窪田恭史のリサイクルライフ

古着を扱う横浜の襤褸(ぼろ)屋さんのブログ。日記、繊維リサイクルの歴史、ウエスものがたり、リサイクル軍手、趣味の話など。

ウエスものがたり【第九回】ぼろウエスの今日的意義

2008年07月01日 | ウエスものがたり
第二回でお話ししましたが、ここでもう一度ウエスを作るのに何故ぼろ、つまり使い古した布を使うのかについておさらいしましょう。木綿は何度も洗濯を重ねると脂分が抜け、繊維の表面も程よく荒れて水や油を良く吸い取るようになります、つまり良く使われた木綿ほど優れたウエスになったから、ぼろが使われたのです。したがってウエスにぼろを使うのはリサイクルがこれほど社会的な問題としてクローズアップされるはるか以前から、その機能的理由によってごく当然のことだったのでした。



 それに加えてぼろウエスの今日的意義として、大量に排出されるようになった古着を活用するための有効な手段の一つということがいえるでしょう。さらに地球温暖化防止のためCO2削減目標が国際条約となった今日、ウエスのように一度廃棄された古着を再利用するというリユースはCO2発生を抑制する極めて有効な手段として見直されるべきものとなっています。

 ウエスは自動車のように排気ガスを出すわけではありません。それなのに何故ぼろから作られたウエスを使うことが廃棄された古着の削減につながるだけでなくCO2発生抑制につながるのでしょうか。それはぼろウエスを使うことによって、新しい綿布や繰り返しクリーニングして使うレンタルのウエスを使った場合に発生するであろうCO2を未然に抑止できるという「機会損失の抑止」という考え方にもとづいています。さらに今日、製品の環境負荷を測定するのにはその対象となる製品が使用されたり廃棄されたりした場合だけでなく、その製品を作るために投入した資源やエネルギーなど製品の生い立ちから廃棄まで(これを製品のライフサイクルといいます)全ての過程における負荷を考慮に入れることが主流となっています。これをライフサイクルアセスメント(LCA)といいます。このLCAの手法によると、その製品が存在することによって発生するトータルの環境負荷を比較することができるのです。例えば、太陽電池パネルが環境に良い側面をもった製品であることは間違いないのですが、太陽電池パネルが環境にどれほど良いのかを測定するにはその製品がもつ性能だけでなく製造するために投入した資源やエネルギーも考慮に入れなければ不十分であろうというのがLCAの考え方です。

  繻るに衣袽あり、ぼろ屋の窪田でした

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繊維リサイクルの歴史 【015】発生および回収段階での問題

2008年07月01日 | 繊維リサイクルの歴史
当時故繊維業界が直面した問題は、大きく二つに分けられます。一つは故繊維の供給が急増した問題。もう一つは供給の増加と同時に出口としての需要が減少したという問題です。通常の製造業における仕入と違い、故繊維業界では需要動向と無関係に供給が発生しますから、需要と供給が全く相反した動きを示したことにより、故繊維業界は突如として窮地に立たされることになったのです。

 では初めに供給面において具体的にどのような問題が発生したのかを見ていきましょう。

1.行政回収ルートの増加

 各種リサイクル法規が整備される流れの中、容器包装・古紙に次ぐ収集品目として、自治体が衣類を分別収集の対象とするケースが2001年頃このころから急激に増加するようになりました。ところが行政回収ルートの場合、市場メカニズムが機能しないため需要と関係なく供給が増加し需給バランスが崩れてしまいました。また分別収集の場合排出時の分別意識が低くなりがちで、回収物に不能物・汚れ物などの混入が多くなるなどの問題が発生しました。空き缶やビンと違い衣料は洗えば済むという物ではなく、濡れても汚れても使い物にならなくなってしまう性質があります。この点は「資源ごみ」という名が示すとおり、衣類を「ごみ」として扱う前提に今日でも改善すべき課題があるのですが、同じ再生資源の中でも特に繊維は上記のような独特の難しさを抱えており、より良い行政回収の仕組みを作っていくためにはこうした点について事前に慎重に検討していく必要があります。

2."リサイクル"を謳う一方的な回収の増加

 長引く不況やデフレの影響もあってか、このころから販売促進効果を狙った衣類の「下取りセール」などが目立つようになってきました。小売店による衣類の下取りそのものは悪いことではありませんが、回収した衣類がきちんとリサイクルされるか否かの根拠なく安易に販促や企業イメージ向上だけを狙った回収も決して少なくありませんでした。

第14回でお話しましたとおり、リサイクルシステムの構築とはこれまで「外部不経済」とされてきた廃棄の問題を経済システムの中に「内部化」する動きのことであり、そのためには内部化するコストをいかに配分するか、わかりやすく言えば各経済主体がリサイクル費用を応分に負担することどうすれば合意できるかが大きな問題となります。解決の一端としては、リサイクルを要請する側と引き受ける側双方が責任ある経済主体であり、回収した衣類を確実にリサイクルすることを保証できるサプライとリサイクルをつないだチェーンを構築する必要があるのです。

  繻るに衣袽あり、ぼろ屋の窪田でした

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