A Challenge To Fate

私の好きな一風変わった音楽を中心に徒然に綴ったページです。地下文化好きな方は見てやって下さいm(_ _)m  

永久少年がめざす最果てへの旅路~スピッツ『小さな生き物』

2013年09月11日 00時28分24秒 | こんな音楽も聴くんです


●スマップとセックス・ピストルズとハイロウズとBJCとTMGEとスピッツの追想





朝のワイドショーでスマップがシングル50曲をメドレーで歌う映像をなにげ無く観ていた。決して交わりそうも無い筆者とスマップだが、実は馴染みの曲がある。「青いイナズマ」「SHAKE」「ダイナマイト」「セロリ」の4曲。何故か? 私のカラオケの十八番だったのである。

テレビで流れるようなJ-POPや歌謡ポップスには無縁の8/90年代を過ごしたので、カラオケには殆ど興味がなかった。付き合いやパーティ等でマイクが廻って来ると、GSかうろ覚えのフォークや演歌をガナッて、場をシラケさせるのが常だった。それが無類のカラオケ好きになったきっかけはセックス・ピストルズの来日公演だった。1996年11月武道館、10年ぶりに会った中学時代の悪友と一緒に観に行った。金儲けのためと明言した再結成ツアーは賛否両論だったが、やはり観ておいて良かったと思う。コンサートのあと、別れが名残惜しくて六本木のカラオケボックスに行った。初めて本格的な洋楽カラオケが導入され評判の店。それまでもオールディーズやビートルズや全米大ヒットのカラオケはあったが、その店ではハードロックやプログレやパンクのカラオケがあった。ふたりでピストルズやクラッシュやラモーンズ、クリムゾンやパープルやツェッペリンを歌いまくった。英語は怪しかったが、好きな曲を堂々と歌えるのがとにかく快感だった。

一度歓びを覚えて以来、カラオケに行くのが愉しみになった。丁度通信カラオケの全盛期で、楽曲数が一気に増え、それまで無かったマニアックな曲も歌えるようになった。しかし誰も知らないレア曲ばかりではシラケるので、ヒット曲を歌おうと覚えたのがスマップだった。他にはハイロウズやブランキー・ジェット・シティやミッシェルガン・エレファントが得意だったが、全曲アップテンポだと流石にキビシイ。そんな時にはスピッツが最適だった。草野マサムネのハイトーンは喉に負担がかかるが、酒を飲むと不思議に声が出た。連続で歌って声を潰し、さらに酔い潰れて沈没するのが常だった。



特別付録:筆者のカラオケ・ベスト5
・ハイロウズ「月光陽光」
・ブランキー・ジェット・シティ「赤いタンバリン」
・スピッツ「冷たい頬」
・スガシカオ「ぼくたちの日々」
・井上陽水「傘がない」(同時通訳付)


●スピッツ『小さな生き物』


スピッツの3年ぶりの14thアルバム『小さな生き物』がリリースされた。今までジャケットには女性を起用してきたが、珍しく男性モデルのアートワークである。『空の飛び方』よろしくハンググライダーで飛び立とうとする少年像は、長編映画引退を表明した宮崎駿監督の『風の谷のナウシカ』へのオマージュか? 筆者が大学入学当時、ハンググライダー部への入部を望んでいたという事実は知る由もなかろう。スピッツにとっての新たな旅立ちを示唆するのかもしれない。

しかし、先行シングルの「さらさら」でも明らかな通り、アルバム全体には特に新機軸への挑戦はない。昔ながらのマサムネ節が貫かれている。デビュー作『ヒバリのこころ』以来スピッツの歌には「空」「宇宙」「鳥」など「ハネモノ」に溢れている。夢占いでは「空を飛ぶ夢」のキーワードは、永遠の少年/自由な冒険心/性的欲求である。スピッツのシンボル・カラーは間違いなく「青」であり、それは「ブルース」に通じる。「ブルース=青春」であることは既に証明済み。そう考えるとスピッツとは青春を生きる少年の自由な空想力と欲求不満の苦悩を描き続けるバンドだと考えられる。草野マサムネのナイーヴな感性は永遠の少年そのものであり、それは45歳の中年になった今も変わることは無い。如何に変わっていないのかの証明に、1991年のデビュー曲「ヒバリのこころ」と22年後の最新シングル「さらさら」マッシュアップをご覧頂きたい。
→→コチラ(うるさかったら音声OFFにして下さい)



♪負けないよ 僕は生き物で 守りたい生き物に 出会えるって 思いもしなかった もう一度果てをめざす(小さな生き物)
♪あなたに会いたいから どれほど 遠くまででも 歩いていくよ 命が 灯ってる限り・・・ 人は皆もっと自由で いられるものだと(ランプ)
♪眠りにつくまで そばにいて欲しいだけさ 見てない時は自由でいい まだ続くと信じてる 朝が来るって信じてる 悲しみは忘れないまま(さらさら)
♪星空を 見るたびに思い出す さよならも 言えないままだった 少し苦く 少し甘く もらった言葉消さないもう二度と(スワン)
♪飛びたい 飛びたい 飛びたいな 飛びたい 飛びたい 飛びたいな(潮騒ちゃん)
♪僕はきっと旅に出る 今はまだ難しいけど 未知の歌や匂いや 不思議な景色探しに(僕はきっと旅に出る)

描かれた13篇のショート・ストーリーは旅立ちの予感に満ちている。刹那的な逃避行ではなく、自由で未知の世界でのあなたとの出会いを信じて最果てを目指す旅路。「けものたちは故郷をめざす」(1957/安部公房)、「青年は荒野をめざす」(1967/五木寛之)、「少年は荒野をめざす」(1987/吉野朔実)、「うたは自由をめざす!」(2003/SOUL FLOWER UNION)、「クローンは故郷をめざす」(2009/中嶋莞爾)。
さてスピッツの4人がめざす先はいずこ?(ねこ)



めざす先
小さな生き物(ねこ)
待っている

●参考
1991年デビューのアーティスト
2月10日 - ZARD/Good-bye My Loneliness
2月14日 - Mi-ke/想い出の九十九里浜
3月25日 - スピッツ/ヒバリのこころ
4月12日 - BLANKEY JET CITY/不良少年のうた(シングル)、Red Guitar And The Truth(アルバム)
4月21日 - フィッシュマンズ/ひこうき、LUNA SEA/LUNA SEA
5月21日 - the pillows/雨にうたえば
6月14日 - ORIGINAL LOVE/DEEP FRENCH KISS
7月10日 - T-BOLAN/悲しみが痛いよ
8月21日 - KIX-S/KIX-S
8月29日 - 黒夢/黒夢
9月9日 - SMAP/Can't Stop!! -LOVING-
9月21日 - CHARA/Heaven
10月9日 - 高橋洋子/おかえり
12月4日 - WANDS/寂しさは秋の色
コメント
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