A Challenge To Fate

私の好きな一風変わった音楽を中心に徒然に綴ったページです。地下文化好きな方は見てやって下さいm(_ _)m  

割礼「ネイルフラン」LIVE@下北沢Shelter 2013.9.2(mon)

2013年09月04日 00時22分01秒 | 素晴らしき変態音楽


『HMV GET BACK SESSION 割礼「ネイルフラン」LIVE』

「HMV GET BACK SESSION」は、アーティストが自身のアルバム作品を収録曲順どおりに演奏する、LHE 主催のライブシリーズです。今回、よりコアな音楽ファンに愛される名盤に注目し、“HMV GET BACK SESSION independent”と題して、ロックの聖地「下北沢シェルター」にて開催いたします。
日本が誇るサイケデリックバンド「割礼」が、結成 30 周年を記念して今年 1 月に再発された歴史的名盤『ネイルフラン』と『ゆれつづける』を、9月公演と 10月公演に分けて再現いたします。ニューウェーヴの終わりの季節に制作されたこの2作は、前作からうって変わり早川岳晴によるチェロやウッドベース等の弦楽器によるドローンなアレンジなどをちりばめたプログレッシヴロック的な方向性で作られた名盤。当時の世のメインストリーム音楽の流れと全く無縁のオリジナルなスタンスは、「HMV GET BACK SESSION independent」に相応しい。



割礼 『ネイルフラン』(1989)
パンク/ニューウェーヴの喧騒に耳を塞いだかのような「間」と静寂とスロウビート、そしてアコースティックな響きも垣間見る美しいアルバム。
01. 溺れっぱなし
02. 悲しみの恋人たち
03. 目かくし
04. 太陽の真ん中のリフ
05. バラ色の宇宙
06. ネイルフラン
07. 君の写真



今年結成30周年を迎えた割礼は2月にBorisと下山(Gezan)を迎え、リイシュー盤発売記念を兼ねて特別ライヴを開催した。充実のラインナップだったが、対バン・イベントなので割礼ワールドにどっぷり溺ることは叶わなかった。その欲求不満を一気に解消するライヴ企画が実現、しかも2晩。数年前の5時間ライヴに匹敵する歓びである。80年代後半のインディーズ~バンドブームに沸いた音楽業界の青田買いが嵩じてメジャー・リリースされた割礼の2作は、縦ノリビートパンクか根明バカロックばかりだった当時のシーンでは極めて異色の存在だった。かと言って、アングラの湿った澱みに安穏としていた訳でもない。


(写真・動画の撮影・掲載については出演者の許可を得ています。以下同)

割礼は原爆オナニーズ、THE STAR CLUBなどパンク全盛の名古屋で1983年「割礼ペニスケース日曜日の青年達」として結成された。初期はパンク/ニューウェイヴ色のあるサウンドだったが、徐々にテンポが遅くなり、宍戸幸司のディープな”うた”を活かすサイケデリックなサウンドに移行。2nd『LIVE’88』(1988)で現在の割礼の原型が完成した。その頃、確かビクターからS.O.S.シリーズと銘打って、インディー・バンドのコンピCDが数作リリースされた覚えがある。ニューエスト・モデル、幻覚マイム、マネキン・ノイローゼ等と共に割礼も収録されていた筈。



恐らくそこで割礼の評判が良かったのだろう、ビクターからリリースされたのが『ネイルフラン』『ゆれつづける』の2作。流石メジャーだけありサウンド・プロダクションは遥かに向上、極めて完成度の高い作品を産み出した。早川岳晴のチェロを加え展開する幽玄で芳醇な世界は日本サイケデリアの最高峰といえる。割礼にとっての『リヴォルヴァー』と『サージェント・ペパーズ』と例えてもいい。しかし極度に個性的なサウンドは、たとえバンドブーム期ではなくとも、常にシーンの流行やトレンドから逸脱している。余りにも異端の存在感は、ごく一部のファン以外には評価されようがない。30周年やリイシューの話題で「日本が誇る」「伝説の」「歴史的名盤」などの煽り文句がネット上を飛び交うにも関わらず、現場は今までと変わらずひっそりとしたまま、献身的なマニアだけが共有出来る甘く隠微な空気に包まれている。



2001年に初めて観た時から宍戸幸司(vo,g)、山際英樹(g)、鎌田ひろゆき(b)、松橋道伸(ds)というラインナップは不変である。過去に何度もメンバーチェンジや活動停止・再開を経験した30年選手としては、コンスタントに活動するこの13年間は安定期と呼べる。その間リリースしたアルバム3枚に加え、宍戸ソロを含む新録CDR3作、初期音源CDRは物販・通販で購入可能。地方ツアーは余りやらないが、都内では年間10本以上のライヴを行ない、メンバーのソロや別プロジェクトなど課外活動も盛んである。東京に住んでいれば毎月一回は割礼浴をすることが可能。



開演前のSEのブリジット・フォンテーヌはメンバーの趣味だろう。ミニマルな室内楽のBGMで4人が登場。特に挨拶もなく、時間をかけて楽器のセッティングをした後、おもむろに立ち上がった宍戸が一呼吸おいてクリアトーンのストロークを奏でる。割礼の典礼の始まりだ。一曲目「溺れっぱなし」のタイトルそのままに、シェルターがサウンドの波の中に溺れてゆく。深いリバーヴは、例えば人間存在の深層に忍び込む灰野敬二のそれとは違い、会場の隅々まで割礼の世界を浸透させる溶液の作用を持つ。何も考えずただその潮騒に身を任せ漂っていればよい。溺れてゆれつづけることが、割礼のサイケデリック・ワールドの開眼法なのである。



日常的にこの陶酔感を求めるようになったら危険だが、12年聴き続けても今のところジャンキーになることなく、年数回深く潜水することで満足している。海女ちゃんの本気獲りが年一回しかないことに比べれば、若干中毒気味かも。南部ダイバーよろしく精神潜水遊戯に耽溺した2時間の至福体験だった。10月に再び南部もぐりさながらに、割礼で溺死することができれば極楽浄土である。



encore01
08.ベッド
09.アラシ
10.風船ガムのドジ

encore02
11.GPU

割礼の
魅力は観なきゃ
分からない

<ライヴ情報>
●割礼
10/6(日)東高円寺UFO CLUB 「U.F.O.CLUB presents 石原洋・割礼 2マン」
石原洋 with Friends(石原洋+見汐麻衣+北田智裕+山本達久)/割礼

10/29(火)下北沢Shelter 『HMV GET BACK SESSION 割礼「ゆれつづける」LIVE』

●鎌田ひろゆき
ハーネス1周年記念ライブ
9/8(日)阿佐ケ谷 harness 鎌田ひろゆき with さねよしいさ子/古明地洋哉
9/15(日)阿佐ケ谷 harness 鎌田ひろゆき/小山卓治
9/28(土)阿佐ケ谷 harness 鎌田ひろゆき/塚本晃(NOWHERE)

●血と雫 Je prie pour que la goutte ne tombe pas:森川誠一郎(Z.O.A)+山際英樹(割礼)+高橋幾郎
9/6(金)池袋 手刀 「the night of tempest」 血と雫/アネモネ/highfashionparalyze/加納キカイ

9/21(土)新宿 JAM 「CLUB WALPURGIS presents "Doppelganger"~闇の中のドッペルゲンゲル第二夜~」
LIVE:血と雫 / MADAME EDWARDA/MIDNIGHT BUTOH:TAIZO/DJ:Zinny Aerodinamica/TAIZO/NERO&More/GUEST DJ:EVE EVANGEL
コメント (2)
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