグラミー賞ノミネート経験あり。
●ニナ・ハーゲン
東ドイツ生まれ。1976年に西へ亡命しバンドを率いて活躍「パンクの母」の異名を取る。エキセントリックなファッションと歌唱は世界中に大きな衝撃を与えた。1990年代後半からブレヒトをはじめとするミュージカル曲を唄い続けている。
●ウテ・レンパー
ミュンスター生まれの歌手。「キャッツ」「ピーターパン」「嘆きの天使」「キャバレー」「シカゴ」などミュージカルに出演し名を知られる。ロジャー・ウォーターズの「ザ・ウォール」コンサートに出演、歌手としてはクルト・ワイル、マレーネ・ディートリッヒ、エディット・ピアフなどのカバーが有名。
UTE LEMPER ~ Moritat von mecky Messer (Mack The Knife - Sung In German)
●メレット・ベッカー
ブレーメン生まれ。ノイエ・ドイチェ・ヴェレ時代にバンドで活動。1990年代から女優として「キラー・コンドーム」「コメディアン・ハーモニスト」などに出演。4作のアルバムをリリース。自作曲はブレヒト劇やシャンソンをアヴァンギャルド・サウンドに乗せた悪夢の世界。アインシュテュルツェンデ・ノイバウテンのアレクサンダー・ハッケ夫人。
MERET BECKER / Zirkus
黒い森
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