「オノデラユキ 写真の迷宮へ」 東京都写真美術館

東京都写真美術館目黒区三田1-13-3 恵比寿ガーデンプレイス内)
「オノデラユキ 写真の迷宮へ」
7/27-9/26



東京都写真美術館で開催中の「オノデラユキ 写真の迷宮(ラビリンス)へ」へ行ってきました。

「写真表現の可能性に果敢に挑戦していく」(ちらしより引用)オノデラユキの多芸な作品を一同に楽しめるまたとない機会かもしれません。会場には初期作、「古着のポートレイト」(1994)に始まり、同美術館新収蔵品「Transvest」(2002~)などを含む全9シリーズ、計60点の作品がずらりと展示されていました。 (出品リスト+解説


「古着のポートレイト」(1994)

「謎めいていることは貴重である。」という言葉が紹介されていましたが、そのトリッキーな魅力はもはや写真表現を超えた新たな地点にまで達しています。一見、何気ない写真のようでも、引き出される奇想天外なイメージ、そしてそれを裏打ちする確かな技術には終始感心させられました。まさに写真を操る魔術師です。


「Transvest」(2002)

何やら闇の中でポーズする人物を表したような「Transvest」(2002)にもオノデラならではのトリックを楽しめる作品ではないでしょうか。この女性は当然ながら実在のモデルかと思ってしまいますが、本当は雑誌などから切り抜いた人型に無数の風景や写真などを埋め込んだコラージュでした。近寄って目を凝らすと確かに街灯も眩しい夜景のようなイメージが無数に浮かび上がってきます。その姿は都市や世界を飲み込んで立つ近未来の人造人間でした。


「オルフェウスの下方へ」(2006)

こうしたトリッキーな技法の一方、土地の記憶や場所性を意識した作品があるのも興味深いポイントです。スペインとスウェーデンの2つのローマと呼ばれる場所の風景をステレオカメラで写した「Roma - Roma」(2004)や、ある失踪事件をヒントに何と地球の表と裏側の景色をドキュメンタリー風に捉えた「オルフェウスの下方へ」(2006)などからは、時間と空間を横断して全てを写真というフレームにおさめるオノデラユキの貪欲なまでの探求心を見る思いがしました。

オノデラユキ初となる版画シリーズ、「Annular Eclipse」(2007)におけるSF映画のワンシーンのような躍動感と華やかな色遣いは、半ば作家へのイメージを変えてしまうほどに新しい作品と言えるかもしれません。そういう意味では鮮やかなピンク色が目に飛び込んでくるちらし表紙の「12 Speed」(2008)も同様でした。

会場の作り込み要素は少なく、展示自体は至って素っ気ないものですが、これまでオノデラの作品を断片的にしか見て来なかった私にとっては十分に楽しめる内容でした。なお9月4日には作家本人による講演会もレクチャーも予定されているそうです。

オノデラユキのスライドレクチャー<初公開! アートな写真のひみつ>
日時:2010年9月4日(土) 14:00~ 定員:70名 会場:1階創作室(アトリエ)
※当日10時より1階受付にて整理券を配布。要半券。

9月26日まで開催されています。おすすめします。
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