A Challenge To Fate

私の好きな一風変わった音楽を中心に徒然に綴ったページです。地下文化好きな方は見てやって下さいm(_ _)m  

【私の地下ジャズ愛好癖】トルコ有機音楽と米国地下ジャズの邂逅:コンストラクト&ジョー・マクフィー

2016年02月27日 00時44分38秒 | 素晴らしき変態音楽


アンダーグラウンド・ジャズの傑作として称される『アンダーグラウンド・レイルウェイ』(69)『ネイション・タイム』(71)で知られるNYのサックス奏者ジョー・マクフィーは、2014年3月イスタンブールを訪れ、トルコの自由音楽カルテット、KONSTRUKT(コンストラクト)と共に何度かのコンサートを行った。マクフィーはその旅の気持ちを、30年前に飛行機のパイロットがアナウンスした「風に立ち向かい、キャッチし、上昇する」という詩に喩えて表現する。それほどワクワクした期待感に満ちた経験だったに違いない。



旅の出だしは散々だった。ニューヨークから13時間かけてイスタンブールへ着いてみると、楽器や衣装の入ったスーツケースが紛失し、リュックとテナーサックスだけを手に異国に降り立つことになった。「スーツケースだけじゃなく自信も失った状態だった。でも翌日のライヴのサウンドチェックで最初の一音を鳴らした時に、パイロットの詩の意味を理解したよ。その後の物語はこのアルバムに語られている。私のどんな言葉よりも「Resistance(反抗)、Provocation(挑発)、そしてSpontaneity(自発性)」を上手く表現している。」(『IF YOU HAVE TIME』ジョー・マクフィーのライナーノーツより)



このツアーから最初にリリースされたのが、2014年に3月18日イスタンブールのライヴハウス「バビロン」で収録されたライヴ盤『BABYLON』である。THE FIRST MEETING OF ISTANBULとサブタイトルされている通り、初コラボレーションの演奏を収めたアルバムで、エレクトロニクスの浮遊感の中、アブストラクトな管楽器の交歓が、徐々にベクトルを同じくして上昇して行く様子のドキュメントである。

Live At Babylon w/ Joe McPhee


2015年末にリリースされたのが3日後の3月21日同じくイスタンブールのハイヤーム・スタジオでのスタジオ録音作『IF YOU HAVE TIME』である。拡散する外向きのベクトルを持つライヴ盤に対して、スタジオ内で演奏者だけで展開された本作は、音楽の深層へと接近するインナートリップを描いた作品と言って善かろう。タイトルもペーター・ブロッツマン&ハーミッド・ドレイク(In The Lair Of The Dried Rat Dog)、ジョン・コルトレーン・カルテット(Tell Me, How Long Has ‘Trane Been Gone)、アルバート・アイラーと同年同日生まれのノルウェーのサックス奏者ベングト・”フリップ”・ノードストローム(Frippe's Dream)といったジャズネタでキメる。

HD Teaser | Konstrukt & Joe McPhee "If You Have Time" (LP)


マーシャル・アレン、ペーター・ブロッツマン、エヴァン・パーカー、ウィリアム・パーカー、坂田明といった前衛ジャズの先駆者と共演し、独特のコスモポリタニズムを発揮するオーガニックミュージックユニット「コンストラクト」にとって、ジャズの地下鉄道(Underground Railway)の騎手ジョー・マクフィーとの邂逅は、地下深く眠る有機音楽の種の発芽に大いなる滋養を齎したに違いない。

地下深く
眠れる夢に
陽を当てろ



KONSTRUKT公式サイト
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