4月24日、早稲田ビジネスネット横浜稲門会(WBN)の分科会に参加してきました。
今回の講師は、ユーリズムコンサルティング代表、早稲田大学ラグビー部OBで経営コンサルタントの小野有理さんにお越しいただき、「モチベーション:激動の時代に部下のやる気を高める方法」と題してご講演いただきました。小野さんは、ちょうど2年3か月前の分科会以来、二度目のご登壇です。
前回のレポートはこちら。
前回同様、ノンストップの熱いお話は、その量も膨大でまとめるのが大変なのですが、今回のお話は部下のやる気を高める「方法」というよりは、「リーダーの姿勢」と呼んだ方が良い内容でした。
まず全ての前提となるリーダーの資質について。それは「情熱」と「規律」。前回レポートのタイトルは「偉大な教師というのは、生徒の心に火をつける」でしたが、その「心に火をつける」元となるのが、とりわけ「情熱」だということです。さらに言えば、その「情熱」を生み出す根源は「愛」、「愛」とは対象となる人を「どれだけ本気で知ろうとすることができるか」ということ。それは単に感情を知るだけでなく、理性的にも知らなければなりません。したがって、「愛」から生み出されるものが必然的に「情熱」と「規律」ということになるのではないかと思うのですが、早稲田大学ラグビー部の名将、大西鐵之助先生はこれを
左目でその人を全力で愛し 右目でその人を全力で分析せよ
と表現されたそうです。この言葉は、高名な経済学者、A.マーシャルの名言”Cool head but Warm heart”を想起させます。また、左目は情緒を司る右脳に直結し、右目は論理的思考を司る左脳と直結しているそうですが、上の言葉は恐らくそのこととも無縁ではないでしょう。
したがって、「愛」の反対語は「無関心(無視)」。無関心とは愛の欠如のことであるとも置き換えられると思いますが、リーダーとして心から愛の欠如はないと断言できるかどうか。永遠のテーマです。
第二に。なぜ「激動の時代に部下のやる気を高めなければならないのか」については、企業組織としてはそれが「業績向上につながるから」というのは凡そ異論のないところだと思います。実際、多少表現方法は異なっても、業績を向上させる公式は、
業績=能力(Ability)×モチベーション(Motivation)×理念の理解(Understanding Mission)
であると言われています。各因子にはそれぞれ特徴があり、
能力:値を大きくすることはできるが、先天的個人差も存在する
モチベーション:ゼロになる可能性がある
理念の理解:理解の仕方を誤ると、マイナスになる可能性がある
ということだそうです。
上の公式の第二因子である「モチベーション」が今回のメインテーマとなるのですが、一般にモチベーションを高める要因として「金銭」・「恐怖」・「成長」の三つが挙げられます。しかし、金銭と恐怖には、
金銭:原資に限界がある。評価基準を外すと機能しない。チームワークを阻害する恐れがある。
恐怖:最初はうまくいくが持続しない。失うものが多い。
といった欠点が指摘されており、「成長」を要因とするモチベーション向上が望ましいとされます。問題は、その人が成長したいと望んでいるか否かですが、成長欲求の条件となるものが「自律」だということです。「自律」については、前回レポートで述べましたので割愛しますが、2月19日の分科会における本田仁さんの「メンタリング」のお話とほぼ共通していると思います。
お話の中に出てきた、六代目尾上菊五郎の辞世の句、
まだ足らぬ 踊りおどりて あの世まで
自律心を持った人の成長欲求は生涯を賭しても足りないほど、大きく強いものだということでしょう。
最後に。前回はその「自律」という考え方が、当社の役職名ともなっている「和声(わせい)」と同義であるということについて述べさせていただきましたが、今回は同じく役職名となっている「中孚(ちゅうふ)」について考えました。「中孚」は『易経』の卦「風澤中孚」からの引用ですが、『易経』の「彖伝(たんでん)」では「中孚」について、次のように述べています。
中孚は柔、内に在りて剛、中を得たり。説びて巽(したが)い、孚(まこと)ありてすなわち邦(くに)を化するなり。
中孚とは、まさに小野さんのお話の中の「リーダーの姿勢」そのものなのではないかと、今回改めて思った次第です。
繻るに衣袽あり、ぼろ屋の窪田でした