沖縄における米軍属による殺人事件。どうしたらこうした凶悪な事件をなくすことができるか。それは米軍基地の撤去しかあり得ない。
さて今日の『朝日新聞』社説。
同紙の社説は、読んでいてそこに心の動きが感じられない。危険と隣り合わせに生きている沖縄の人々への共感がない。同紙のこうした傾向は、もうずっと前からだ。そして必ず留保を記す。この事件に関して留保をあえて書く必要はない。留保のところに下線を入れた。
元米兵逮捕 基地を減らすしかない
2016年5月21日(土)付
沖縄県民は幾度、おぞましい事件に直面しなければならないのか。
うるま市の女性(20)が遺体で見つかり、米国籍で元米兵の男(32)が死体遺棄容疑で県警に逮捕された。男は女性殺害をほのめかしているという。
元米兵は米軍嘉手納基地で働く軍属である。現役の兵士ではないが、米軍基地が存在しなければ起きなかった事件だと言わざるを得ない。
太平洋戦争末期に米軍が沖縄に上陸して以降、米軍統治下の27年間も、72年の日本復帰後も、沖縄では米軍人・軍属による事件が繰り返されてきた。
県警によると、復帰から昨年までの在沖米軍人・軍属とその家族らによる殺人や強姦(ごうかん)などの凶悪事件は574件にのぼる。
事件のたびに県は綱紀粛正や再発防止、教育の徹底を米軍に申し入れてきた。だが、いっこうに事件はなくならない。
全国の米軍専用施設の75%近くが集中する沖縄で、米軍関係者による相次ぐ事件は深刻な基地被害であり、人権問題にほかならない。これ以上、悲惨な事件を繰り返してはならない。そのためには、沖縄の基地の整理・縮小を急ぐしかない。
95年に起きた米海兵隊員らによる少女暴行事件を受けて、全県で基地への怒りが大きなうねりとなった。その翌年、日米両政府は米軍普天間飛行場の返還で合意したはずだった。
だが20年たっても返還は実現せず、日本政府は名護市辺野古沿岸に移設する県内たらい回しの方針を変えようとしない。
日本の安全に米軍による抑止力は必要だ。だがそのために、平時の沖縄県民の安全・安心が脅かされていいはずがない。
たび重なる米軍関係者による事件は、そうした問いを日本国民全体に、そして日米両政府に突きつけている。
日本政府が米政府に再発防止を強く求めているのは当然だ。来週、主要国首脳会議(伊勢志摩サミット)のために来日するオバマ大統領にも、安倍首相から厳しく申し入れてほしい。
だがそれを、一連の外交行事が終わるまでの一時しのぎに終わらせてはならない。
長く県民が求めてきた辺野古移設の見直しや、在日米軍にさまざまな特権を与えている日米地位協定の改定も、放置されてきたに等しい。
地元の理解のない安全保障は成り立たない。こうした県民の不信と不安を日本全体の問題として受け止め、幅広く、粘り強く米側に伝え、改善の努力を始めなければならない。
昨日『琉球新報』の社説は紹介した。ここでは『中日新聞』を紹介する。『中日』のほうが、よっぽど熱がこもっている。『朝日』は、書く必要があるだろうから書いている、という筆致だ。以前から指摘しているが、『朝日』の社説は内容はもとより、文それ自体も下手になっている。とくに長文の社説が書けないようだ。一つ一つの文が独立して、前後の文との脈絡を切り離してもいいような、文とも言えない文だ。昔は「天声人語」を読んで思わず、「うまい!!」と思ったものだ。今『朝日』にそれはない。
元海兵隊員逮捕 沖縄を安心安全の島に
2016年5月21日
米軍基地があるために犯罪が繰り返される。沖縄県で女性が行方不明になっていた事件で、元米兵が死体遺棄容疑で逮捕された。県民を守るために、日本政府は米国との交渉に全力を尽くすべきだ。
