「荒木経惟写真展 飛雲閣ものがたり」 epSITE 10/8

EPSON Imaging Gallery epSITE(新宿区西新宿)
「荒木経惟写真展 飛雲閣ものがたり」
9/21~11/3

京都・西本願寺内の庭園に佇む楼閣、飛雲閣。写真家の荒木経惟さんが、その四季を撮り尽くします。計五回に渡って行われた撮影は、春夏秋冬、多様に趣きを変える飛雲閣の姿を、独特の「語り口」によって、愉快な「ものがたり」へと変えてくれました。実に魅力的な写真ばかりです。

一見すると、何気ない名勝の光景。少し可愛らしい表情も見せる飛雲閣は、荒木さんのカメラに捉えられると、さらにより人懐っこくなって、その姿を自己主張してくるようです。三層の最も上の部分にある二つの障子窓は、好奇心を丸出しにしている目であり、その下の二層は、やや肥満気味に横へ広がってしまった体の部分にも見えます。まるでそれは、大変失礼ながら、荒木さんご本人の姿のようです。また、作品の中には飛雲閣という人物が居て、それが一生懸命にカッコ良い姿を写させようと頑張っているようにも見えます。本来なら落ち着きのあるはずの楼閣を、これほどまでに微笑ましく、愉快に、擬人的に見せてくるとは、ただただ驚かされるばかりです。

右に飛雲閣が、左には紅葉が配された、丁度、楼閣と紅葉が対になったような一枚の写真に惹かれました。飛雲閣と見事な紅葉のコラボレーション。京都の秋の風情を存分に楽しむことのできる作品です。そして、この作品で最も興味深いのは、飛雲閣が少し斜めになるように、紅葉の方へせり出して写っていることです。前景右手の紅葉へ、「オレも入れてくれ。」と言わんばかりに存在感を見せつける飛雲閣。紅葉もこれ見よがしと、鮮やかな色彩で対抗しますが、飛雲閣も黙ってはいません。

明かりがたっぷり取り込まれた小部屋に、花瓶へさされた美しい花々が写った作品も魅力的です。障子越しの陽光の白さが、赤やピンクの花びらへ映え、さらにはそれを受ける青い花瓶へと浸透していきます。床に敷きつめられた畳からは、この楼閣の気品が伝わりますが、面白い点は、この花々が妙に色気を醸し出しているということです。一人の女性が、美しい横顔を見せながらこちらを見つめている。そんな光景とも重なります。これにも参りました。

既に、今回の作品は、「飛雲閣ものがたり」(本願寺出版社)として、写真集となって発売されています。私が荒木さんの作品を見出したのは、今年に入ってからのことですが、展覧会などで幾度となく出会う氏の作品には、見る度に惹き付けられます。11月3日までの開催です。
コメント ( 2 ) | Trackback ( 0 )