浜名史学

歴史や現実を鋭く見抜く眼力を養うためのブログ。読書をすすめ、時にまったくローカルな話題も入る摩訶不思議なブログ。

「共謀罪」の危険を指摘

2017-05-28 21:30:07 | その他
 宮崎日々新聞の社説も鋭い。


「共謀罪」書簡

2017年5月27日

◆説得力のある反論できるか◆

 共謀罪の構成要件を取り込み「テロ等準備罪」を新設する組織犯罪処罰法改正案を巡り、衆院通過を前に国連特別報告者が政府に書簡を送り「深刻な欠陥のある法案をこれだけ拙速に押し通すことは絶対に正当化できない」と強く批判した。政府は「内容は明らかに不適切」と抗議。「国連の立場を反映するものではない」とする。

 一般人が適用対象になる恐れがあり「監視社会」を招くと訴える野党の反対を数の力で抑え込み、今国会中の成立を目指すが、思わぬところからの批判に政府はいらだちを隠せない。

「表現の自由」制約も

 特別報告者は国連人権理事会に任命され、個人の資格で表現の自由やテロリズム、貧困、女性差別など、さまざまなテーマに関わる各地の人権状況の調査を行う。菅義偉官房長官は「個人の調査」であることを強調するが、書簡で報告者が懸念する「プライバシーや表現の自由の制約」は、政府がこれまで多くを語っていない点だ。

 政府は速やかに反論を取りまとめて送り、公表すべきだ。共同通信世論調査では77・2%もの人が「政府の説明が十分だと思わない」と回答している。それも踏まえ、反論は詳細かつ丁寧なものでなければならない。

 書簡を送ったのはケナタッチ国連特別報告者。政府が外務省を通じて抗議すると、今度は「法案の欠陥に一つも向き合っていない」「法案やその他の法律のどこに、プライバシー権の保護と救済が含まれているか示してほしい」とする22日付の書簡が送られてきた。

 犯罪が実行され被害が生じる前の計画段階で罰するには、プライバシーに踏み込み「内心」を探ることが必要になる。適用対象の「組織的犯罪集団」の誰かが自首したり、周辺関係者が通報したりすることもあるかもしれないが、多くの場合は監視により捜査の端緒をつかむことになろう。

傍受対象の拡大懸念

 LINE(ライン)やメールもチェックされ、人権侵害につながると追及されると、金田勝年法相は「通信傍受法の対象犯罪ではなく、対象に追加する法改正も予定していない」とし「リアルタイムで監視できない」と答弁。さらに一般人が捜査対象になるとの指摘には「犯罪集団と関わらない一般人は捜査対象とならない」と説明した。

 傍受対象の拡大について、法相は「検討すべき課題」としていた当初の答弁を修正したが、警察内には期待する声が根強い。また一般人を巡って政府は、正当な活動をしている団体でも目的が一変して犯罪集団とみなされた場合、メンバーはもはや一般人ではないと説明。市民団体や労働組合も対象になるとの懸念は拭いきれないままだ。

 政府の反論が国会でこれまで繰り返してきた説明の焼き直しにすぎないなら、ケナタッチ国連特別報告者は納得せず再び書簡を送ってくるだろう。
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『信濃毎日新聞』の批判精神

2017-05-28 21:26:17 | その他
 同紙の批判精神は、健全だ。この社説も鋭い。



あすへのとびら 秘密法の運用実態 国民主権を害している

 日本がかつての過ちを繰り返すのではないか、国民に何も知らされないまま間違った道へ踏み込むことにならないか―。

 読み進むとそんな思いにとらわれる。特定秘密保護法の運用をチェックするために、国会に設置されている情報監視審査会の年次報告である。

 衆院審査会の2016年分が先日公表された。例えばこんなことが書いてある。

 〈「あらかじめ指定」が拡大しすぎていることを踏まえ、適切な規定を定める〉

   <チェックは働かず>

 審査会が443件の特定秘密の内容説明を求めたところ166件に該当する文書がなかった。秘密指定されているのに中身がない。なぜそんなことになるのか。

 秘密情報が発生することを想定して、政府があらかじめ指定したのが理由の一つだ。実際には発生せず“カラ指定”になった。

 中身の吟味なしの指定だった。恣意(しい)的運用の最たるものだ。審査会に参考人で呼ばれた早稲田大学の春名幹男さんも「どう考えても不合理。すぐには理解できなかった」とあきれていた。

 作成後30年以上過ぎた文書が指定されていたケースもあった。

 特定秘密の指定期間は原則として最長30年とされている。超えるときは理由を示して内閣の承認を得る必要がある。

 その文書はスパイ活動に関するものだった。警察の情報収集能力が読み取れるため秘密指定した、との説明だったという。

 〈30年以上過ぎても指定解除しない前例になってしまわないか〉

 報告書に記載されている委員の発言である。

 人の「知識」の指定もあった。文書を廃棄したあと、その情報を覚えている担当職員の、いわば頭の中を指定した。

 この場合、秘密管理の対象は文書ではなく人間になる。秘密に触れた担当者を、仕事から外れた後まで罰則付きで管理する。

 秘密法は健全な社会と共存できるのか―。疑問は尽きない。

 報告書には政府が勝手な判断で指定していることを批判する委員の発言がしばしば登場する。

 〈一般に認知されており、公知であるにもかかわらず、当該情報を指定し続ける理由は何か〉

 新聞に載った情報が指定されていることについての質問だ。

 審査会が中でも問題視したのが安保政策の司令塔、国家安全保障会議(NSC)に関わる特定秘密だ。審査会は一切の情報の提供を政府から拒まれた。

 〈提供するのは困難と、何も聞いていないうちから結論を出されるのは心外〉〈初めから出さないと言うのは僭越(せんえつ)ではないか〉

 厳しい言葉が並んでいる。

 政府はNSCに関しては情報開示するつもりは全くないようだ。これでは国会が安保政策をチェックするのは不可能だ。

 安倍晋三内閣は集団的自衛権の行使容認に踏み切り、安保関連法で自衛隊の活動範囲を広げた。日本が攻撃されなくても、日本と密接に関わる国が攻撃されたときは自衛隊を動かすことができるようになった。

