都内近郊の美術館や博物館を巡り歩く週末。展覧会の感想などを書いています。
はろるど
「日本絵画の魅惑」(後期展示) 出光美術館
出光美術館
「日本の美・発見9 日本絵画の魅惑」
4/5~6/8 *前期:4/5~5/6、後期:5/9~6/8
出光美術館で開催中の「日本の美・発見9 日本絵画の魅惑」の後期展示を見て来ました。
室町から江戸に至る館蔵の日本絵画を紹介する「日本絵画の誘惑」展。前後期の2期制です。既にGW中で殆どの作品が入れ替わりました。
「日本絵画の魅惑」出品リスト(PDF)
前期:4月5日(土)~5月6日(火・休)
後期:5月9日(金)~6月8日(日)
前期は早々に見たものの、後期はいつの間にやら会期末。残りあと一週間弱となっています。
「日本絵画の魅惑」(前期展示) 出光美術館(はろるど)
絵巻は前後期で4点。前期と後期で2点ずつの入れ替えです。うち面白いのは「福富草紙絵巻」。放屁芸で金持ちになった秀武という人物と、彼を真似て失敗した男の話ですが、展示では前者、秀武の邸宅の様子を描いた部分が公開されている。大きな米俵が置かれ、また立派な着物のかかる室内、夫婦が二人寄り添っている姿を見て取れますが、何故か男は楽しそうであるのに、妻はどこか不機嫌な顔をしている。どういうことなのでしょうか。
中世のやまと絵屏風では「日月四季花鳥図屏風」に替わり「四季花木図屏風」が出品。かの探幽が極書きに「土佐光信」と記した屏風絵。四季の草花が順に描かれています。紅梅に末に百合。そして青々とした竹から秋草に紅葉。今でこそ黒ずんでいるものの、銀箔も散らされている。キャプションを見て初めて気がつきました。紅葉の向こうには雪をかぶった松林が小さく描かれている。左隻の上方です。冬への憧憬などという言葉もありましたが、ともかく見落としてしまうほどに小さい。何とも心憎い演出です。
状態の良い江戸時代の屏風絵が出ていました。「桜下弾弦図屏風」です。金地の二曲一隻の作、目に染みるほど発色が鮮やか。満開の桜の下で三味線を弾いたり文を認めたりする女の様子。艶やかな衣装。筆致は繊細です。髪の生際、またほつれ具合までを丁寧に示す。また桜の花は胡粉を盛っているのでしょうか。工芸的でもあります。
また気になったのは桜の幹です。力強く反り返る姿自体からして個性的ですが、所々に例えば若冲が描くかのような穴があいている。そして点々と連なる緑色の苔。幹の穴と苔のドットの関係。それらがとても際立っているのです。
普段何気なく見ている浮世絵。立ち姿にもちょっとした秘密があります。寛文浮世絵です。右手で着物の立てつまを取り、左手で袖を広げる構図。よく見られる浮世絵の立ち姿ですが、これはそもそも伊勢物語の河内越えの話に由来するとのこと。また演じた役者がこのポーズをとったこともあってか人気を呼び、浮世絵に良く描かれるようになったそうです。
前期でも感心した渡辺華山にまた優品が出ていました。「ろじ捉魚図」です。鵜が魚を捉えようとする姿を描いた一枚。ともかく鵜の躍動感が素晴らしい。魚を飲み込み、これ見よがしに首を振り上げている。また水面の草も墨だけでなく青い絵具を用いるなどして変化しています。時に滲みと掠れを駆使しての筆さばき。改めて高い画力に驚かされるものがありました。
ハイライトは等伯の「波濤図屏風」ではないでしょうか。荒れ狂う波に切り立つ岩山。六曲一双の大画面に広がる海の景色。金地にさらに金をまいているのでしょうか。さも光のハレーションを引き起こしたような効果も生まれている。劇的です。そして波の頭はまるで何らかの触手のようでもある。思わず絵に掴まれそうになります。
酒井抱一「八ツ橋屏風」(右隻) 江戸時代 出光美術館
