A Challenge To Fate

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【定期レビュー】マシーン・マス featuring デイヴ・リーブマン『インティ』

2014年04月01日 00時15分15秒 | 素晴らしき変態音楽


『MACHINE MASS featuring DAVE LIEBMAN / INTI』

Moonjune Records
MJR060

Personnel:
Michel Delville: e-g, Roland GR09, electronics
Tony Bianco: ds, loops, perc
Dave Liebman: ss & ts, wooden flute
with
Saba Tewelde: vo (on Track 7)

1. Inti (7:27)
2. Centipede (4:41)
3. Lloyd (6:24)
4. In a Silent Way (6:29)
5. A Sight (6:37)
6. Utoma (6:09)
7. The Secret Place (4:33)
8. Elisabeth (12:46)
9. Voice (4:53)

Production:
Recorded at Red Rock Recording Studios, Saylorsburg, PA (USA), October 10, 2012
Recording engineer: Kent Heckman
Mixed and mastered by Jon Wilkinson
Produced by Machine Mass
Executive Producer: Leonardo Pavkovic



以前レビューした『Remembrance』というアルバムでエルトン・ディーンらと共演していたドラマーのトニー・ビアンコの現行のプロジェクトのひとつであるマシーン・マスの最新アルバム。2011年にマシーン・マス・トリオとして1st CD『As Real As Thinking』を同じくMoonjune Recordsからリリースしている。ビアンコとベルギー出身のギタリスト、ミシェル・デルフィーユは変わらないが、サックスにデイヴ・リーブマンが参加しているのが興味深い。70年代エレクトリック・マイルスのメンバーとして先鋭的なジャズを創造し“ポスト・コルトレーン”と呼ばれたリーブマンが、ヨーロッパを拠点に活動する二人の個性派ミュージシャンと共にどのような音楽を志向するのだろうか。

透明感のあるソプラノ・サックスがポリリズムのビートに乗って華麗なインプロヴィゼーションを繰り広げるオープニング曲「Inti」を聴いて、メンバー・クレジットを何度も見直してしまった。間違いなく複雑なベース・プログレッションとスペーシーなキーボードが鳴っているのに、 楽器クレジットにはデルフィーユ、ビアンコ、リーブマンの3人しか載っていない。サックスとギターがユニゾンでテーマを奏でる2曲目「Cantipede」のグルーヴを支えるのも、見事にドライヴするベースのフレーズである。

資料には「リズミカルで複雑なループ“On The Fly”を活用した」とある。「On The Fly」が機材名か、プログラムソフトの名前か、はたまた何かの暗喩なのかは分からないが、ベースやキーボードの音は、ビアンコが操作するループによって奏でられているのだ。しかも本作はダビングなしのいわゆる一発録りでレコーディングされたという。スポンテニアスなインタープレイは生々しくて人間的。その一部を機械が演奏しているという事実は驚異的である。そう考えれば「機械のミサ」を意味するバンド名にも納得できる。

2000年代前半、ビアンコはエルトン・ディーンと共に「フリービート」というプロジェクトでリズムと即興演奏の有機的融合を追究した(詳しくは『Remembrance』のCD評を参照のこと)。2006年のディーンの死後も、ビアンコの追究が続いていることは明らかだ。一定の拍子記号=リズムに従って自由な即興演奏を展開するというのが「フリービート」の基本コンセプトだった。拍子をループに置き換えることで、「フリービート」の進化を狙ったのではあるまいか。それが成功したことは、本作に於けるふたりのソリストの人間的でスリルに満ちたプレイが証明している。

リーブマンの水を得た魚のように生命感に溢れたプレイは圧巻。クリアなソプラノと骨太なテナーに加え、インド風エスノ・チューン「In a Silent Way」ではエキゾチックな木笛を聴かせる。デルフィーユの演奏を聴くのは初めてだが、アラン・ホールズワースを思わせる名人芸から、フランク・ザッパ風の粘っこいロックフレーズ、エレクトロニクスを通したキーボード風サウンドまで、実に多彩な音色を使い分ける。基本的に少数コードのミニマルな曲調なので、演奏のクオリティはソリストのプレイにかかっている。それを最大限に活かして思いのままに絡み合う演奏は無限大の自由を謳歌しているかのようである。また、女性ヴォーカルをフィーチャーした「A Sight」の透明感溢れる清浄な世界も類い稀な美しさに満ちている。

リーダー・デビューから41年を数えるベテラン、デイヴ・リーブマンが新たな創造の炎を燃やして挑んだ意欲作は、予想以上に豊穣な音世界を産み出した。



音紡ぎ
年輪重ね
炎を燃やす

▼Miles Davis Ife feat. Dave Liebman & Pete Cosey live 1973



★デイヴ・リーブマン・インタビュー⇒コチラ
コメント
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