「近代日本画にみる東西画壇」 泉屋博古館分館

泉屋博古館分館港区六本木1-5-1
「近代日本画にみる東西画壇」
7/17-9/26



泉屋博古館で開催中の「近代日本画にみる東西画壇」へ行ってきました。

近代日本絵画に定評のある泉屋博古館ではありますが、今回は日本の東西、つまりは東京と京都・大阪の各画壇に焦点を当てて作品を展示しています。三都の特質を東京=粋、京都=雅、大阪=婀娜(あだ。なまめかしく、美しい。色っぽい様子。)と捉え、それぞれに代表される画家を紹介していました。

東京画壇=「粋」 狩野芳崖、橋本雅邦、下村観山など。

狩野芳崖「寿老人」(前期)
芳崖らしい大胆な線描が寿老人をアバンギャルドな姿に変えている。鶴と白梅、そして老人の着衣の線が、まるで戦い合うかのように乱れて入り組んでいる。鶴の頭だけ紅が用いられているのが面白い。芳崖は狩野派に倣いながらも、その古法に縛られるのを嫌がって法外、つまり芳崖と名乗った。

京都画壇=「雅」 望月玉泉、竹内栖鳳、木島桜谷など。

竹内栖鳳「禁城松翠」(前期)
何度見ても美しいお堀越しの石垣。青、緑、そして土の色が溶け合って混じる水面が何とも繊細。色の滲みが稀な効果を見せている。しかしベニスの月しかり、栖鳳は水面を描くのが本当に巧い。

木島桜谷「菊花図」
琳派風のトリミングによる菊花が金屏風に舞う。構図的にはやや動きがないがまさに「雅」を思わせる作品だ。

大阪画壇=「婀娜」(あだ) 深田直城、上島鳳山など。

上島鳳山「十二月美人」
今回一推しにしたいのはこの「十二月美人」シリーズ。浮世絵風美人がいかにも艶やかな立ち姿を見せて描かれている。特に「青楓」は素晴らしい。口に布をあてて楓を見やる女性の姿の色っぽさは何ともなめやか。人なつっこい表情もまた良かった。

率直なところ、三都の特質までを汲み取ることはなかなか出来ませんでしたが、あえていえば大阪の「婀娜」が一番心に感じ入ったかもしれません。独特の色気を見ると深みにはまります。

いつもの泉屋同様、点数こそ望めませんが、良質の近代日本画をゆったりとした気分で楽しむことが出来ました。

作品の一部に展示替え(8月23日)があります。後期には小林古径の作品などが出るそうです。

9月26日まで開催されています。
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