A Challenge To Fate

私の好きな一風変わった音楽を中心に徒然に綴ったページです。地下文化好きな方は見てやって下さいm(_ _)m  

残酷な少年のテーゼ~牛田智大、ホールデン・コールフィールド、ジルベール・コクトー、そして谷口宗一

2013年09月01日 01時27分06秒 | こんな音楽も聴くんです


昨年3月12歳でCDデビューし、史上最年少ピアニストとして話題になった牛田智大君がNHK「朝イチ」に出演し、"美しすぎてヤヴァい"と驚愕とともに大きな話題になっている。今年6月にセカンド・アルバム『献呈~リスト&ショパン名曲集』、8月には初のDVD『献呈~牛田智大ピアノ名曲集』がリリースされたばかり。そのプロモーションの一環だが、『あまちゃん』効果で視聴率急上昇の『朝イチ』に出たことで、まったく無防備の一般視聴者に大きなショックを与える効果があった。

視聴者の声:
ーNHK朝イチで13歳のピアニスト、牛田智大くん。女の子のような可愛らしい容貌、まだ声変わりしてない黄色い声、アイドルばりの作り笑顔で、で、話すと、内容も話し方も大人びてて。世の中には、こんな無菌室で純粋培養されたような少年が存在するんだな、と驚愕。これからの成長、要チェックだな。
ー牛田智大くん、画像検索の時点で雰囲気がなんかこれヤバいな、昔の少女マンガに出てくる美少年みたいな感じで、二次元感すごいし、とはいっても単純にカワイイとか綺麗ーとか言えない感じあるな なんだこれ

単に美少年というだけでなく、日経新聞を愛読し、驚くほど丁寧なことばづかいで話し、そして漬け物とみそ汁が大好きだという、13歳とは思えないキャラクターに誰もが驚愕したわけだ。好きなアイドルとして、作家重松清の名前を挙げ、AKB48については「知らない」と言う世俗にまみれていないイノセントな魅力は、天野アキの天真爛漫さと同様、現代社会に於いて限りなく貴重な果実である。



勿論「ショパン国際ピアノコンクール in Asia」において、史上初となる5年間続けての1位受賞記録を持つピアノ演奏の素晴らしさは世界的に有名な音楽家からも絶賛を浴びる。

ー彼は才能豊かでピアノの技術は高度です。さらに美しいタッチで演奏します。(ラン・ラン)
ーあなたの演奏に多くの可能性と才能を感じることができました。素晴らしい点はそれぞれの音にしっかりとした意思と主張があること、そして多様な色彩感にも溢れていることです。技術面においても申し分なく、情感豊かに旋律を歌っていた点が優れていると感じました。(アンジェイ・ヤシンスキ/第14-16回ショパン国際コンクール審査委員長)

それにしてもデビュー時と現在のポートレイトを見比べると、少年の1年間の成長ぶりに恐ろしい程の戦慄を覚える。少年期とは一生で最も残酷な季節である、とはジャン・コクトーの『恐るべき子供たち』を読んでの筆者の感想だが、牛田君はそれを体現する"アンファン・テリブル(Les Enfants Terribles)"に違いない。




●ホールデン・コールフィールド


"牛田"を英訳すれば「Cow Field(カウフィールド)」。連想すべきは「コールフィールド」、すなわち3年前に逝去したJ・D・サリンジャーの代表作『ライ麦畑でつかまえて(The Catcher in the Rye)』の主人公、ホールデン・コールフィールド(Holden Caulfield)である。1952年の初邦訳版は『危険な年齢』と題されたこの小説でコールフィールドは16歳の高校生として描かれる。高校をドロップアウトして放浪し、攻撃的な言動を繰り返し、アルコールやタバコを乱用する生き様は、一見牛田君の純粋さと対極にあるように思えるが、自身の落ちこぼれ意識や疎外感に苛まれる少年らしい潔癖さやデリケートな感性は、間違いなく残酷な季節を生きる恐るべき子供の肖像である。思春期特有の断罪意識ゆえ精神に支離滅裂な破綻を生じたコールフィールドがもし音楽を奏でたら、慈愛に満ちたフレーズが流れ出したかもしれない。






●ジルベール・コクトー


色白で長髪の自意識過剰な美(非)少年だった高校時代の筆者に同級の女子が付けたニックネームは「ジルベール」。当時人気を博した少女漫画『風と木の詩』(竹宮恵子作)の主人公のひとり、ジルベール・コクトーに由来する。フランスの上流階級の2人の主人公、華麗なジルベールと誠実なセルジュの切ない愛を描いたこの作品は、「少年愛」のテーマを本格的に扱った漫画作品であり、少年同士の性交渉、レイプ、父と息子の近親相姦といった過激な描写でセンセーショナルな衝撃を読者に与えた。現在のレディコミックならば保守的過ぎる描写だが、当時は「ベッドで男女の足が絡まっているのを描いただけで作者が警察に呼び出された」(竹宮恵子)という時代であり、如何にスキャンダラスな挑戦だったか想像して欲しい。中でも少女のように美しい妖艶な14歳の少年で、多くの男達と破滅的な関係を持つジルベールこそは、禁断の愛の象徴であり、時代の改革の急先鋒だった。現在でも数多くのオマージュ作品やコスプレの対象になっている。






牛田智大君とホールデン・コールフィールドとジルベール・コクトー。この三者はすなわち「最も残酷な季節」を形作るトライアングルの三つの辺に他ならない。そして季節は巡る。小説や漫画の登場人物とは違い、牛田君には成長という更なる残虐の掟が待ち受けている。彼が人生の荒波を如何に生き抜くか、芸術的感性の成長と共に温かくも守りたいと思う。

いつまでも
子供のままじゃ
いられない

●谷口宗一&BAKU


永遠の少年であることを追求したものの、成長と共に永遠い夢を食べ続けることを断念せざるを得なかった谷口宗一率いるBAKUも残酷な季節の徒花だった。




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