「特別展 燕子花図」 根津美術館 10/9

根津美術館(港区南青山)
「特別展 国宝 燕子花図 -光琳・元禄の偉才- 」
10/8~11/6

門外不出の名品、尾形光琳(1658-1716)の「燕子花図」(新五千円札の裏面の図柄にも採用されました。)が、修復を経て約4年半ぶりに公開されました。貴重な展覧会です。

展示室の一番奥のガラスケースにて鎮座していたのが「燕子花図」でした。修復によるものなのか、地の美しい金箔と、花の深い青み、そして葉の淡い緑が、それ自身が全て光源であるかのように輝いています。展示室内の明かりも巻き込んで、とても300年前の品とは思えないほどに眩しい燕子花。本当に当時もこれほど煌めいていたのでしょうか。一瞬、躊躇してしまうほどに圧倒的です。私は今回、この作品に初めて接しましたが、これまでにこれほど爛々とした屏風画は見たことがありません。

燕子花は何の背景も与えられずに、ただひたすらに咲き並んでいます。どこかミニマリズム的です。右隻(向かって左)は左上から右下へ沈むように、そして左隻(向かって右)は高みへ昇っていくかのように、それぞれ燕子花が配されています。藍色を帯びてしっかりと色づけされた花々は、まるで屏風から取れてしまいそうなほど、重々しく、そしてしっとりとしていました。そんな花々を支えるのが、伸びやかな茎と葉です。こちらは、花よりもやや薄めに塗られていて、あくまでも脇役として地味に自己主張しています。燕子花の咲き誇る二隻の屏風。無限の広がりこそ感じさせますが、不思議と花の匂いやその場の空気を感じさせません。輝きこそ纏っているものの、思いの外、怜悧な表情を見せています。

展示は、前期(10/8-23)と後期(10/25-11/6)に分かれていますが、「燕子花図」は通して展示されるそうです。また「燕子花図」の他にも、約40点ほど光琳の作品(もしくは光琳とされる作品。)が並び、とても見応えのある展示となっています。ただ一概には言えませんが、貴重な作品(「孔雀立葵図」や「八橋蒔絵硯箱」など。)は、主に後期期間中に展示されるようです。一度だけの鑑賞を予定されている方であれば、今月25日からの後期展示をおすすめします。来月6日までの開催です。
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