 出動を命ずるかどうかはNSCでの議論を経て首相が決める。どう議論されたかが、国民の代表である国会にも説明されない。これは民主主義と言えない。

 秘密法の運用チェック機関としては国会の審査会のほか、政府内に独立公文書管理監など二つが置かれている。首相の言う「重層的なチェック」である。

 二つの組織は官僚がメンバーでいわば身内である。実効性への疑問がかねて指摘されていた。

 報告書は特に公文書管理監について、職責を果たしていないという意味のことを述べている。秘密文書を直接確認する権限を適切に行使していない、と。

 チェック機関でどうにか機能しているのは今のところ国会の審査会だけだ。しかし心もとない。

 審査会は外部との連絡を遮断するため、電波が通らない部屋で開催される。メモを取ることは許されない。委員が情報を漏らすと処罰の対象となる。活動は秘密法でがんじがらめにされている。

   <廃止を目指そう>

 事務局を拡充し情報の専門家を加えて、与野党8人の委員のサポートを強化する必要がある。「安全保障に著しい支障を及ぼすおそれ」を理由に政府が情報提供を拒める規定は廃止すべきだ。

 秘密法は米国の制度を参考にした。政府はそのうち秘密保持だけを取り入れて、情報開示の仕組みは採用しなかった。

 秘密法は国民の知る権利や国会の国政調査権を定めた憲法に反している。運用チェックの仕組みを整えつつ、廃止する努力をこれからも続けよう。

(5月28日)

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この問題も注視すべき

2017-05-28 21:22:32 | その他
 『琉球新報』のコラム。


<金口木舌>「ヤクザと憲法」に見る共謀罪

2017年5月28日 06:00


 銀行口座を解約される。宅配便や出前の配達を拒否される。幼稚園の登園を断られる-。これらは反社会的勢力と言われるヤクザとその家族が置かれた状況である


▼東海テレビが半年間、ヤクザに密着したドキュメンタリー映画「ヤクザと憲法」の一場面だ。組の幹部が全国から集めた暴力団排除条例(暴排条例)の“実害”を説明する。「ヤクザとその家族は人権侵害を受けている」
▼次のシーンで法の下の平等をうたう憲法14条が映し出される。見方によっては憲法違反ともとれる暴排条例。ヤクザに人権はあるのか。家族には?
▼暴排条例を人ごとと思っていたが、別の法律がブーメランのように自分の身に降りかかろうとしている。衆院で可決された「共謀罪」の趣旨を含んだ「組織犯罪処罰法改正案」である
▼犯罪の実行前に逮捕可能な共謀罪。どんな思想を持ち行動しているのか、監視が強まる懸念がある。憲法が保障する思想・良心、表現の自由を侵害しかねない。監視対象とするか否かは当局次第。暴排条例同様、自分には関係ないと言いきれるのか
▼監督は、暴排条例が暴力団の存続危機となるほど効果を上げたのは「アウトかセーフの不明確な『線引き』だ。あいまいな規則の方が効果的だと条例は教えてくれる」と著書で指摘する。金田勝年法相のあいまいな答弁の理由の一つが鮮明になった。
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静岡県民が指摘すべきこと

2017-05-28 21:18:43 | その他
 『信濃毎日新聞』のコラム、これは静岡県側で記すべきことだと気づいた。私も、この「水かえせ運動」について書いたことがあるので、この問題を正視したいと思う。

 
斜面

大井川は南アルプス間(あい)ノ岳に源を発し、静岡県内を約160キロ下って駿河湾に注ぐ。「大きな流れ」が名前の由来とされ、江戸時代に「越すに越されぬ」とうたわれるほど豊富な水量を誇った。戦後は水枯れという苦難の歴史をたどる

   ◆

逼迫(ひっぱく)する電力需要に対応するため、水系には1950年代、発電用ダムが集中的に建設された。山中を通る導水管に水を奪われ、61年に新たなダムが完成したとき、その下流域は流れを失った。風が吹くと砂が舞い上がり、人々は「河原砂漠」と呼んだ

   ◆

粘り強い住民運動の結果、88年にダムからの放水が実現した。当時、現地を取材したことがある。4ダム合わせ毎秒5・8トンの放水。それは悲しいぐらい細い、水の道を作っただけだった。魚を探す麦わら帽子の子どもらに橋から尋ねると、「何もいない」との答えが返ってきた

   ◆

その後の運動や河川法の改正でさらに多くの水量が戻りはした。だが、今再び水枯れの心配が生まれている。南アを貫くリニア中央新幹線のトンネル工事だ。大井川に流入するはずの地下水がトンネルに漏れ出す。失われる川の流量は最大で毎秒2トン―

   ◆

工事をするJR東海はそう推計し、トンネルからの導水路を造ることで約7割の水を川に戻すなどの対策を示している。全量を常に戻すよう求める静岡県とはいまだ折り合っていない。「今でも水不足なのに」。住民からこんな声も上がる。あの時の子どもたちの嘆きが重なって聞こえる。
(5月28日)
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