「浮世絵 Floating World」(第三期) 三菱一号館美術館

三菱一号館美術館
「浮世絵 Floating World 珠玉の斎藤コレクション」(第三期)
8月13日(火)~9月8日(日)*第三期会期



三菱一号館美術館で開催中の「浮世絵 Floating World 珠玉の斎藤コレクション」の第三期を見てきました。

6月下旬より一号館にてロングラン開催中の浮世絵展「Floating World」。コレクターとして知られる川崎・砂子の里資料館の館長、斎藤文夫氏の浮世絵コレクションを一挙公開。出品総数は全600点。それを3つの会期にわけて紹介しています。

第一期では師宣、春信にはじまり、鳥居派、歌麿らを、また第二期では北斎、広重などの作品を展示。いくつかのテーマを設定しつつ、浮世絵の通史を辿る内容となっていました。


歌川広重「名所江戸百景 大はしあたけの夕立」 安政4(1857)年 川崎・砂子の里資料館

しかし残念ながら私自身、一期、二期はちょうど多忙だった時期と重なって見ることが叶わず、気がついたら最終の三期に突入。展覧会も残り約三週間となってしまいました。

前置きが長くなりました。というわけで三期へ。ようやくの観覧です。サブタイトルは「うつりゆく江戸から東京~ジャーナリスティック、ノスタルジックな視線」。テーマは江戸、東京の変遷です。広重の「東都名所」や「江戸名所百景」など起点に、幕末の横浜絵、開化絵各種、さらには維新後、清親らが描いた東京の名所絵シリーズなどが展示されていました。


歌川国芳「東都三ッ股の図」天保2(1831)年頃 川崎・砂子の里資料館

さてまずは広重。その「東都名所」シリーズがずらりと揃いますが、やはり目につくのは「東都三ツ股の図」。画面左手、全体からすると驚くほどに高い櫓が一時、「スカイツリーの誕生を予言した?」などとして話題となった例の一枚です。

広重を過ぎると、豊国、井特、英泉などの肉筆画が登場。面白いのは展示方法です。というのも会場内の真ん中(壁際だけでなく。)にもケースが独立して置かれ、その中に軸画が収められている。しかも床面に置かれているため、視点からすると下方向。つまりいずれも見下ろす形に。つまりしゃがんでみるとちょうど良い高さになるわけです。


歌川芳員「亜墨利加蒸気船 長四十間 巾六間」文久元(1861)年 川崎・砂子の里資料館

ハイライトは開化絵と言えるかもしれません。いわゆる文明開化により大きく街並が変わりつつあった維新後の江戸、東京。また開国後の横浜の様子なども。多くの絵師たちが洋風建築や機関車、鉄橋、汽船を望む港などを精力的に描きました。


小林清親「海運橋 第一銀行雪中」明治9(1876)年頃 川崎・砂子の里資料館

嬉しいのは清親がまとめて出ていたことです。清親が明治9年から描いた東京の名所絵は、いずれも清親ならではの情緒溢れるものばかり。また清親といえば光の絶妙な陰影。江戸を懐古的に眺めつつも、近代化で変貌し続ける東京を巧みに表現しています。

ラストには芳年も登場。「藤原保昌月下弄笛図」は今昔物語に取材した作品です。秋草の靡くなか刀を構える男と横笛を吹く男の対峙。その緊張感。そして背景の大きな月。かの傑作「月百姿」をも彷彿させます。

また一号館ならではの試みとしてロートレックなどの版画もあわせて紹介。必ずしも目立っているとはいえませんが、展示のアクセントにはなっていたのではないかと。それにともすると手狭な一号館の空間が浮世絵のサイズに意外とあっています。

いわゆる名品展ではないかもしれませんが、会期を分けて通史を追い、あえてほぼ幕末から明治期の浮世絵のみで構成した第三期。切り取ってみれば、なかなか意欲的な企画とも言えそうです。

館内は余裕がありました。ゆっくり観覧出来ると思います。

「浮世絵師列伝/別冊太陽/平凡社」

9月8日までの開催です。

「浮世絵 Floating World 珠玉の斎藤コレクション」 三菱一号館美術館
会期:6月22日(土)~9月8日(日)
 第1期:6月22日(土)~7月15日(月・祝)、第2期:7月17日(水)~8月11日(日)、第3期:8月13日(火)~9月8日(日)
休館:毎週月曜。但し祝日の場合は翌火曜休館。9月2日は18時まで開館。
時間:10:00~18:00(火・土・日・祝)、10:00~20:00(水・木・金)
料金:大人1300円、高校・大学生1000円、小・中学生500円。
 *リピート割引:入場済みのチケットを提示すると当日券が200円引き。
住所:千代田区丸の内2-6-2
交通:東京メトロ千代田線二重橋前駅1番出口から徒歩3分。JR東京駅丸の内南口・JR有楽町駅国際フォーラム口から徒歩5分。
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