Hair Stylistics a.k.a.中原昌也の久々の公式アルバム『Dynamic Hate』がリリースされた。2009年にMonthly Hair Stylisticsとして12ヶ月で12作のアルバムをリリース後、私家盤CDRを津波の如く大量に垂れ流した。最初は年齢と同じ40作と言っていたのが、50作になり、100作になった。情に干されて次々購入し、1年経った頃に我に帰ると大量の堆肥の山が残された。公式リリースは2011年2月にBlack SmokerからCD『First』、8月にベルギーのレーベルからLP『Hustler Power Electronics Convention』、2012年9月にJohn Wiese とのスプリット7"+2カセット『Neu Dimension』。2010年頃まで盛んだったライヴ活動は、苦労の割に実入りが無いと徐々にフェードアウト。ここ2年間は6月4日のお誕生会と地方を含み年数回のみだと思われる。情報が殆ど入らないので、時々ライヴ会場やCDショップで偶然に会った時に話を聞く以外、近況を知る手だてがない。
"渾身のビート・アルバム"とされる新作は1曲ラッパーの銀座DOPENESSがゲスト参加、腰砕けリズムマシンが全編をリードし、一聴すると80年代のC級テクノかポンチャック風。トボケた効果音にそこはかとない悪意を感じる。"ビート・アルバム"の真意は不明だが、KILLER-BONGのように地獄の業火へ導くイルなビートに比べると、ヘアスタらしいお間抜けな空白感が溢れており、クラブでかけたら脱臼者続出だろう。同じビョーキでもイルとは別モノと知れる。イルではなくニル(nil/無、虚無)が溢れている。
CDに続いて新作短編集『こんにちはレモンちゃん』も刊行された。 中原は口を開ければ、「物書きは辛い・キラい・辞めたい」とボヤイてばかりなので、狼少年のように誰からも信用されなくなった。2008年に絶筆宣言したが、2年前に再開し、昨年4年ぶりの著作集『悲惨すぎる家なき子の死』を刊行。それから1年半経って完成したのが本作。最新刊とは言っても描かれる世界はイラストを含め、この世に存在するのかしないのか錯乱させる非情の罠に貫かれ、読み手を問わず好色家に変えてしまうマジックはさすが。幽霊によるRAP音を聴きながら描いたアブ(ノーマル)な世界は健在。ニルでアブ(nil'n'ab)、ヘア・スタイリスティックス=中原昌也を意味する元素記号が発見された。
こんにちは
ノイズとレモン
ナイスペア
ヘア・スタイリスティックス・マンスリー・アルバム・シリーズ2
11/5スタート予定 詳細はコチラ