ラ・フォル・ジュルネ・オ・ジャポン「熱狂の日」音楽祭2013 「パリ、至福の時」
「渋さ版キャバレー:屋根の上の牡牛」
渋さ知らズオーケストラ
北陽一郎/辰巳光英/松本卓也/立花秀輝/中村江里花/片山広明/鬼頭哲/吉田隆一/高橋保行/ギデオンジュークス小埜涼子/小林真理子/斉藤良一/ファンテイル/山口コーイチ/関根真理/山本直樹/磯部潤/藤掛正隆/池澤龍作/山田あずさ/渡部真一/すがこ/板垣あすか/東洋/若林淳/南加絵/宝子/シモ/井上のぞみ/須永朝子/陽茂弥/ペロ/プラハ/八重樫令子/東野祥子/ケンジルビエン/不破大輔/横沢紅太郎/青山健一/田中篤史/加納亮平
2005年から始まったフランス発クラシックの祭典「ラ・フォル・ジュルネ」日本版は昨年までにのべ526万人の来場者を数えるゴールデンウィークの名物イベントである。難しくて敷居の高そうなクラシック音楽を初心者でも気軽に楽しめるように若手からビッグネームまで2000人を超える出演者が低料金で3日間公演を行う。より幅広い音楽ファンへ広げようという意向だろうか昨年から渋さ知らズオーケストラが出演している。ジャンルも国境も関係なく音楽のエンターテイメント性を体現するこの巨大バンドこそ祭典には最適。海外でも高く評価されフジロックの大トリやテント公演を行う渋さがクラシックとリンクしない筈はない。クラシックの常識を逆手にとってわざわざ「演奏中の出入場自由」と告知するウィットが彼ららしい。
渋さの根源にある前衛性/アングラ趣味/諧謔主義は会場の大きさや権威に関係なく発揮される。「フランス」という今年のテーマに合わせて「渋さ知らズキャバレー」と名乗るがそれは建前。クラシック・イベントだから多少は真っ当なステージかと思ったらトンでもない。猥雑で安っぽく不真面目で不条理で滅茶苦茶で支離滅裂で悪趣味なパフォーマンスがこれでもかとてんこ盛りで展開される。観客の多くはジャズ・ファンに見えたが当然交じっている筈の真面目なクラシック・ファンの方々はどう思っただろう。丸一日のお祭りのオーラスだからと我を忘れて楽しむのが正解。渋さを見るのは久々だが150人キャパのライヴハウスで秘祭の様に繰り広げられるいかがわしい馬鹿騒ぎが大ホールで展開されるのが嬉しくて笑いが込み上げてきた。その実大団円で終わってみると祭りのあとの寂しさが心に滲みる。旅芸人やサーカスの熱狂の中に潜む刹那さと悲しみを渋さほど見事に体現している存在はいない。
闘牛士
殺るか殺られるか
その刹那
熱狂の夜が永遠に続けばいいのに。