グローバルネイチャークラブのガイド日記

グローバルネイチャークラブ(旧グローバルスポーツクラブ)のガイド仲間が観察した伊豆大島の自然の情報を中心にお届けします。

この先の物語は?

2021年02月02日 | 植物
昨日、久しぶりに34年前の噴火で元町近くまで流れてきた溶岩流を訪ねました。

7年前の大雨で崩れた土砂(火山灰)が流れ込む前は、この位置からも黒い溶岩がよく見えていました。今は、オオバヤシャブシなどの木々に、すっかり覆われています。

でも木々をかき分けて進むと、溶岩が見えるのです。

あれ?
何か変です!

ここを訪ねるようになって10年以上、いつもツヤツヤの緑の葉を繁らせていたテイカカズラが、ほとんどの葉を無くしていたのです!

初めて見る光景に、ものすご〜く驚きました!

ちなみに2014年11月24日の写真がこちら。

溶岩の上の赤はツタの紅葉、その奥の緑がテイカカズラです。(この後も時々行っていたのですが写真を探せませんでした💦)

なぜ葉が、無くなってしまったのでしょうか?
不思議でしょうがなかったので、今日もう一度調べに行ってきました。

今日の写真です。

葉がなくなった原因を、考えてみました。

最初、私の頭に浮かんできた考えは3つ。
1・誰かが除草剤を撒いた?(そんなバカな!)
2・ウイルスに感染した?(まさか!)
3・気象か何かの条件の変化で、落葉樹に変身した?(何じゃそりゃ?)

近くでは、小さなスイカズラの葉が結構生えていたので…

除草剤説は却下!(それに、こんな人の来ない場所に除草剤をまく必要なんてないし💦)

近くの木に這い上っているテイカカズラは、緑の葉を元気に生やしているので…

ウィルス説も却下!

岩と岩の隙間など少し凹んだところでは、テイカカズラの葉が残っていたので…

落葉樹への変身説も却下!(笑)

わずかに残ったテイカカズラの葉は、全て少し窪んだところか、ツルの隙間に見つかりました。


緑色のものだけではなく、紅葉したものも残っていました。


そしてテイカカズラの落ち葉は、ほとんど見つかりませんでした。

岩の隙間に落ちているのは、ほとんどが別の植物の葉でした。

ということは、もしや…
キョン(小型の鹿)が全部食べてしまったとか??

よく見ると食べ残しが、あちらこちらに…


でも多くは、丸々食べられていました。


調べている間も、キョンが大声で叫ぶ声が聞こえてきました。

う〜む😅

ちょうど写真を撮り終わった時に、屋久島野外活動総合センターの小原さんから別件で連絡もらい、このことを報告。

小原さんは「テイカカズラはキョウチクトウの仲間だから、かなり毒性が強いはずですよね。でも食圧を受けてない個体群だと毒性は弱くなってるかも」と興味深い意見を聞かせてくれました。

そして島嶼生態系研究会の「伊豆諸島、新島及び神津島における食物連鎖構造の解明と移入動物の影響」という研究の中に、「新島の鹿がテイカカズラを食べていた」という文章が綴られているのを教えてくれました。(なんと研究者は伊豆大島ジオパークと関わりの深い長谷川雅美先生でした!)

数が増え、空腹を満たすため、ついに有毒植物も食べるようになった(と思われる)キョン。
そして、溶岩の上に這うことで30年以上も光を独占していたのに、そのことがあだとなり、葉をほとんど食べられてしまったテイカカズラ。

ここの景色は、この先どんな物語で、塗り替えられていくのでしょうか?

ありのままを、見続けたいと思います。

(かな)
コメント
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