つい先だって「美の巨人」でも特集放送のあった抱一の「八ツ橋図屏風」も出ていました。光琳のいわゆるメトロポリタン本を基準にした作品。光琳作よりも横志向が強いと言えるかもしれません。橋は左右に長くなり、なだらかな段差によって右上から左下へと進み行く。それこそ風にゆらゆらと靡くような花々。どちらかというと余白に広がりもある。絹本の画肌、肉眼でも確認出来るでしょうか。金箔の輝き。橋には群青も用いられている。美しい。眺めていると時間を忘れてしまいます。
前期の時にいただいた「後期鑑賞割引券」を利用して観覧してきました。半券の提示で後期は半額の500円。会期中に作品が大幅に入れ替わる展覧会も少なくありませんが、こうした配慮があるのは率直に嬉しいところ。展示替え後もまた来ようという気になります。
館内賑わっていました。出光の誇るお宝揃いの日本絵画、今回のスケールで楽しめる機会もそう滅多になさそうです。
「もっと知りたい長谷川等伯/黒田泰三/東京美術」
6月8日まで開催されています。
「日本の美・発見9 日本絵画の魅惑」 出光美術館
会期:4月5日(土)~6月8日(日)
*前期:4月5日(土)~5月6日(火・休)、後期:5月9日(金)~6月8日(日)
休館:月曜日。但し5/5は開館。5/7、8は展示替えのため休館。
時間:10:00~17:00 毎週金曜日は19時まで開館。入館は閉館の30分前まで。
料金:一般1000(800)円、高・大生700(500)円、中学生以下無料(但し保護者の同伴が必要。)
*( )内は20名以上の団体料金。
*前期を観覧すると「後期鑑賞割引券」により後期半額。
住所:千代田区丸の内3-1-1 帝劇ビル9階
交通:東京メトロ有楽町線有楽町駅、都営三田線日比谷駅B3出口より徒歩3分。東京メトロ日比谷線・千代田線日比谷駅から地下連絡通路を経由しB3出口より徒歩3分。JR線有楽町駅国際フォーラム口より徒歩5分。
「日本の美・発見9 日本絵画の魅惑」
4/5~6/8 *前期:4/5~5/6、後期:5/9~6/8
出光美術館で開催中の「日本の美・発見9 日本絵画の魅惑」の後期展示を見て来ました。
室町から江戸に至る館蔵の日本絵画を紹介する「日本絵画の誘惑」展。前後期の2期制です。既にGW中で殆どの作品が入れ替わりました。
「日本絵画の魅惑」出品リスト(PDF)
前期:4月5日(土)~5月6日(火・休)
後期:5月9日(金)~6月8日(日)
前期は早々に見たものの、後期はいつの間にやら会期末。残りあと一週間弱となっています。
「日本絵画の魅惑」(前期展示) 出光美術館(はろるど)
絵巻は前後期で4点。前期と後期で2点ずつの入れ替えです。うち面白いのは「福富草紙絵巻」。放屁芸で金持ちになった秀武という人物と、彼を真似て失敗した男の話ですが、展示では前者、秀武の邸宅の様子を描いた部分が公開されている。大きな米俵が置かれ、また立派な着物のかかる室内、夫婦が二人寄り添っている姿を見て取れますが、何故か男は楽しそうであるのに、妻はどこか不機嫌な顔をしている。どういうことなのでしょうか。
中世のやまと絵屏風では「日月四季花鳥図屏風」に替わり「四季花木図屏風」が出品。かの探幽が極書きに「土佐光信」と記した屏風絵。四季の草花が順に描かれています。紅梅に末に百合。そして青々とした竹から秋草に紅葉。今でこそ黒ずんでいるものの、銀箔も散らされている。キャプションを見て初めて気がつきました。紅葉の向こうには雪をかぶった松林が小さく描かれている。左隻の上方です。冬への憧憬などという言葉もありましたが、ともかく見落としてしまうほどに小さい。何とも心憎い演出です。
状態の良い江戸時代の屏風絵が出ていました。「桜下弾弦図屏風」です。金地の二曲一隻の作、目に染みるほど発色が鮮やか。満開の桜の下で三味線を弾いたり文を認めたりする女の様子。艶やかな衣装。筆致は繊細です。髪の生際、またほつれ具合までを丁寧に示す。また桜の花は胡粉を盛っているのでしょうか。工芸的でもあります。
また気になったのは桜の幹です。力強く反り返る姿自体からして個性的ですが、所々に例えば若冲が描くかのような穴があいている。そして点々と連なる緑色の苔。幹の穴と苔のドットの関係。それらがとても際立っているのです。
普段何気なく見ている浮世絵。立ち姿にもちょっとした秘密があります。寛文浮世絵です。右手で着物の立てつまを取り、左手で袖を広げる構図。よく見られる浮世絵の立ち姿ですが、これはそもそも伊勢物語の河内越えの話に由来するとのこと。また演じた役者がこのポーズをとったこともあってか人気を呼び、浮世絵に良く描かれるようになったそうです。
前期でも感心した渡辺華山にまた優品が出ていました。「ろじ捉魚図」です。鵜が魚を捉えようとする姿を描いた一枚。ともかく鵜の躍動感が素晴らしい。魚を飲み込み、これ見よがしに首を振り上げている。また水面の草も墨だけでなく青い絵具を用いるなどして変化しています。時に滲みと掠れを駆使しての筆さばき。改めて高い画力に驚かされるものがありました。
ハイライトは等伯の「波濤図屏風」ではないでしょうか。荒れ狂う波に切り立つ岩山。六曲一双の大画面に広がる海の景色。金地にさらに金をまいているのでしょうか。さも光のハレーションを引き起こしたような効果も生まれている。劇的です。そして波の頭はまるで何らかの触手のようでもある。思わず絵に掴まれそうになります。
酒井抱一「八ツ橋屏風」(右隻) 江戸時代 出光美術館
つい先だって「美の巨人」でも特集放送のあった抱一の「八ツ橋図屏風」も出ていました。光琳のいわゆるメトロポリタン本を基準にした作品。光琳作よりも横志向が強いと言えるかもしれません。橋は左右に長くなり、なだらかな段差によって右上から左下へと進み行く。それこそ風にゆらゆらと靡くような花々。どちらかというと余白に広がりもある。絹本の画肌、肉眼でも確認出来るでしょうか。金箔の輝き。橋には群青も用いられている。美しい。眺めていると時間を忘れてしまいます。
前期の時にいただいた「後期鑑賞割引券」を利用して観覧してきました。半券の提示で後期は半額の500円。会期中に作品が大幅に入れ替わる展覧会も少なくありませんが、こうした配慮があるのは率直に嬉しいところ。展示替え後もまた来ようという気になります。
館内賑わっていました。出光の誇るお宝揃いの日本絵画、今回のスケールで楽しめる機会もそう滅多になさそうです。
「もっと知りたい長谷川等伯/黒田泰三/東京美術」
6月8日まで開催されています。
「日本の美・発見9 日本絵画の魅惑」 出光美術館
会期:4月5日(土)~6月8日(日)
*前期:4月5日(土)~5月6日(火・休)、後期:5月9日(金)~6月8日(日)
休館:月曜日。但し5/5は開館。5/7、8は展示替えのため休館。
時間:10:00~17:00 毎週金曜日は19時まで開館。入館は閉館の30分前まで。
料金:一般1000(800)円、高・大生700(500)円、中学生以下無料(但し保護者の同伴が必要。)
*( )内は20名以上の団体料金。
*前期を観覧すると「後期鑑賞割引券」により後期半額。
住所:千代田区丸の内3-1-1 帝劇ビル9階
交通:東京メトロ有楽町線有楽町駅、都営三田線日比谷駅B3出口より徒歩3分。東京メトロ日比谷線・千代田線日比谷駅から地下連絡通路を経由しB3出口より徒歩3分。JR線有楽町駅国際フォーラム口より徒歩5分。
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