第8回ネゴシエーション研究フォーラムに続いて、NPO法人日本交渉協会の第19回燮会に参加しました。
今回の講師は交渉アナリスト1級会員の齋藤由利子さん。病院の看護部長であり、全国でも数少ない看護部出身の副院長をされている方です。何より凄いのは、医療現場の改善のため、自ら行動を起こし影響を与えてきた方だということです。
そんな齋藤さんより、「医療現場の交渉と私の交渉事例」と題してお話いただきました。
初めにコンフリクトマネジメントと交渉について。まず第22回YMSでも行ったCAPS分析をアイスブレイクも兼ね、受講者で行いました。CAPS分析で分かることは、人の性格によりコミュニケーション・スタイルに違いがあり、その違いがコンフリクトの原因となるということです。医療現場では医療従事者間、或は患者やその家族との間に様々なコンフリクトが生じ、大きな問題に発展する可能性があります。大切なことは、互いの違いを理解し、認めてコミュニケーションを図ることだそうです。
次に、価値観と人間関係について。人それぞれの価値観がいかに違うかを認識するために、『人間関係づくりトレーニング』(星野欣生著、金子書房)より「クルーザー」という演習を行いました。
人間関係づくりトレーニング | |
クリエーター情報なし | |
金子書房 |
このワークは明らかに倫理的に問題のある登場人物たちを好き嫌いで順位付けするというもので、いざ蓋を開けてみると、驚くほど順位がばらつくのでした。つまり、自分が「常識」と思っていることが他人にとっても常識であるとは限らないということで、この価値観の違いを認識していないことがコミュニケーションの妨げになるというものです。
組織は価値観の異なる個々人の集まりです。そこで生じる対立命題を解決するため、組織内で共有された価値基準が必要になってきますが、その価値基準こそ組織のビジョンということになります。
三番目は話すことと聞くこと。ここでは、言葉だけで伝えられた情報に基づいて参加者が絵を描き、その結果を共有するというワークを行いました。ここで分かることは、組織でよく起こる「伝えたつもり、分かったつもり」が何故起こるのかという事です。やはりコミュニケーションには「相手を理解すること」が必要になってくるのですが、そのために必要なスキルとして、「質問構成力」と「傾聴力」があるということでした。
人が反対する最大の理由は「私は聞いていない」というものである。
5W1Hは良く知られていますが、中でも相手の真意を理解するWHYが大切になってくるということです。しかし、WHYはそのまま用いると尋問されているように受取られてしまうため、逆効果になりかねません。そこで効果的なWHYの用い方として、「事実を訊く3W」に変換する方法と「ポジティブな1H」に変換する方法があります。
【事実を訊く3W】
WHAT:こう考えた目的は何?
WHEN:どんな時そう考えたの?
WHERE:どんな場面でそう考えたの?
【ポジティブな1H】
HOW:どうやったらできたと思う?
四番目は、病院組織における交渉スキルのポイントについて。前述のCAPS分析同様、医師、看護師、薬剤師、医療事務員それぞれ価値観やコミュニケーションに特徴があります。それを理解し、適切な伝え方があるということです。
クルト・レヴィンの公式 B=f(E,P)
B=行動
E=環境
P=個性
最後に齋藤さんの交渉事例として、①院内感染管理体制の改善交渉、②BSC(バランスド・スコアカード)導入交渉、③看護部人事異動についてお話いただきました。
交渉力アップで看護部を変える、病院を変える | |
クリエーター情報なし | |
経営書院 |
後の懇親会で齋藤さんがおっしゃっていたことですが、変化を起こすには「本人が楽しむこと」が何より大切なのだそうです。しかし、実際には今回のお話にはなかった様々なご苦労があったことだろうと思います。今回のお話を励みにしつつ、機会があればより詳しいお話を伺いたいと思いました。
繻るに衣袽あり、ぼろ屋の窪田でした
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