窪田恭史のリサイクルライフ

古着を扱う横浜の襤褸(ぼろ)屋さんのブログ。日記、繊維リサイクルの歴史、ウエスものがたり、リサイクル軍手、趣味の話など。

意思決定アプローチ”PrOACT”と交渉学超入門ー第42回燮(やわらぎ)会

2019年06月17日 | 交渉アナリスト関係


  2019年6月15日、日本交渉協会の第42回燮会を開催しました。燮会は交渉アナリスト1級会員のための交渉勉強会、今回は年1回の横浜開催でした。


【過去の横浜開催】
第37回燮会
第32回燮会
第27回燮会

  今回も二部構成。第Ⅰ部は「交渉理論研究」でテーマは「決定分析」。第Ⅱ部は「交渉学『超』入門」と題し、より多くの方に交渉学を知っていただくための紹介編についての議論を行いました。

  第Ⅰ部「交渉理論研究」は、今回からゲーム理論と並んで交渉分析の基盤をなす「決定分析」に入ります。「決定分析」とは、個人の意思決定について価値・不確実性といった事象を数学的に確定することで「最善の意思決定」を規範的に導き出し、それを現実の意思決定に具体的に応用することを言います。“Negotiation Analysis”の著者、H.ライファが開発した交渉のアプローチは、「決定分析的アプローチ」とも呼ばれています。

  さて、この勉強会のテーマでもある“Negotiation Analysis”を読み解く上でも重要な考え方になるのですが、初めにR.キーニーが唱える「価値焦点思考(Value Focused Thinking)」についてお話ししました。価値焦点思考とは、代替案を中心に考える従来の意思決定アプローチに対し、意思決定者の価値に焦点を当てることで、問題や目的を見直し、より創造的な意思決定を行うアプローチを言います。

Value-Focused Thinking: A Path to Creative Decisionmaking
Ralph L. Keeney
Harvard University Press




  キーニーはまた、交渉において価値創造を行う上で重要な技法である「ブレインストーミング」についても、この価値焦点思考がブレインストーミングの欠点を補い、創造性を促すことを明らかにしています。キーニーが行った実験によれば、漠然とブレインストーミングを行った場合に比べ、価値に焦点を当てて特定した目的ごとにブレインストーミングを行った場合の方が二倍以上の代替案を創造することができたということです。



  キーニー、ライファ、そして日本交渉協会理事長、藤田忠先生の師でもあるハモンドの三名は、価値焦点思考も踏まえた意思決定アプローチ“PrOACT”を1999年に”Smart Choices”という本で発表しました。“PrOACT”は、我々の日常生活における意思決定の多くのパターンである「確実下の意思決定」に、決定論が蓄積したより良い意思決定を行うためのノウハウを難しい数学を用いることなく応用した画期的な手法です。今回はこの“PrOACT”について、特にプロセスの最後のトレードオフで用いられる「等価交換(Even Swap)」について重点的に解説しました。

Smart Choices: A Practical Guide to Making Better Decisions (English Edition)
John S. Hammond,Ralph L. Keeney,Howard Raiffa
Harvard Business Review Press




  第Ⅱ部は「交渉学『超』入門」。簡単な売買交渉のロールプレイと交渉学では良く知られた「1個のオレンジをめぐる姉妹の争い」を用いて、交渉学に初めて触れる方に交渉理論を学ぶ意義を感じていただけるようなエッセンスを紹介しました。燮会は交渉アナリスト1級会員の集まりですので、有意義なアドバイスを沢山いただくことができました。

繻るに衣袽あり、ぼろ屋の窪田でした
コメント
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