都内近郊の美術館や博物館を巡り歩く週末。展覧会の感想などを書いています。
はろるど
「マックス・ヘッドルーム -頭上注意の絵画- 」 ヴァイスフェルト 10/27
ヴァイスフェルト(港区六本木)
「マックス・ヘッドルーム -頭上注意の絵画- 小川信治/カンノサカン/内海聖史」
10/7~29
「そう。問題なのは高さだ。」と宣言された、何やら謎めいたタイトルの展覧会です。三名のアーティストによる、その高さに工夫を凝らした(?)絵画が展示されています。
まず目についたのは、最奥部のアーチ状のスペースで展示されていた小川信治の「Without You- Virgin of the Rocks」です。ダ・ヴィンチの「岩窟の聖母」をモデルにした油彩画ですが、まるでオリジナルを写真で撮影して、それをコラージュしたのではないかと思ってしまうほど精巧に仕上げられています。ただ、オリジナルでは中央に描かれているはずの聖母の姿がここにはありません。と言うことで、当然ながら画面の構成はいささか奇妙です。作品の主題も、あくまで天使に促されるイエスとヨセフの対話だけに絞られています。またこの作品のために、わざわざアーチ状の壁面が作られていて、展示自体をもり立てていました。非常に高い完成度を見せる作品です。
まるで空中に浮いているように展示されていたのは、カンノサカンの真っ赤な作品「Miles Davis Frieze-Nefeltiti」でした。真っ赤なキャンバスをウレタン樹脂で仕上げて光沢感を出し、その上にアクリルにて、極めて動きのある模様が、繊細に、そしてダイナミックに描かれています。遠目で見ると、まるで酒井抱一の「秋草図屏風」のような、風に優雅に靡く草花の様子を思い起こさせますが、近寄ると、細い骨が何層にも積み重なって一本の線になっているようにも見えて、それがグロテスクな雰囲気をも醸し出しています。輝く真っ赤な地に、跳ね渡り飛び散る細い線。鮮やかでありながらも、多様に表情を変化させる奥深い作品です。
最後は、以前、東京都現代美術館での「MOTアニュアル2004展」でも気になった内海聖史の「Overhead Colours」を挙げないわけにはいきません。小さな小さなドットが、大きなキャンバスに何度も何度も打ち塗られています。まるでそのドットが焦げて剥げ落ちてくるかのような、大変重々しい質感です。以前に見た作品では、青や緑の鮮やかなドットが、キャンバスに余裕を持って、大きな余白を取りながら描かれていましたが、ここでは所狭しと折重なっていました。またドットの背後から顔を出しているのは、キャンバス上に直接塗られたものなのか、赤や青の色の残骸です。それにしても、壁を全て使って展示された、高さ2m40cm、横3mほどの大きなキャンバスの中にひしめき合うドットの重みは強烈です。有無を言わさない大迫力を見せつけていました。
視点の面白さもさることながら、一点一点を、しっかりと見せてくれる企画です。明日まで開催されています。
「マックス・ヘッドルーム -頭上注意の絵画- 小川信治/カンノサカン/内海聖史」
10/7~29
「そう。問題なのは高さだ。」と宣言された、何やら謎めいたタイトルの展覧会です。三名のアーティストによる、その高さに工夫を凝らした(?)絵画が展示されています。
まず目についたのは、最奥部のアーチ状のスペースで展示されていた小川信治の「Without You- Virgin of the Rocks」です。ダ・ヴィンチの「岩窟の聖母」をモデルにした油彩画ですが、まるでオリジナルを写真で撮影して、それをコラージュしたのではないかと思ってしまうほど精巧に仕上げられています。ただ、オリジナルでは中央に描かれているはずの聖母の姿がここにはありません。と言うことで、当然ながら画面の構成はいささか奇妙です。作品の主題も、あくまで天使に促されるイエスとヨセフの対話だけに絞られています。またこの作品のために、わざわざアーチ状の壁面が作られていて、展示自体をもり立てていました。非常に高い完成度を見せる作品です。
まるで空中に浮いているように展示されていたのは、カンノサカンの真っ赤な作品「Miles Davis Frieze-Nefeltiti」でした。真っ赤なキャンバスをウレタン樹脂で仕上げて光沢感を出し、その上にアクリルにて、極めて動きのある模様が、繊細に、そしてダイナミックに描かれています。遠目で見ると、まるで酒井抱一の「秋草図屏風」のような、風に優雅に靡く草花の様子を思い起こさせますが、近寄ると、細い骨が何層にも積み重なって一本の線になっているようにも見えて、それがグロテスクな雰囲気をも醸し出しています。輝く真っ赤な地に、跳ね渡り飛び散る細い線。鮮やかでありながらも、多様に表情を変化させる奥深い作品です。
最後は、以前、東京都現代美術館での「MOTアニュアル2004展」でも気になった内海聖史の「Overhead Colours」を挙げないわけにはいきません。小さな小さなドットが、大きなキャンバスに何度も何度も打ち塗られています。まるでそのドットが焦げて剥げ落ちてくるかのような、大変重々しい質感です。以前に見た作品では、青や緑の鮮やかなドットが、キャンバスに余裕を持って、大きな余白を取りながら描かれていましたが、ここでは所狭しと折重なっていました。またドットの背後から顔を出しているのは、キャンバス上に直接塗られたものなのか、赤や青の色の残骸です。それにしても、壁を全て使って展示された、高さ2m40cm、横3mほどの大きなキャンバスの中にひしめき合うドットの重みは強烈です。有無を言わさない大迫力を見せつけていました。
視点の面白さもさることながら、一点一点を、しっかりと見せてくれる企画です。明日まで開催されています。
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