A Challenge To Fate

私の好きな一風変わった音楽を中心に徒然に綴ったページです。地下文化好きな方は見てやって下さいm(_ _)m  

自由な音の記憶 Vol.3:サイケデリック・ロック基本のキの1番~シスコサウンド編

2013年05月20日 00時46分43秒 | 素晴らしき変態音楽


改めてレコード棚を眺めると半分以上が'60年代のサイケデリック物であることに気がつく。'80~'90年代ずっとサイケにハマりアナログ盤を買い漁った。暇な時間はレコ屋巡りに明け暮れた。海外出張に行っても空き時間は観光よりもレコ漁り。どこに行っても身に染み付いた習慣は変わらないものだ。バカ高いプレミア盤には目もくれずバッタもんコーナーでジャケ買いすることが殆どだった。近年コレクターの間でちょっとしたサイケブームがありオリジナル盤やレア盤の値段が高騰しているが元々500円コーナーで買ったレコードが30年で急に値上がりする訳もなくコレクションは財産にはならない。

サイケデリックに興味を持ったのはいつ頃だろうか。子供の頃世間にはサイケが溢れていた記憶がある。子供心にサイケはハレンチ/ゲバゲバ/ゴーゴー/ラブピースと同義語だった。テレビに映る繁華街にはシンナーを吸うヒッピーがたむろし芸能人は長髪にパンタロンで横尾忠則な背景で愛の歌を唄い子供番組の主題歌はファズ・ギターや安っぽいオルガンが鳴り響いていた。そんな昭和元禄の集大成が大阪万博だった。学習雑誌は毎月万博特集で明るい未来のテクノロジーをサイケカラーで謳った。親戚のアパートの一室を借りて従兄弟家族と泊まった。従兄弟と昼夜一緒に過ごすことが嬉しくて肝心の万博の記憶が殆ど無い。アメリカ館やソ連館といった人気パビリオンは何時間もの長蛇の列でハナから諦め東南アジア南米アフリカ等の空いてる展示を観たと思う。メキシカンハットの楽団の写真があるからそれが生涯初の外人バンドかもしれない。後に電子音楽やロックの貴重なコンサートがあったと知るが当時はそんなものにまったく興味はなかった。


幼少時のビミョーなサイケ体験の影響か洋楽ロックを聴き始めて二番目に好きになったビーチ・ボーイズは最初は爽やかなハーモニーに惹かれたが「グッド・バイブレーション」や「サーフズ・アップ」といったサイケ期の作品も抵抗なく馴染めた。当時ロック映画は「ウッドストック」か「モンタレーポップ」しかなくそこに記録されたサイケデリックな世界に感化された。パンクの洗礼を受けるとルーツたるドアーズやストゥージズやMC5さらに無数のガレージパンクバンドによりサイケに遭遇。エコバニやキュアーでネオサイケ、ザッパやプログレやフリージャズの前身はサイケなヒッピー。ロック道を進む度に必ずサイケに行き着く。これはどうしたことか?と思った訳ではないが物心ついてサイケにハマるのは必然だとしか言えまい。


例によってマイナー志向が顔を出し誰も知らないB級C級サイケを多く集めたがメジャーなバンドも押さえていた。サイケにハマり始めた頃はアナログ末期で'60年代ロックのLPは廃盤状態でデッドやザッパやジェファーソンの定盤も入手が難しい「レア盤」だったのである。
という訳でサイケデリック・ロックを代表する基本的名盤を紹介しよう。20年前訪れたサンフランシスコで飛行機の時間を気にしながらへイトアシュベリーに寄り飛び込んだ土産物屋で買ったのが表題のポスター。当時の面影は殆ど無く観光地化していたがサイケグッズは捨てる程沢山あった。
今回は'60年代ヒッピー文化のメッカだったシスコ特集。

●ジェファーソン・エアプレイン


シスコサイケ最大のヒット曲「あなただけを」はオールディーズ全集の定番だがガレージ・フォーク・サウンドとグレイス・スリックのエロい艶声が草の匂いを放ち中毒性たっぷり。ヨーマ・カウコネン(コーコネン、コウコウネンとも)の粘っこい指弾きギターとぶりぶりリズム隊とハモらない三声ハーモニーがどサイケ。全盛期の5作のアルバムすべてが必聴だが最初はポップな「超現実主義的枕/シュールリアリスティック・ピロー」をどうぞ。



●グレイトフル・デッド


デッドは知らなくても髑髏(スカル)と熊(デッドベア)は着たり貼ったり付けたりしているに違いない。アメリカではビジネス書のネタに成るほど人気と影響力のあったバンド。基本は延々とジャムセッションが続く長時間ライヴ演奏。'90年代初めにワシントンDCのスタジアムで観た時あのユルい演奏で観客がジャンプしまくり客席が大揺れするのに驚いた。レコードで全体像を知るのは無理。ジェリー・ガルシアの死後も数多くリリースされるライヴ音源・映像でも魅力の半分くらいしか伝わらないだろう。ジャケで選べばデビュー作から「ライヴ・デッド」あたりか。特に「青草も臭ぁ/アオクサモクソア」はタイトルとジャケが最高に頭死(デッドヘッズ)。



●ジャニス・ジョプリン


ジャニスといえばお茶の水の貸レの名前にもなった伝説的女性シンガー。ブライアン・ジョーンズ、ジミヘン、ジム・モリソン同様に27歳で亡くなり名誉ある27クラブに加わった彼女の影響は音楽に限らず甚大。短い生涯に残したLPは4作だけだが無数の映画や小説になった。遺作のソロ「パール」は素晴らしい歌ものアルバムだがサイケといえば(株)兄貴/ビッグ・ブラザー&ザ・ホールディング・カンパニーの「安身震/チープ・スリル」。ジャニスのヴォーカルと比較されテクニック面を云々されるバンドだが破天荒なサム・アンドリュースの痙攣ギターをはじめ荒削りな激情サウンドがジャニスの情念と見事に交換している。



●クイックシルヴァー・メッセンジャー・サーヴィス


長ったらしい名前は処女宮に関する妄想(*)から名付けられた。似たような名前のシカゴ・トランジット・オーソリティーやきゃろらいんちゃろんぷろっぷきゃりーぱみゅぱみゅとは成り立ちが違うので注意のこと。日本では上記のバンドに比べて評価が低いがサイケ方面の影響力は勝るとも劣らない。フラワー派SSWディノ・ヴァレンテ色が濃くなりレイドバックする以前のツインギター時代は文字通りのアシッド(麻薬所持で逮捕歴有)ロック。特にジョン・シポリーナのトレモロアームを駆使したプレイは多くのギタリスト(例:トム・ヴァーレイン、坂本慎太郎、栗原ミチオ)に影響を与えている。ライヴ録音の「愛の組曲/ハッピー・トレイルズ」のA面を占める「愛の組曲/フー・ドゥ・ユー・ラヴ」の脈動ビートはまるで人力サイケデリック・トランス。



*クイックシルヴァー・メッセンジャー・サーヴィスの名前:ジョン・シポリーナの証言
『マレイとフライバーグが名前を思いついたんだ。俺とデヴィッド・フライバーグ(b)は同じ日に生まれている。ゲイリー・ダンカン(g)とグレゴリー・エルモア(ds)も同じ日に生まれている。みんなおとめ座だった。マレイはふたご座。ふたご座とおとめ座の守護星は水星(マーキュリー)。マーキュリーの別名はクイックシルヴァー(水銀)。水銀は古来ギリシャ神話になぞって神の使い(the messenger of the Gods)とされている。そしておとめ座(Virgo)はそれに仕える人(servant)。そしてフライバーグが言ったんだ。 'Oh, Quicksilver Messenger Service'』

●カントリー・ジョー&ザ・フィッシュ


クイックシルヴァー以上に過小評価されているのがカントリー・ジョー率いる魚。「モンタレーポップ」では顔の花ペイントが象徴的だったし「ウッドストック」で観客との「F-U-C-K」コール&レスポンスで反戦を唄ったカントリー・ジョーはまさにカウンターカルチャーの申し子だった。ジョーのアジ演説ヴォーカルとこれまた絶賛過小評価中のバリー・メルトンのビブラート・ギターとチープなオルガンを核にしたサウンドはプロテスト・サイケNo.1!。最も有名な「アイム・ フィクシン・トゥ・ダイ・ラグ」はラグタイム風ノヴェルティ・ソングだがライトショー・ジャケの1st「心と身体のための電子音楽/エレクトリック・ミュージック・フォー・マインド・アンド・ボディ」でアート・ロックNo.1を堪能出来る。





シスコには
日清シスコ
ありません

CDやDVDで貴重な音源や映像が次々発掘されているがまずは当時のオフィシャル作品に耳を通していただきたい。






コメント (3)
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