「ハンス・コパー展 20世紀陶芸の革新」 パナソニック電工汐留ミュージアム

パナソニック電工汐留ミュージアム港区東新橋1-5-1 パナソニック電工ビル4階)
「ハンス・コパー展 20世紀陶芸の革新」
6/26-9/5



パナソニック電工汐留ミュージアムで開催中の「ハンス・コパー展 20世紀陶芸の革新」へ行ってきました。

コパーと言うと、つい先だって新美術館で開催されたルーシー・リー展のことを思い出しますが、やはり単独展となると作家への共感の度合いは大分異なっているかもしれません。規模こそまるで違いますが、それこそ相互に補完し合う展覧会だと改めて感じました。

構成は時間軸に沿っています。ルーシー・リーとの関係を踏まえた上で、コパーの制作史を辿るシンプルなものでした。

1.「アルビオン・ミューズ」(1946~1958):ルーシー・リーの工房時代。共同製作。


ハンス・コパー/ルーシー・リー「コーヒーセット(7点組)」1955年頃 滋賀県立陶芸の森 陶芸館蔵

ルーシー・リーとの共同製作時代冒頭に展示されているのは、ルーシー・リー展でも出品されていた陶器ボタンです。またこの時期のコパーの作品には細かい線刻が施されたものが目立ちます。ルーシー・リーも得意とする掻き落としの技法の関連を伺わせていました。


ハンス・コパー「ポット」1950年代 個人蔵

しかしながらやや抽象的な陶製の頭部作品など、作家のオブジェへの関心を見せる作品もいくつか登場していました。

2.「ディグズウエル」(1959~1963):工房を離れたコパー。ディグズウエル・アート・トラストでの制作活動。

この時期のコパーはタイルや壁面装飾、それに燭台など、建築と密接な作品を数多く手掛けています。特にコベントリー聖堂を飾った大型のロウソク立ては必見の作品ではないでしょうか。まるでエンタシスの柱のような形は聖堂云々を差し引いてもどこか瞑想的です。古代彫刻への興味も強かったコパーの作風は建築面でも独自性を発揮していました。

3.「ロンドン」(1963~1967):ロンドンへ戻り、自身の工房を構えた時代。

コパーはロンドンで名声を高めます。ここで円盤と円筒形の土台を組み合わせたモニュメンタルなオブジェを次々と生み出しました。

4.「フルーム」(1967~1981):田園地帯の農場を拠点に制作活動。晩年のコパー。


ハンス・コパー「キクラデス・フォーム」左/1975年 バークレイ・コレクション蔵 右/1975年頃 個人蔵

晩年のコパーは独自の境地です。古代中国の祭器に似たスペード・フォーム、またあざみの花を象ったティッスル・フォーム、さらには古代エーゲ海のキクラテス彫刻にモチーフを借りたキクラデス・フォームなど、まさに多種多様な陶芸を発表していきました。それにしてもこれらの作品はいずれも神秘的です。まるでそれ自体に魂がこもっている土偶のようでした。


ハンス・コパー「スペード・フォーム」(手前)1970年頃/「ティッスル・フォーム」(奥)1975年頃

狭い会場ですが、展示方法にも工夫がなされています。コパーがヨークシャーのコミュニティスクールに建てた壁面作品を実寸で展示しているのをはじめ、一部作品には有機ELの照明などが使われていました。雰囲気ある会場です。

若干高めですが、図録の図版が非常に鮮明でした。ルーシー・リー展図録同様、永久保存版になるかもしれません。

最後になりましたが、会場外の展覧会紹介VTRもお見逃しなきようご注意下さい。NHKが質の良い映像でコパーの芸術を丹念に追っています。ちなみに今月22日(再放送29日夜)には日曜美術館でもコパーの特集があるそうです。

空いているのが勿体ないと感じるくらいに良くまとまった展示でした。これはおすすめ出来ます。

9月5日まで開催されています。
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