「国宝 法隆寺金堂展」 奈良国立博物館

奈良国立博物館奈良市登大路町50
「国宝 法隆寺金堂展」(会期前半)
6/14-7/21



奈良博にしては混んでいましたが、意外と余裕があるように感じたのは、やはり四天王像がまだ全て揃っていなかったからかもしれません。前述の「奈良・斑鳩史跡アート紀行」(Vol.1/Vol.2)の最後に行きました。奈良国立博物館で開催中の「国宝 法隆寺金堂展」です。



言うまでもなく今回のハイライトは、博物館だよりに「四体そろってお出ましになるのはもちろん初めて、そして今度二度とないでしょう。」(第65号)とも書かれた、史上初の『四天王像、寺外四体そろい踏み』にあります。ただ、そのような一期一会の機会を鑑みても、いくら会期前半に毘沙門天と吉祥天が開陳されたとは言え、会期後半(7/1~)にしか四体の揃わない展示の設定にはやや残念なものがありました。もちろんこれに先立って訪問した法隆寺で残りの二体を拝んできたわけですが、そこで何事もなかったように出品されていただけにより一層、前後期の如何を問わず、奈良博のこの会場で四体の揃う様子を見せていただければと思えてなりません。とは言え、裏を返せば、既に四体の揃った現会期中には素晴らしい空間が待っていること請け合いです。期待は出来ます。



少ない出品数を巧みな展示空間でカバーしています。左右に取り囲むのは、本物と見間違うかのような精巧極まりない再現金堂壁画です。そして中央で横一列に並ぶのが、360度、ガラスケースなしで手の届く距離から眺められる四天王のうち二体、及び毘沙門天と吉祥天でした。夢殿の救世観音同様、光背が頭に直接打ち付けられている様は何とも不気味ですが、半ばコミカルな邪鬼の表情など、日本の四天王像の原初ともされる作品を存分に楽しむことが出来ます。また今回の仏像の中で一番惹かれたのは吉祥天です。どっしりと立ち、威厳に満ちた顔にて前を見据える様は、四天王よりも泰然としているように思えました。



さて今回、最も時間を使って見入ったのは天蓋です。とりわけその一点はちょうど人の高さの位置に吊り下げられている上、床には鏡も設置されているので、内部の装飾や絵までを事細かに確認することが出来ました。つい先日、この天蓋の一部に、創建法隆寺時代の木材が使われていたことが判明したという報道がありましたが、それはともかく、数世紀にも渡って釈迦三尊像をお守りしてきた歴史の重みがダイレクトに伝わってきます。もちろん剥き出し台座の展示も普段ならあり得ませんが、この天蓋の方がより魅惑的でした。



東新館、展示室一室のみの特別企画展です。コストパフォーマンスを考えるとやや微妙なところではありますが、その点は特別展に続く、質量ともに優れた特集陳列「建築を表現する」と常設展が補ってくれます。信貴山縁起絵巻、清浄光寺の一遍聖絵をはじめ、中宮寺の天寿国繍帳までの至宝がさり気なく紹介されていました。常設もお見逃しなきようご注意下さい。



斑鳩の法隆寺の魅力をより高く引き出す展覧会です。また勝手ながら、私としては「法隆寺→金堂展」の順に観覧する方が、当地で抜けた金堂の存在感を博物館という新たな場で補完し易いのではないかと思いました。また法隆寺でも金堂展の割引券をいただけます。

今月21日までの開催です。
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