浜名史学

歴史や現実を鋭く見抜く眼力を養うためのブログ。読書をすすめ、時にまったくローカルな話題も入る摩訶不思議なブログ。

「かの一人の人」

2016-12-29 21:29:10 | その他
 『サンデー毎日』10月から11月にかけて3回にわたって、「岸信介宛て石橋湛山の私信を発見!」が掲載された。書いたのは倉重篤郎・毎日新聞編集委員である。

 1960年安保の渦の中で、時の首相岸信介に対して、前首相石橋湛山が送った私信が発見されたのである。石橋は、岸に対して「安保条約締結を延期すべし」という私信を送ったのだが、その私信に「かの一人の人」について書かれているのだ。

 石橋湛山が内閣を組織したとき、閣員名簿を「かの一人の人」に見せたところ、その人から「深刻な表情をして」尋ねられた内容が私信に認められていた。
  

 自分はこの名簿に対して只一つ尋ねたいことがある、それはどうして岸を外務大臣にしたかということである。彼は先般の戦争に於て責任がある。その重大さは東條以上であると自分は思う

 とにかく彼は東條以上の戦争責任者であると繰返して述べられた。


 もちろん「かの一人の人」とは、昭和天皇である。連載の中で、その私信を発見した石橋湛山の研究者・増田弘と、岸の研究者・原彬久、そして倉重の座談会の記録がある。三人とも、「かの一人の人」が昭和天皇であると認定している。私もそう思う。

 また保阪正康は、昭和天皇が嫌いなタイプとして三つをあげる、一つは「二枚舌」、二つ目は「自分の職分、職能を超えてものを言ってくる人」、三つ目に「天皇を心から尊敬するのではなく、天皇を制度として自分の権力のために使うタイプ」であり、岸はその三番目のケースではなかったか、と指摘している。

 その孫である安倍も、三番目のケースであることが、天皇の退位問題で明らかになっている。

 『サンデー毎日』の連載は、岸とつながる安倍の本質を浮き彫りにする役割を果たしているようだ。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

メディアは安倍一色

2016-12-29 09:59:14 | その他
 『情報参謀』を読んでから、安倍政権の意図的な振る舞いを注視するようになったが、とにかくメディアに出続けること、注目を集めること、世界からも注目されること、こういう作戦をとっていることがわかる。

 最近「・・・・の力」などという本がいろいろ出版されているが、安倍も「和解の力」だって。「和解」するなら、中国や韓国、北朝鮮が先だろうと思う。すでにアメリカとは「日米同盟」という主従関係に入っているのだから、日米主従関係をことさら「強固」にする必要はないだろうと思う。おそらくトランプを意識しているのだろうが、メディアも安倍政権と主従関係に入っているようだ。

 さて、今日の『中日新聞』コラムを掲げておこう。


フォークランド紛争の勝利に英国が沸いていた一九八二年の夏、カンタベリー大主教のロバート・ランシー氏が戦争終結への感謝の礼拝で語った言葉は、サッチャー首相を激怒させたと伝えられる

▼勝利を祝し、愛国心の尊さをうたい上げる。首相らは、そういう言葉を期待していた。だが、第二次大戦を将校として戦い、戦争の現実を目に焼き付けた大主教は、国民に「殺されたアルゼンチンの若い兵士のために祈ろう」と語り掛けた

▼「悲しみをともにすることが、戦い合った者を再び結び付ける力となるはずです。苦悩を分かち合うことが、和解への橋を架けてくれることでしょう」。それは「和解」のための祈りの言葉だった

▼日米開戦から七十五年。米大統領と真珠湾を訪れた安倍首相は「耳を澄まして心を研ぎ澄ますと、風と波の音とともに兵士たちの声が聞こえてきます」と語り、開戦の場となった美しい入り江を「和解の象徴」としようと語った

▼そんな言葉を、沖縄の人々はどう受け止めたろうか。辺野古の美しい入り江を埋め立てて新基地とする工事がおととい、再開された。耳を澄まして沖縄の声を聞こうとせぬ政府の姿勢に、翁長雄志知事は「沖縄県民を日本国民として見ていない」とまで言っている

▼あの戦争から今なお続く沖縄の苦悩を分かち合う。首相には、自ら架けるべき「和解への橋」がある。


コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする