浜名史学

歴史や現実を鋭く見抜く眼力を養うためのブログ。読書をすすめ、時にまったくローカルな話題も入る摩訶不思議なブログ。

政治的想像力

2017-05-20 06:50:22 | その他
 政治学者や政治家は、その職業柄、政治的想像力を強く保持していると推測される。

 庶民は、しかしながら、政治的想像力をもつことが日常生活ではあまり必要ない。せいぜい、近くの用水路に雑草が繁茂しているから、除去して欲しいと用水路を管理している当局に要請するくらいだろう。あるいは、ほんとうは政治と直結しているのに、年金だけでは生活できない、物価が上昇している・・・などの日常生活での不満や要求は、つぶやきで泡のように浮かんでは消え、消えては浮かんでくる。

 今度の「共謀罪」も、日常生活のなかでは、問題にはならない。なぜか。ほとんどの庶民は、政治に不安を抱いたり、疑問を持ったりしても、それはまさにつぶやきで終わっているからだ。

 そんな庶民でも、立ち上がることがある。たとえば、先日の『中日新聞』記事にあったように、住宅地に高層マンション建設計画がもちあがる、周辺住民は住環境が大きく壊変されるということから反対運動に立ち上がる。その運動を抑圧するものとして、「共謀罪」が立ちふさがる。組織的業務妨害罪に共謀罪がつかわれる。ただしこの記事の場合は、「暴行」の疑いであるが、「共謀罪」が施行されれば、組織的業務妨害の「共謀罪」で逮捕されるだろう。

憲法施行70年 理念はいま、 (1) 「共謀罪」法案 「突然逮捕」 すくむ市民
  2017.05.03 

 「現行犯で逮捕する」

 薬剤師の奥田恭正さん(60)は手錠を掛けられ、パトカーに乗せられた。昨年十月七日朝、名古屋市瑞穂区の自宅前でのことだ。

 逮捕容疑は暴行。自宅南隣のマンション建設現場の前で、現場監督の男性を突き飛ばしたとされた。

 一帯は一戸建てが中心の住宅街だが、二〇一五年秋に十五階建てマンションの計画が明らかに。住民は「住環境を守る会」を発足させ、約二十人が建設の中止や見直しを求めていた。その代表が奥田さんだった。

 高さ三メートルほどの塀に囲まれた現場の外側から、他の住民らと中の様子をうかがっていた。奥田さんによると、現場監督が行く手をふさぐように立ったため、かわそうとしたという。

 奥田さんは一貫して容疑を否認したが、捜査員は取り合わなかった。「防犯カメラに写っとる」。起訴され、今も「被告人」として公判中だ。

 起訴状では、男性を両手で突き飛ばし、ダンプカーに接触させたとされる。しかし奥田さんの弁護人の中谷雄二弁護士によると、防犯カメラに残っていたのは、両腕を組んだままの奥田さん。中谷弁護士は「暴行はなかった」と確信する。



 庶民が政治を正面から見据えるときは、まさに切迫した事態がみずからの生活を根底からひっくり返されるかもしれないという時である。そういうときが来たときに初めて、庶民は政治的人間になる。

 庶民に、「共謀罪」が施行されるとどうなるかを語っても、それに対して怒りや不安を持つことはない。現行の日常生活と切り結ぶことではないからだ。

 あまり完全ではない健康状態ではないが、先日、毎月行っている講座で、前月に引き続き「共謀罪」をとりあげた。そこに参加している人が、ぽつりと「今の生活とすぐに結びつくわけではないから」と語った。

 庶民が政治的想像力を持つ時代が来るのが、もっともよい時代であるが、今はそういう時代ではない。

 しかし、冒頭に記したように、政治学者や政治家は、政治的想像力をもつべき人々である。

 現在の与党の圧倒的多数の議席は、小選挙区制がもたらしたものだ。日本国民は、議席数ほどに、自民党や公明党、維新を支持しているわけではない。得票率をみれば明らかである。小選挙区制は、きわめて問題がある制度であり、最近はその功罪の罪の部分が強調されるようになってはきている。

 だが、小選挙区制が提案されたときに、現在「共謀罪」に批判している学者や政治家はどれほどの政治的想像力をもっていたのか。政治学者の山口二郎は、小選挙区制の導入時に旗をふっていたのではないか。日本社会党(社会民主党)は、それに賛成したではないか。

 私如きの市井の者が、小選挙区制の危険性を認識していたのに。

 あのときの政治家や政治学者の行動は、現在も批判されるべきである。みずからの過ちを自己批判すべきではないか。

 「今更そんなことをしても・・・」という声が聞こえるが、私はそうは考えない。歴史的に大きな選択をすべきときに誤った選択をした場合は、時間が経過しても自己批判はすべきである。

 
 健康状態があまりよくない。町田の住人から、まだ治らないのかと電話がある。喉の異常は続いている。活字をみつめる意欲がすごく減退している。しかし、頑張らなければならない。


 
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