韓国で昼食に立ち寄った食堂でのことです。個室の壁を見ると、壁一面に漢文の壁紙が貼ってありました。読んでみると、それは「訓民正音」という、李氏朝鮮第四代国王である世宗(1397-1450)が1443年に制定したハングルの解説書(1446年)でした。
序文の始まりだけ少し抜き出してみます。
國之語音 異乎中國 與文字不相流通 故愚民 有所欲言 而終不得伸其情者多矣 予為此憫然 新制二十八字 欲使人人易習 便於日用耳
簡単に言うと、「朝鮮の言葉の語音は中国と異なり、文も字もお互いに通じないので、愚民(漢字の読めない民)は言いたいことがあってもその思いを述べることができない者が多い。予(世宗)はこれを憐れと思い新たに28字を定めたが、人々が簡単に習い日用に便利なようにさせたいだけである」と、世宗がハングルを制定した理由が述べられています。
ハングルはローマ字のような表音文字なので、その後発音の説明なされます。さらにそれぞれの発音を組み合わせた用事の例がドレミの歌のように続きます。例えば、
終聲ㄱ 如닥為楮 독為甕
「終声ㄱは、닥を楮(こうぞ)と為し、독を甕となす」というような具合です。
その後も続きがあるかもしれませんが、壁紙はこれぐらいまででした。
ハングルが制定されるまで、朝鮮では日本の奈良時代と同じように漢文を用いるか、あるいは万葉仮名のように漢字の音を借りてきて用いるかをしていました。しかし、ハングルの制定は決して容易ではなかったようで、独自の文字を持つことに対し、かなりの反発があったようです。
その理由が「中国では地方の方言に合わせて文字を作ったりはしない。(方言によって)独自の文字を持つのは蒙古、西夏、女真、日本、西蕃(チベット)など野蛮人のすることである」という事大主義的なものでなかなか興味深いのですが、反対するとあらばどんな理屈でもつけるというのはいつの時代、どこの国にも見られることのようです。
繻るに衣袽あり、ぼろ屋の窪田でした
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