坂口氏は1980年代初頭ピナコテカレコード発行のフリーペーパー「アマルガム」や自販機雑誌「JAM」「HEAVEN」に"科伏(補)=シナプス"のペンネームで寄稿していた。大半はアメリカ西海岸に棲息するロサンゼルス・フリー・ミュージック・ソサエティ=LAFMSという組織に関する記事だった。竹田賢一の雑誌レビューに始まり色んな偶然が重なりアメリカでLAFMSのメンバーに直接会い様々な情報を入手、その後現在に至るまでの交流に関しては「音人」に詳しい。2010年にロンドンで3日間に亘り開催された"The LAFMS in London - The Lowest Form of Music"の詳細なレポートを含む同記事は本ブログの読者なら興味深いに違いない。現在大阪在住の坂口氏は近年LAFMS関連のイベントを自主企画したりノイズ・即興関連イベントや雑誌記事・CDライナーなどで精力的に活動しており、東京の園田佐登志氏と並ぶ日本地下音楽界の生き字引である。坂口氏ブログ「音薬談」はコチラ。
1996年に突如10CD(&11CD)アンソロジーBOX「LAFMS:the lowest form of music」がリリースされ20年間の活動の全貌が明らかになったが、複雑怪奇な匿名性と節操のない音楽性ゆえ謎はますます深まるばかり。2000年代に未CD化音源の発掘・再発やDoo-Dooettes+灰野敬二+Rock Pottsの「FREE ROCK」リリース、Solid Eye来日とLAFMSの話題は続いた。2011年リック・ポッツが来日しスーパーデラックスで工藤冬里とセッションした。予測不可能な冬里の演奏にハンドメイド楽器を駆使して対抗するリックは間違いなく真のエクスペリメンタリストだった。
台湾から新しい風が吹く。青山月見ル君想フにて「日台交流イベント~ROMANTIC TAIWAN~」が開催中。若手エレクトロニカユニット女孩與機器人(The Girl and the Robots)、台湾原住民メンバーによる国民的人気バンドTOTEM(圖騰樂團)、映画音楽で活躍する黄裕翔(ホアン・ユィシアン)の3組をメインに日本のミュージシャンも出演し台湾料理やお酒も楽しめる2週間である。
先日青山月見ル君想フで来日公演を観た女孩與機器人(The Girl and the Robots)。2009年にインディー・デビューし台湾には珍しいエレクトロニカ/ポストロック・サウンドが話題になる。2011年メジャー・デビュー。メンバーは「女孩」のRiin(Vo,Electro)、「機器人」のJungle(G,Electro)と蛋(Syn)というトリオ。ライヴではドラマーが加わり夢見るような浮遊感のあるメロディーを軽快なテクノビートで聴かせる。Riinのキュートなパフォーマンスと片言の日本語のMCが魅力的。最新作「平行宇宙」の初回ボーナスCDには日本人DJによるリミックスも収録。新世代ロック、特にエレクトロニカの世界には国境はない。
Girls Sazanami Beat! vol.5 Release Party! 3daysの二日目!
出演:That’s a NO NO!, The Yummys(岡山), 原子力牧場(静岡), ザ・ゲルピンズ(札幌), The Lubies, THE RICOTTES, ザ・ランチェリーズ,よなよなモリーズ
トリはThat’s a NO NO!。昨年リリースのデビューCD「YES or NO」は久々のガールズガレージ・マストピースだった。一昨年のサザナミイベントでは揃いの衣装だったがこの日は黒基調にバラけたスタイル。ドラムはザ・シャロウズの新道。前回はサザナミイベントの後にシャロウズのオールナイト・ライヴがあったが、今回は翌日がシャロウズ・ワンマンライヴ。忙しいことこの上ないがそれも理解出来る素晴らしいドラマーだ。長身のヴォーカルのヨシケイと小柄なギターのトモカとの凸凹具合が面白い。流石トリだけあって迫力・演奏力ともに抜群。「YES or NO」を聴いていない方はご一聴をお薦めする。
そこへラスト・ナンバー「You Made Me Realise」投下。「ノイズ・ピット」「ホロコースト」と呼ばれる長時間のノイズ演奏に 突入することで知られる曲だ。数コーラス楽曲を演奏したところでノンビートになりノイズ放射スタート。さっきまでのダレた気分が一気に引き締まる。こりゃ尋常な音じゃない。ラリーズや灰野敬二、メルツバウ、非常階段など轟音ライヴは何度も経験しているので甘く見ていた。大スピーカーから放出される爆音は重量級の厚みで物理的に全身を襲う。震動が足元と耳から脳髄に伝わり頭蓋が共振する音響地獄。耳栓はこのためだと納得。この20分の為だけに8000円払ったといってもいい程の満足感を得ると共に、このメガトン級ノイズに2400人の観客が耐えた事実に感心する。久しぶりにライヴで耳鳴りが残った。アンコールは必要ない。バンドとしての力量はどうあれ20分間本気の演奏をしたことに拍手を送りたい。同時にこのノイズを嬉々として甘受するリスナーがこれほど多く存在することにノイズの未来の可能性を感じる。
<Set List>
1 I Only Said (Loveless)
2 When You Sleep (Loveless)
3 New You (mbv)
4 You Never Should (Isn't Anything)
5 Honey Power (EP)
6 Cigarette In Your Bed (EP)
7 Come In Alone (Loveless)
8 Only Shallow (Loveless)
9 Thorn (EP)
10 Nothing Much To Loose (Isn't Anything)
11 To Here Knows When (Loveless)
12 Slow (EP)
13 Soon (EP)
14 Feed Me When You Kiss (EP)
15 You Made Me Realise (EP)
クロマニヨンズ&ベンジーの記事で年齢に関する曲を掲載した時、他にも年齢や数字をタイトルにした楽曲がいくつか頭に浮かんだ。真っ先に浮かんだのはザ・コレクターズのインディ・ミニ・アルバム「WELCOME TO THE FLOWER FIELDS AND THE MUSHROOM KINGDOM(ようこそお花畑とマッシュルーム王国へ)」に収録の「1.2.3.4.5.6.7 DAY'S A WEEK」。