都内近郊の美術館や博物館を巡り歩く週末。展覧会の感想などを書いています。
はろるど
「田中一光とデザインの前後左右」 21_21 DESIGN SIGHT
21_21 DESIGN SIGHT
「田中一光とデザインの前後左右」
2012/9/21-2013/1/20
21_21 DESIGN SIGHTで開催中の「田中一光とデザインの前後左右」へ行ってきました。
「日本を代表するグラフィックデザイナー」(公式WEBサイトより転載)として知られる田中一光(1930~2002)。既に亡くなってから10年の時が過ぎました。
この展覧会では田中一光の創作の全体像を、残された作品はもとより、各種資料から検証しています。
まずはギャラリー1、「本の世界」から。ここでは言うまでもなく一光の本の装幀の仕事です。
「Music Today 73」ポスター 西武劇場 1973年
会場にずらりと並ぶ150冊もの書籍、もしくは雑誌類。実際に一光は全部で640冊もの本の装幀などを手がけたそうですが、まさに「本が好きだ。」と語った彼の本に対する熱意、また愛情が感じられる展示ではないでしょうか。
そして一際目立つのは函入りの豪華本です。一光は平八郎、御舟、古径らの画集のデザインも担当します。表紙には各画家の筆跡が箔押しで記されていました。
またこうした日本画家の画集の他、古来の紋を集めた「日本の文様」の仕事しかり、一光の日本の伝統への強い関心は、いずれもの作品からも見ることが出来ます。
その一例として挙げられるのが琳派へのシンパシー。彼は別冊太陽の琳派特集において構成はおろか、執筆までを担当するほど、琳派を愛していたとか。
展示書籍より
それに彼のデビューを実質的に後押しした具体のリーダー、吉原治良との関係から、具体関連の書籍も多数所有していたそうです。
「本というものは、任されたら、子どもに対するように慈しまないといけない。」という一光の言葉、心にしみるものがありました。
「文字からのイマジネーション」ポスター モリサワ 1993年
さて後半はポスターとグラフィックアート、そしてそこから広がった様々なディレクション活動の軌跡です。10のテーマに沿って一光の制作が紹介されています。
まずはタイポグラフィー。一光は自身で「光朝」というフォントまで作るほど、デザインと文字との関係を追求し続けました。
「JAPAN」ポスター 社団法人日本グラフィックデザイナー協会 1986年
そして先にも触れた日本の伝統、とりわけ琳派への強い関心。それは例えば「日月山水図屏風」から連山のデザインパターンを、また宗達の鹿のモチーフをポスターに使ったことでも分かります。
またいわゆる紋のセンスを企業のシンボルマークに取り込む方法も。彼の石丸電気のマークは一光が紋にヒントを得て制作しました。
「Nihon Buyo」ポスター UCLA Asian Performing Arts Institute 1981年
そして彼は日本の伝統をデザインとして世界に発信。1981年にアムステルダムで行われたジャパンディの他、1984年のモスクワの「日本のデザイン展」など、各国で行われた日本関連の展覧会にも積極的に参加しています。
またよく知られるように広告制作の分野でも多大な業績が。紋との関連として例を挙げた石丸電気ではシンボルマークだけでなく、店内のサインシステムやネオンまで手がけています。
そして資生堂にロフト、DNP、TOTO、さらには立ち上げ時からセゾンのクリエイティブディレクターとして関与した無印良品も、全て一光の仕事なのです。
「イサム・ノグチ展」ポスター 有楽町アートフォーラム 1985年
ちなみにこのセゾンとの関係では、無印の他にも、西武美術館のポスターやディスプレイにカタログ、そして舞台芸術として西武劇場などの仕事についても言及があります。こうした膨大な一光の業績を追っていくと、初めにも触れた「日本を代表するグラフィックデザイナー」という言葉、全く誇張ではないことがよく分かるかもしれません。
なお会場には本展の構成とグラフィックデザインを担当した廣村正彰によるインスタレーションも展示されています。
廣村正彰「His Colors」
これは一光が選定に携わった色紙「タント」にヒントを得て作られた作品なのだそうです。こちらは撮影可能でした。
「田中一光とデザインの前後左右/フォイル」
彼のデザインには一目見るだけで頭に焼き付くようなインパクトとともに、どこか強い矜持、そして「凛」とした佇まいがあります。
「田中一光自伝 われらデザインの時代/白水uブックス/白水社」
琳派だけでなく日本の伝統を見据え、世界へ発信し得るデザインを獲得した田中一光。その業績はまさに圧倒的でした。
2013年の1月20日まで開催されています。ずばりおすすめします。
「田中一光とデザインの前後左右」 21_21 DESIGN SIGHT
会期:2012年9月21日(金)~2013年1月20日(日)
休館:火曜日。但し10月30日、12月25日は開館。年末年始(12月27日~1月3日)。
時間:11:00~20:00(入場は19:30まで)
料金:一般1000円、大学生800円、中高生500円、小学生以下無料。
*15名以上は各料金から200円割引
住所:港区赤坂9-7-6 東京ミッドタウン・ガーデン内
交通:都営地下鉄大江戸線・東京メトロ日比谷線六本木駅、及び東京メトロ千代田線乃木坂駅より徒歩5分。
