窪田恭史のリサイクルライフ

古着を扱う横浜の襤褸(ぼろ)屋さんのブログ。日記、繊維リサイクルの歴史、ウエスものがたり、リサイクル軍手、趣味の話など。

開智学校 生徒心得

2011年04月06日 | 史跡めぐり


  今週は各地で入学式がおこなわれているようです。

  2009年10月に長野県松本市にある旧開智学校をご紹介しました。その時、お土産で買った「開智学校 生徒心得」を機会があればご紹介しますと申し上げたのですが、それきりずっとご紹介せずじまいでした。



  そこで、その生徒心得を全国が新学年を迎えるこの機会にご紹介したいと思います。「開智学校 生徒心得」が作られたのは、西南戦争の翌年、明治11年(1878年)ですから、今から133年前の校則ということになります。読んでみると、今も昔も学校は学校、子供は子供、あまり変わっていないようで微笑ましくなります。一見面倒そうですが、ほぼ現代語で意味がとれると思います。

生徒心得

第壱章

第壱条 一 校内ハ勿論他所タリトモ相互ノ交ワリヲ親切ニ為シ、挨拶応接等謙遜ヲ旨トシ、決シテ不敬不遜ノ振舞アルヘカラス

第ニ条 一 人ヲ詮議シ或ハ朋友ト無益ノ争論致スヘカラス。但文学問答ノ儀ハ苦シカラス。然レトモ語ヲ敬ミ礼ヲ失ハス喧ク語ルヘカラス。傲慢不遜ノ語ヲ出スヘカラス。

第三条 一 校則罰則諸例規ヲ遵守シ教師ノ意ヲ奉戴シ一々指揮ヲ受クヘシ。教師ノ定ル所ノ法ハ一切論スヘカラス。我意我慢ヲ出スヘカラス。

第二章

第四条 一 毎朝早く起キ顔ト手ヲ洗ヒ口ヲ漱キ髪ヲ掻キ父母ニ礼ヲ述ヘ、朝食事終レハ学校ニ出ツル用意ヲナシ、先筆紙書物等ヲ取揃ヘ置テ取落シナキ様致スヘシ。

第五条 一 毎朝参校ハ受業時間十分前タルヘシ。

第三章

第六条 一 師友ハ勿論其他知リタル人ニ逢ヒタルトキハ礼儀ヲ尽シテ挨拶スヘシ。帽襟巻アルトキハ之ヲ脱スヘシ。

第七条 一 途中ニテ遊ヒ無用ノ場所ニ立ツヘカラス。無益ノ物ヲ見ルヘカラス。瓦石弾丸ノ類ヲ抛ツヘカラス。若シ馬車人力車等ニ逢フコトアラハ早ク傍ニ避ケテ怪我ナキ様ニスヘシ。

第八条 一 途中ニテ墻壁橋梁等総テ建物ニ楽書スヘカラス。校内ハ勿論途中ノ樹木タリトモ猥ニ折取ルヘカラス。

第九条 一 校中ハ帽子襟巻ノ類着スヘカラス。昇降口ニ履物ヲ乱ス可カラス。廊下ヲ奔走スヘカラス。

第十条 一 毎朝始テ教場ニ入レハ相互ニ挨拶ヲナスヘシ。

第十一条 一 出入ノ時戸障子等ノ開閉ヲ静ニスヘシ。書物ノ取扱方ハ成丈ケ丁寧ニシテ破損セサル様ニスヘシ。書物ヲ抜クニハ爪ニテ紙ヲ傷メ又ハ指ニ唾シテ抜クコトナカルヘシ。

第十二条 一 受業中ハ他念ナク教師ノ教ニ従ヒ仮ニモ外見雑談等ヲナス可カラス。

第十三条 一 受業中自己ノ意ヲ述ヘント欲スルトキハ手ヲ上ケテ之ヲ知ラシメ教師ノ許可ヲ得テ後ニ言フヘシ。

第十四条 一 便所ニ行キタラハ能ク心ヲ用ヰ便所又ハ衣服ヲ汚サヌ様ニスヘシ。但休業時間ニアラサレハ之ヲ許サスト雖、教師ノ見込ヲ以テ斟酌スルコトアルヘシ。

第十五条 一 休業時間タリトモ故ナク自席ヲ離ルヘカラス。教場内外ヲ徘徊スヘカラス。戸口ニ佇立スヘカラス。窓ヨリ頭ヲ出シ或ハ唾シ墨汁等ヲ捨ツヘカラス。

第十六条 一 教師ノ机上ニアル書物ヲ抜クヘカラス。塗板ニ楽書スヘカラス。教鞭ヲ弄スヘカラス。椅子ニ凭ルヘカラス。

第十七条 一 休業時間独楽ヲ廻シ或ハ危険ノ遊戯ヲナスヘカラス。

第十八条 一 若シ受業ノ時間ニ後レ参校スルトキハ猥ニ席ニ着クヘカラス。遅刻ノ事情ヲ述テ教師ノ指図ヲ待ツヘシ。

第十九条 一 不参遅参早帰ハ必ス自筆又ハ親戚ノ書面ニテ就業前届出ツヘシ。早帰ハ書面ニ教師ノ捺印ヲ得サレハ帰家スルヲ得ス。

第二十条 一 校内ハ勿論総テ履物或ハ傘等他人ノ物品ヲ誤リ用ヰサル様注意スヘシ。

明治十一年五月  開智学校


注)
・我慢・・・我を張ること、強情
・抛ツ・・・なげうつ
・墻壁・・・しょうへき:垣根と壁
・猥ニ・・・みだりに
・成丈ケ・・・なるたけ
・佇立・・・ちょりつ
・凭ル・・・もたれる

  繻るに衣袽あり、ぼろ屋の窪田でした
  ブログをご覧いただいたすべての皆様に感謝を込めて。

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コメント (2)
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