ブロッツフェス2011の最終日。この日も圧倒的に男性客が多い。ゲストが坂田さんと佐藤さんというベテラン二人なので、初日よりも年齢層が高い気がする。私は整理番号3番でまたも最前列、今回はステージ下手、ピアノの見やすい好位置を確保。ピットインに関わらずあらゆるライヴハウスで最前列というのは特別な場所である。自分と演奏者の間に一切邪魔が入らず一体一対峙できる聖域。PAを通した音ではなくステージ上で鳴る音が直接耳に入ってくる。この快感、晴天の霹靂である。一度味わうと最前列以外は考えられない。モッシュの起こる若さピチピチのライヴは別だが。
最初はブロッツマン(ts)と佐藤さん(p)のデュオからスタート。どちらも70歳という年齢だがそれを感じさせないパワーと集中力に溢れる演奏。佐藤さんは1969年に名作「パラジウム」で鮮烈にジャズ・シーンに登場して以来、数々の作品をリリースしてきた日本フリー・ジャズ第1世代の代表格である。1980年代以降テレビ音楽や映画、コマーシャルの世界での活動が増え、マルチな才能のピアニスト/作曲家として幅広く活躍している。私は佐藤さんの生演奏を観るのは初めてだったが、洋輔さんの激情迸る演奏に比べ、緻密に旋律を積み重ねて行くプレイが印象的だった。
続いてブロッツマンのトリオ=フレッド・ロンバーグ・ホルム(cello)&ポール・ニルセン・ラヴ(ds)に坂田さん(as)を加えたカルテットでの演奏。ブロッツマンもアルトを吹く。坂田さんの艷やかなロングトーンで厳かに始まり、徐々に盛り上がりブロッツマンとの激しいブロウ合戦となる。リズム隊もフル・パワーで疾走し最狂の混沌状態に。特に激しく叩きまくるニルセン・ラヴのドラミングが凄かった。途中から坂田さんもブロッツマンもクラリネットに持ち替えより軽やかな即興演奏を展開。やはり日本でブロッツマンに対抗できるサックス奏者は坂田さんしかいないと実感。
休憩時間に「平家物語」に坂田さんのサインをもらう。「夜は怖くて一人では聴けないし、昼間スピーカーから流すと家族に怒られるんですよ」と言うと「ゴメンね。こんなの作っちゃって」と坂田さん。
最後は全員のセッション。ロンバーグ・ホルムは4弦ギターをプレイ。坂田さんのアルト、ブロッツマンのテナーの火を噴く対決。50分の長時間演奏だったが、緩急剛柔な展開で飽きさせることがない。佐藤さんのピアノが演奏に彩りを加える。
アンコールはブロッツマン、坂田さん、佐藤さんの合計年齢206歳のトリオ。フリー・ジャズの巨匠3人の演奏は馥郁たる重量感がある。素晴らしい演奏でブロッツフェス2011 3Daysは終了。
オーストリアで11月上旬に開催される「Music Unlimited」フェスティバルが今年はブロッツマン70歳を記念して「Brotzmann:Long Story Short」とタイトルされ、日本からも灰野さんや坂田さんをはじめ今回日本で共演したアーティストや近藤等則さんや豊住芳三郎さんなどが渡欧し共演を4日間に亘って繰り広げるとのこと。チケットはソールド・アウト。
ブロッツマン
世界が誇る
70歳
来年もきっと来日するんだろうな~きっと。