A Challenge To Fate

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【集中連載】BYG Actuel Seriesの奇蹟<前編>アーチー・シェップ/アート・アンサンブル・オブ・シカゴ

2015年11月22日 03時19分33秒 | 素晴らしき変態音楽


●前衛ジャズ専門レーベルBYG Actuel
BYGは Fernand Boruso、Jean Luc Young、Jean Georgakarakos (aka Jean Karakos) によって1967年に設立されたフランスのレコードレーベル。BYGの名は設立者3人のイニシャルから取られている。 BYG設立以前、Karakosはレコード配給・輸入業、YoungはBarclayレコード、Boruso はSaravahレーベルで働いていた。設立当時は地方の大学都市へのレコードショップのチェーンを始める一方、 Savoy音源などをフランスでの配給権を得てリリースしていたが、1969年〜71年Actuelシリーズとして、アメリカのフリージャズを中心にフランスの前衛ロック、実験音楽等のアルバムを52枚連続リリース。72年にレーベルは活動を停止するが、Actuelのカタログは幾つかのレーベルから再リリースされている。

●アート・アンサンブル・オブ・シカゴ、パリへ移住
60年代ブラックパワーの隆盛と共に盛り上がりを見せたフリージャズは、64年「ジャズの10月革命」で世界的な注目を集めたものの、経済的に恵まれることはなく、アメリカでは活動の場も限られていた。そこで多くのフリージャズ・ミュージシャンは、進歩的な音楽への関心の高いヨーロッパへ活動の場を移すようになる。そんな中、シカゴのアフリカ系音楽家の自助組織AACMの中心で活動していたレスター・ボウイ、ロスコー・ミッチェル、ジョセフ・ジャーマン.マラカイ・フェイヴァースも69年春に家具を売り払いフランスへ移り住む。「アート・アンサンブル」と称していた彼らは、パリのプロモーターからの要請で「アート・アンサンブル・オブ・シカゴ」を名乗ることになる。パリ左岸のホテルに部屋を借りたレスター・ボウイ一家以外は、トランペット奏者でもある医者の伝手でパリの精神病院に住んでいた。69年初夏にBYGに『ジャクソン・イン・ユア・ハウス』と『苦悩の人々』の2枚のアルバムを録音し、ギャラを得てパリの北郊外に住居を構える。

●汎アフリカ文化フェスティバル
7月アルジェリアでパン・アフリカ文化フェスティバルが開催され、アート・アンサンブル・オブ・シカゴも出演する。31カ国から詩人や写真家や音楽家や、ブラックパンサーのEldridge Cleaverやブラックパワー運動のStokely Carmichaelといった活動家が参加した(活動家に目を光らせるCIA工作員や冷戦時代ロシア寄りだったHouari Boumedieneアルジェリア大統領もいた)。フェスティバルの最大のスターは、自分のサックスをベトコンのマシンガンに喩えるアーチー・シェップであり、アフリカ同盟機関からの参加要請に応じてシェップは、サニー・マレイ(ds)、デイヴ・バレル(p)、アラン・シルヴァ(b)、グレイシャン・モンカー3世(tb)を引き連れてフェスに参加した。

●『Actuel』誌
先鋭的なアフリカ系アメリカ人のジャズと固有のポリリズムを融合した汎アフリカ主義を標榜し成功を収めたフェスの立役者のひとりが、ジャズ&カルチャー雑誌『Actuel』の専属カメラマンのJacques Biscegliaだった。『Actuel』誌はBYGに買収されており、 Biscegliaは『Actuel』の創設者でありジャズドラマーであるClaude Delclooと共に、YoungとKarakos(Borusoは既に手を引いていた)を説得し、ひよっこのBYGの為にフェスティバル出演者をパリに呼んでレコーディングさせることにした。フェスの2週間後にパリは、先鋭的ジャズ・ミュージシャンとファンにとってパラダイスになった。

●前衛ジャズの歴史で最も偉大な1週間
「間違いなく創世記の日々だった。パリが真の意味でコスモポリタンになった。世界中のミュージシャンが集まり、パリ中のアート施設で、あらゆるコンサートが行われ、想像力の及ぶ限り何でも好きな表現をすることが出来た」とロスコー・ミッチェルは語る。「中心地はアメリカン・センター。練習室が幾つかあり、コンサートホールもあった。ミュージシャンがみんな集まり、レコーディングやセッションの準備をしていた」
「音楽の歴史上稀に見る長期間のレコーディング・セッションだった。一週間に亘って、入れ替わり立ち替わりレコーディングが行われ、毎朝の挨拶代わりに今日は誰のレコーディングに参加する?と尋ねるほどだった。そしてBYGがすべてを記録に残した」(アラン・シルヴァ)

1969年8月11〜17日の7日間で行われたレコーディングBYG Actuel全作品の20%の10作に及ぶ。
8/11
Andrew Cyrille - What About?
Grachan Moncur III - New Africa
8/12
Archie Shepp - Yasmina, A Black Woman
Art Ensemble of Chicago - Message to Our Folks / Reece and the Smooth Ones
8/13
Dave Burrell - Echo
8/14
Archie Shepp - Poem for Malcolm
8/15
Jimmy Lyons - Other Afternoons
Sunny Murray - Hommage to Africa / Sunshine
8/16
Archie Shepp - Blasé
8/17
Alan Silva and His Celestial Communication Orchestra - Luna Surface

●actuel 1- 25
actuel 1 Don Cherry / Mu, First Part



actuel 2 Art Ensemble Of Chicago / A Jackson in Your House



actuel 3 Sunny Murray / Hommage to Africa



actuel 4 Archie Shepp / Yasmina, A Black Woman



actuel 5 Gong / Magick Brother



actuel 6 Claude Delcloo and Arthur Jones / Africanasia



actuel 7 Michel Puig / Stigmates



actuel 8 Burton Greene / Aquariana



actuel 9 Jimmy Lyons / Other Afternoons



actuel 10 Alan Jack / Bluesy Mind [never issued]


actuel 11 Archie Shepp / Poem for Malcolm



actuel 12 Alan Silva / Luna Surface



actuel 13 Paul Bley / Ramblin'



actuel 14 Acting Trio / Acting Trio



actuel 15 Anthony Braxton / B-Xo/N-0-1-4-7a



actuel 16 Andrew Cyrille / What About?



actuel 17 Joachim Kühn / Sounds of Feelings



actuel 18 Archie Shepp / Blasé



actuel 19 Jacques Coursil / Way Ahead



actuel 20 Dave Burrell / Echo



actuel 21 Grachan Moncur III / New Africa



actuel 22 Kenneth Terroade / Love Rejoice



actuel 23 Clifford Thornton / Ketchaoua



actuel 24 Ame Son / Catalyse



actuel 25 Freedom / Freedom at Last



BYG Actuel Seriesの奇蹟<後編>ゴング/ムジカ・エレットロ二カ・ヴィヴァへ続く

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