「またか!」と県民には痛恨の極みだろう。四月から行方不明になっていたうるま市の会社員女性(20)の遺体が恩納村の山林で発見された。沖縄県警は米軍嘉手納基地で働く元海兵隊員のシンザト・ケネス・フランクリン容疑者(32)を逮捕。「女性を捨てた」と容疑を認め、殺害をほのめかす供述をしているという。
被害者の女性はシンザト容疑者と面識がない。犯罪に巻き込まれたのは、普段の暮らしのすぐ隣に基地があったがためである。
在日米軍専用施設の74%が集中する沖縄は「基地の中に沖縄がある」と例えられる。米軍関係者による犯罪は、第二次大戦末期の沖縄戦当時から繰り返されてきた。
全国の警察が二〇〇六年から十年間に摘発した殺人や強盗などの凶悪犯は六十二件九十一人。沖縄では毎年のように発生している。
事件のたびに日米政府は遺憾の意を示すが、現実には再発防止になっていない。沖縄の人々が求めるのは、米軍基地の廃止である。それがすぐにかなわないなら米軍に特権を与え、県民を憲法のらち外に置く日米地位協定を対等なものに改めることである。
シンザト容疑者は、今は軍人ではないが、日米地位協定で定められる「軍属」に当たる。今回は「公務外」であるため、日本の刑事手続きに従って罪が問われることになるが、米兵、米軍属による犯罪がやまない背景には、改善運用はされるものの、不平等を解消する抜本的見直しがされてこなかった協定があることは論をまたない。
辺野古新基地に反対する沖縄県民の声を直接伝えようと、翁長雄志知事が訪米している最中に急展開した事件である。無残な犯行で若い命が奪われたことに、沖縄の怒りはまた燃え上がる。大規模な基地反対運動のきっかけとなった、一九九五年の少女暴行事件を思い起こさせる。
事件が米軍普天間飛行場(宜野湾市)の移設に伴う、名護市辺野古の新基地建設に影響を与えるのは必至だ。来日するオバマ米大統領は沖縄の米軍基地がいかに理不尽な形で置かれているのか、県民の痛みの声を正面から受け止めてほしい。広島の思いだけでなく、沖縄の思いを毅然(きぜん)として伝えることも、政府の責務である。
さて今日の『朝日新聞』社説。
同紙の社説は、読んでいてそこに心の動きが感じられない。危険と隣り合わせに生きている沖縄の人々への共感がない。同紙のこうした傾向は、もうずっと前からだ。そして必ず留保を記す。この事件に関して留保をあえて書く必要はない。留保のところに下線を入れた。
元米兵逮捕 基地を減らすしかない
2016年5月21日(土)付
沖縄県民は幾度、おぞましい事件に直面しなければならないのか。
うるま市の女性(20)が遺体で見つかり、米国籍で元米兵の男(32)が死体遺棄容疑で県警に逮捕された。男は女性殺害をほのめかしているという。
元米兵は米軍嘉手納基地で働く軍属である。現役の兵士ではないが、米軍基地が存在しなければ起きなかった事件だと言わざるを得ない。
太平洋戦争末期に米軍が沖縄に上陸して以降、米軍統治下の27年間も、72年の日本復帰後も、沖縄では米軍人・軍属による事件が繰り返されてきた。
県警によると、復帰から昨年までの在沖米軍人・軍属とその家族らによる殺人や強姦(ごうかん)などの凶悪事件は574件にのぼる。
事件のたびに県は綱紀粛正や再発防止、教育の徹底を米軍に申し入れてきた。だが、いっこうに事件はなくならない。
全国の米軍専用施設の75%近くが集中する沖縄で、米軍関係者による相次ぐ事件は深刻な基地被害であり、人権問題にほかならない。これ以上、悲惨な事件を繰り返してはならない。そのためには、沖縄の基地の整理・縮小を急ぐしかない。
95年に起きた米海兵隊員らによる少女暴行事件を受けて、全県で基地への怒りが大きなうねりとなった。その翌年、日米両政府は米軍普天間飛行場の返還で合意したはずだった。
だが20年たっても返還は実現せず、日本政府は名護市辺野古沿岸に移設する県内たらい回しの方針を変えようとしない。