「田中一光とデザインの前後左右」
2012/9/21-2013/1/20
21_21 DESIGN SIGHTで開催中の「田中一光とデザインの前後左右」へ行ってきました。
「日本を代表するグラフィックデザイナー」(公式WEBサイトより転載)として知られる田中一光(1930~2002)。既に亡くなってから10年の時が過ぎました。
この展覧会では田中一光の創作の全体像を、残された作品はもとより、各種資料から検証しています。
まずはギャラリー1、「本の世界」から。ここでは言うまでもなく一光の本の装幀の仕事です。
「Music Today 73」ポスター 西武劇場 1973年
会場にずらりと並ぶ150冊もの書籍、もしくは雑誌類。実際に一光は全部で640冊もの本の装幀などを手がけたそうですが、まさに「本が好きだ。」と語った彼の本に対する熱意、また愛情が感じられる展示ではないでしょうか。
そして一際目立つのは函入りの豪華本です。一光は平八郎、御舟、古径らの画集のデザインも担当します。表紙には各画家の筆跡が箔押しで記されていました。
またこうした日本画家の画集の他、古来の紋を集めた「日本の文様」の仕事しかり、一光の日本の伝統への強い関心は、いずれもの作品からも見ることが出来ます。
その一例として挙げられるのが琳派へのシンパシー。彼は別冊太陽の琳派特集において構成はおろか、執筆までを担当するほど、琳派を愛していたとか。
展示書籍より
それに彼のデビューを実質的に後押しした具体のリーダー、吉原治良との関係から、具体関連の書籍も多数所有していたそうです。
「本というものは、任されたら、子どもに対するように慈しまないといけない。」という一光の言葉、心にしみるものがありました。
「文字からのイマジネーション」ポスター モリサワ 1993年
さて後半はポスターとグラフィックアート、そしてそこから広がった様々なディレクション活動の軌跡です。10のテーマに沿って一光の制作が紹介されています。
まずはタイポグラフィー。一光は自身で「光朝」というフォントまで作るほど、デザインと文字との関係を追求し続けました。
「JAPAN」ポスター 社団法人日本グラフィックデザイナー協会 1986年
そして先にも触れた日本の伝統、とりわけ琳派への強い関心。それは例えば「日月山水図屏風」から連山のデザインパターンを、また宗達の鹿のモチーフをポスターに使ったことでも分かります。
またいわゆる紋のセンスを企業のシンボルマークに取り込む方法も。彼の石丸電気のマークは一光が紋にヒントを得て制作しました。
「Nihon Buyo」ポスター UCLA Asian Performing Arts Institute 1981年
そして彼は日本の伝統をデザインとして世界に発信。1981年にアムステルダムで行われたジャパンディの他、1984年のモスクワの「日本のデザイン展」など、各国で行われた日本関連の展覧会にも積極的に参加しています。
またよく知られるように広告制作の分野でも多大な業績が。紋との関連として例を挙げた石丸電気ではシンボルマークだけでなく、店内のサインシステムやネオンまで手がけています。
そして資生堂にロフト、DNP、TOTO、さらには立ち上げ時からセゾンのクリエイティブディレクターとして関与した無印良品も、全て一光の仕事なのです。
「イサム・ノグチ展」ポスター 有楽町アートフォーラム 1985年
ちなみにこのセゾンとの関係では、無印の他にも、西武美術館のポスターやディスプレイにカタログ、そして舞台芸術として西武劇場などの仕事についても言及があります。こうした膨大な一光の業績を追っていくと、初めにも触れた「日本を代表するグラフィックデザイナー」という言葉、全く誇張ではないことがよく分かるかもしれません。
なお会場には本展の構成とグラフィックデザインを担当した廣村正彰によるインスタレーションも展示されています。
廣村正彰「His Colors」
これは一光が選定に携わった色紙「タント」にヒントを得て作られた作品なのだそうです。こちらは撮影可能でした。
「田中一光とデザインの前後左右/フォイル」
彼のデザインには一目見るだけで頭に焼き付くようなインパクトとともに、どこか強い矜持、そして「凛」とした佇まいがあります。
「田中一光自伝 われらデザインの時代/白水uブックス/白水社」
琳派だけでなく日本の伝統を見据え、世界へ発信し得るデザインを獲得した田中一光。その業績はまさに圧倒的でした。
2013年の1月20日まで開催されています。ずばりおすすめします。
「田中一光とデザインの前後左右」 21_21 DESIGN SIGHT
会期:2012年9月21日(金)~2013年1月20日(日)
休館:火曜日。但し10月30日、12月25日は開館。年末年始(12月27日~1月3日)。
時間:11:00~20:00(入場は19:30まで)
料金:一般1000円、大学生800円、中高生500円、小学生以下無料。
*15名以上は各料金から200円割引
住所:港区赤坂9-7-6 東京ミッドタウン・ガーデン内
交通:都営地下鉄大江戸線・東京メトロ日比谷線六本木駅、及び東京メトロ千代田線乃木坂駅より徒歩5分。
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