「所蔵名作展 - 日本画・洋画の名品」 中野美術館

中野美術館奈良市あやめ池南9丁目946-2
「所蔵名作展 - 日本画・洋画の名品」
5/30-7/6(会期終了)

既に会期を終えていますが、松伯、文華館と並び、学園前では重要なアートスポット、中野美術館に触れないわけにはいきません。先日の奈良・斑鳩ツアーの際に見てきました。館蔵の日本画、洋画などを展観する収蔵品展です。



スペースとしてはかなり手狭なので、展示の量(全40点ほど。)に期待するのは無理がありますが、私設美術館ならではの静かな環境で良品をいくつも楽しむことが出来ました。中でも特筆すべきは須田国太郎のコレクションです。そもそもこの美術館の創立者である中野皖司氏は、須田の作品の影響を受けて美術品の収集をはじめたという、言わば筋金入りの須田ファンですが、実際に展示で紹介されている約5点はどれもなかなか見応えがありました。私の一推しは「ヴァイオリン」(1933)です。須田カラー、つまりはサーモンピンクに彩られたやや暗がりの画面に、自らの存在を誇示するかのようにして反り返るヴァイオリンが、実に力強く描かれています。そもそもヴァイオリンをここまで迫力ある様で表した画家が他にいるのでしょうか。これ一枚でも、須田の魅力を十分に堪能出来る作品です。



須田と並んで私の偏愛の画家、松本竣介にも優れた作品が一枚出ていました。それがこの「隅田川風景」(1946)です。終戦直後の灰燼に帰した隅田川沿いを煤けた色遣いにて表していますが、川向こうにそそり立つ煙突の逞しさは、どこか未来への眼差しを見るような、言わば都市の復興を描いているようにも感じられます。静けさに満ちた構図ながら、時折このような勢いを見せるのも松本らしいところです。



奈良に因む作品として、熊谷守一の「畝傍山」(1940)も挙げておきたいところです。(上の画像は私がカメラで撮ったものです。中野美術館は作品を含め、館内の撮影が完全に許可されています。)星も瞬く輝かしいブルーの夜空の下には、太いタッチで示された稜線が特徴的な山々が連なっていました。また前景に見る鳥居の姿が印象的です。まさに山の主と言わんばかりの様相にて敢然と立っています。また洋画ではもう一点、遊行さんが記事にも挙げられた村上槐多の「松の群」も心にとまりました。ただならぬ松林の景色は特異です。妖気すら感じます。

かつては須田国太郎の回顧展(二人展など。)も開催したことがあったそうです。是非、また訪ねてみたいと思いました。
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