「PAPERー紙と私の新しいかたち展」 目黒区美術館

目黒区美術館
「PAPERー紙と私の新しいかたち展」 
7/20-9/8



目黒区美術館で開催中の「PAPERー紙と私の新しいかたち展」へ行ってきました。

これまでにも2011年の「包む展」など、造形素材の多様な可能性に着目した企画を行ってきた目黒区美術館ですが、今度は身近な「紙」をテーマに、その魅力を引き出そうとする展覧会を開催しています。

「出品作家」
植原亮輔と渡邉良重(キギ)
鈴木康広
寺田尚樹
トラフ建築設計事務所(鈴野浩一・禿真哉)
DRILL DESIGN(林裕輔・安西葉子)
西村優子




さてこの展示、掴みからしてなかなか巧みです。というのも階段からとある仕掛けが。(一階と階段に関しては撮影が可能でした。)一見、いつもと変わらない階段、よくよく手すりなりを見て下さい。



すると何と小さな小さな切紙の人形があちらこちらに。手がけるのは建築家でデザイナーの寺田尚樹。その名も「テラダモケイ」です。



そもそもは「100分の1建築用添景セット」としての生み出された作品。添景とは建物の大きさなどをイメージ出来るように配置した人や家具などのことだそうです。展示ではそれを独立させて、そっと空間に潜ませています。



踊り場にはオーケストラもご覧の通り。もちろん全ては紙で出来たもの。まさに小人の世界です。思わずにんまりしてしまいました。



ちなみにこの添景セット、2階の会場でも作品が多数紹介されています。そしてこれがまた面白い。様々なシチュエーションをイメージしたセットがあるのですが、各シーン毎に小さなアクリルボックスに入れられているのです。

うちそこには「デート」やら「ドキドキ」、そして「なかなか来ませんね」などのタイトルが。ネタバレになりますが、「なかなか来ませんね」とはバス待ちをする人々を表したセット。このバス停で人が並ぶ様子が再現されています。

その他、「渋谷」や「奈良」に「10円見つけた」なども。奈良には鹿がたくさんいました。では渋谷は?これがまたにやりとさせられるようなセットです。是非会場でご覧になってください。


トラフ建築設計事務所「空気の器」

さて今度は手すりやら踊り場から上を向いて天井へ。ゆらゆらと吊るされているのは「空気の器」。トラス建築設計事務所によるインスタレーションです。これが一枚の紙をいくつも割いて一つの器にしたという作品。赤に緑にと様々な色の器がふんわりと。カゴのようとも言えるかもしれません。

ちなみにとある器には先の添景セットの小人がくつろぐ姿も。心憎い演出でした。

紙を折るということに着目しているのは西村優子です。いわゆる紙の「折形」を平面上へ展開。いずれも折られた紙が幾何学的な面を切り開き、モザイクとも抽象絵画ともいえるようなイメージを作り上げています。また合わせ重なることで強度が増す、言わば紙に重みが加わるのも特徴です。作品には強度が感じられました。


植原亮輔と渡邉良重「時間の標本」

古書から蝶を羽ばたかせているのは植原亮輔と渡邉良重です。まず古書を見開き、中央部分に蝶を鮮やかな彩色とともに細密な表現で描写。裏にも描いた上で切り抜く。すると紙の張力で蝶が浮き上がってきます。極めてシンプルな仕掛けですが、これが思いの外に美しい。また制作途中の作品を公開しているのもポイントです。

実は先の「空気の器」をそうでしたが、本展では完成形前、制作中のものも一部展示されています。ここも興味深いところです。

大胆に映像を取り込んだのはアーティストの鈴木康広、タイトルは「波うち際の本」です。暗室に直に床に置かれた5冊の大きな本。プロジェクターからは波の様子が映し出され、展示室には波の音も軽やかに流れています。

面白いのは波はいずれも見開き部分から出てくることです。何やら異界が本に侵入してくるかのように広がる波の姿。暗室の効果もあってか、どこか神秘的でした。

受付のショップでは「テラダモケイ」や「空気の器」などが実際に販売されています。美術館という空間を超え、日常でも楽しめる紙の新たな世界。作り手の発想力には改めて感心させられました。



派手さはありませんが、目黒区美ならではの好企画だと思います。

9月8日まで開催されています。

「PAPERー紙と私の新しいかたち展」 目黒区美術館
会期:7月20日(土)~9月8日(日)
休館:月曜日
時間:10:00~18:00
料金:一般600(450)円、大高生・65歳以上450(350)円、中学生以下無料。
 *( )内は20名以上の団体料金。
住所:目黒区目黒2-4-36
交通:JR線、東京メトロ南北線、都営三田線、東急目黒線目黒駅より徒歩10分。
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