日本の安全に米軍による抑止力は必要だ。だがそのために、平時の沖縄県民の安全・安心が脅かされていいはずがない。
たび重なる米軍関係者による事件は、そうした問いを日本国民全体に、そして日米両政府に突きつけている。
日本政府が米政府に再発防止を強く求めているのは当然だ。来週、主要国首脳会議(伊勢志摩サミット)のために来日するオバマ大統領にも、安倍首相から厳しく申し入れてほしい。
だがそれを、一連の外交行事が終わるまでの一時しのぎに終わらせてはならない。
長く県民が求めてきた辺野古移設の見直しや、在日米軍にさまざまな特権を与えている日米地位協定の改定も、放置されてきたに等しい。
地元の理解のない安全保障は成り立たない。こうした県民の不信と不安を日本全体の問題として受け止め、幅広く、粘り強く米側に伝え、改善の努力を始めなければならない。
昨日『琉球新報』の社説は紹介した。ここでは『中日新聞』を紹介する。『中日』のほうが、よっぽど熱がこもっている。『朝日』は、書く必要があるだろうから書いている、という筆致だ。以前から指摘しているが、『朝日』の社説は内容はもとより、文それ自体も下手になっている。とくに長文の社説が書けないようだ。一つ一つの文が独立して、前後の文との脈絡を切り離してもいいような、文とも言えない文だ。昔は「天声人語」を読んで思わず、「うまい!!」と思ったものだ。今『朝日』にそれはない。
元海兵隊員逮捕 沖縄を安心安全の島に
2016年5月21日
米軍基地があるために犯罪が繰り返される。沖縄県で女性が行方不明になっていた事件で、元米兵が死体遺棄容疑で逮捕された。県民を守るために、日本政府は米国との交渉に全力を尽くすべきだ。
「またか!」と県民には痛恨の極みだろう。四月から行方不明になっていたうるま市の会社員女性(20)の遺体が恩納村の山林で発見された。沖縄県警は米軍嘉手納基地で働く元海兵隊員のシンザト・ケネス・フランクリン容疑者(32)を逮捕。「女性を捨てた」と容疑を認め、殺害をほのめかす供述をしているという。
被害者の女性はシンザト容疑者と面識がない。犯罪に巻き込まれたのは、普段の暮らしのすぐ隣に基地があったがためである。
在日米軍専用施設の74%が集中する沖縄は「基地の中に沖縄がある」と例えられる。米軍関係者による犯罪は、第二次大戦末期の沖縄戦当時から繰り返されてきた。
全国の警察が二〇〇六年から十年間に摘発した殺人や強盗などの凶悪犯は六十二件九十一人。沖縄では毎年のように発生している。
事件のたびに日米政府は遺憾の意を示すが、現実には再発防止になっていない。沖縄の人々が求めるのは、米軍基地の廃止である。それがすぐにかなわないなら米軍に特権を与え、県民を憲法のらち外に置く日米地位協定を対等なものに改めることである。
シンザト容疑者は、今は軍人ではないが、日米地位協定で定められる「軍属」に当たる。今回は「公務外」であるため、日本の刑事手続きに従って罪が問われることになるが、米兵、米軍属による犯罪がやまない背景には、改善運用はされるものの、不平等を解消する抜本的見直しがされてこなかった協定があることは論をまたない。
辺野古新基地に反対する沖縄県民の声を直接伝えようと、翁長雄志知事が訪米している最中に急展開した事件である。無残な犯行で若い命が奪われたことに、沖縄の怒りはまた燃え上がる。大規模な基地反対運動のきっかけとなった、一九九五年の少女暴行事件を思い起こさせる。
事件が米軍普天間飛行場(宜野湾市)の移設に伴う、名護市辺野古の新基地建設に影響を与えるのは必至だ。来日するオバマ米大統領は沖縄の米軍基地がいかに理不尽な形で置かれているのか、県民の痛みの声を正面から受け止めてほしい。広島の思いだけでなく、沖縄の思いを毅然(きぜん)として伝えることも、政府の責務である。