「熊田千佳慕展/山名文夫と熊田精華展」 目黒区美術館 7/2

目黒区美術館目黒区目黒2-4-36 目黒区民センター内)
「熊田千佳慕展/山名文夫と熊田精華展」
6/24-9/3

かなり前に行ったので今更になってしまいますが、忘れないように記録しておきたいと思います。目黒区美術館で先月末から始まった、「熊田千佳慕展」と「山名文夫と熊田精華展」です。

 

恥ずかしながらこの三名のお名前を今回初めて知りました。熊田千佳慕(1911-)は今も現役で活躍なさる絵本作家、美術家です。「プチ・ファーブル」の愛称でも知られ、昆虫や花を精緻なタッチで描き続けておられます。一方の熊田精華(1898-1977)は詩人として活躍した千佳慕の実兄です。そして山名文夫(1897-1980)は主にポスターなどを手がけたデザイナー。精華の親友でもあり、千佳慕の師でもあったそうです。いきなり三名の名前が挙がってくるので少しややこしいのですが、この展覧会では熊田千佳慕の画業をメインにして、精華、文夫の交流などを絵や詩で紹介します。二本立ての内容です。

 

まずは熊田千佳慕の絵画からいきましょう。ケント紙の上で際立つ水彩の美しさ。生々しく表現された蝶の羽や触角などはとても写実的ですが、さすがに絵本作家というだけあってどこかほのぼのとした虫たちの世界を描いています。「みつばちマーヤの冒険」(1993-96)で見る、マーヤの頭の上結ばれた可愛らしいピンクのリボン。お話に則って、虫たちが闘う様子を描いた作品もありました。そしてその一方で、近作の「あじさい」(2005)のような作品もある。細密画とでも言えば良いのでしょうか。この味わいはとても新鮮です。



熊田千佳慕の描いた挿絵が載った絵本も展示されています。こちらは、クッションの転がるカーペットの上でくつろぎながら閲覧可能です。(一応、子ども向けの展示かと思いますが、靴さえ脱いであがれば問題ありません。)当然ながらこれらは書店でも手に入ります。私も、かつては知らず知らずに彼女の描いた挿絵を眺めていたのかもしれません。そう思うと、どこか懐かしい印象も受けました。

熊田精華と山名文夫についての展示は、熊田千佳慕を紹介したコーナーと比べると小さくなっています。こちらは二人の間で交わされた書簡や、山名の手がけたポスターなどが中心です。資生堂資料館所蔵の作品が多いとのことで、その関連の広告なども展示されていました。

熊田千佳慕の絵画はかなりの数です。淡い水彩による可愛らしい花や虫たちに囲まれた展覧会。9月3日までの開催です。
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