「背守り 子どもの魔よけ展」 LIXILギャラリー

LIXILギャラリー
「背守り 子どもの魔よけ展」 
6/5-8/23



LIXILギャラリーで開催中の「背守り 子どもの魔よけ展」を見て来ました。

「背守り」という言葉をご存知でしょうか。

かつて子どもの魔除けとして広まった習俗。着物の後ろ襟から背中にかけて施された飾りです。子どもは霊魂が不安定だとされ、背中から魂が抜けると信じられていた。それを守るためのもの。起源は鎌倉時代にまで遡ります。洋装が普及する昭和初期の頃まで見られたそうです。

出品は全110件です。着物だけでなく守り袋や帽子などの小物も含みます。(着物は30数件)様々な背守りが展示されていました。

会場内撮影が出来ました。


「背守りー糸じるし」

まず背守りの中で一番ポピュラーである「糸じるし」です。文字通り着物の背中にわざわざ縫い目を入れて魔除けとしたもの。最も簡略なお守りとも言えるでしょう。

例えば江戸時代の祝い着です。裕福な家のものかもしれません。美しい紫地に松竹梅模様。それだけでも目を引きますが、やはり注目したいのは糸じるしです。背中の上から赤と白の糸が腰の辺りまで縫い込まれています。


「背守りー飾り縫い」

「飾り縫い」です。鶴や亀といった吉祥文などを背中に縫い付けたお守り。赤い絹織りものには柘榴の刺繍が施されている。これも魔除けの意味があったそうです。


「背守りー飾り縫い」

それにしても着物の艶やかな様子。金魚に滝登りならぬ鯉をあしらったものまでがある。可愛らしいものです。目移りしてしまいます。


「背守りー飾り縫い(JOAK)」

一風変わった着物を見つけました。「JOAK」という英字が散りばめられた柄です。これは大正時代のラジオ放送局の名を取り込んだもの。その中の番組で募ったという「シロイオウチタテマシタ」という詩も書かれています。子どもに見せて教えたのでしょうか。ちなみに背守りは桜です。写真では分かりにくいかもしれませんが、白い糸で桜が刺繍されています。

「百徳着物」には驚きました。子育ちの良い家や長寿のお年寄りなどから端切れをもらい、それを百枚あわせて綴ったという着物です。金沢のお寺に今も大切に保管されています。


「背守りー百徳」(重要有形民族文化材:真成寺)

この百徳は何と全部で250枚ものの端切れを縫いあわせています。そもそも背守りは着物に縫い目を施すことに意味がある。同じように着物を縫い合わせることも魔除けということなのでしょう。明治時代の着物だそうです。


「背守りー紐」(重要有形民族文化材:真成寺)

背中に紐を垂らしたり襟下に小裂を縫った背守りもある。紐は例えば子どもが井戸から落ちた時に神様が引き上げてくれる。そうした願いを持ち合わせています。

またそもそも昭和以前、子どもの着物は大人のお古を直して使うことが多かった。何も「プロ」が仕立てたわけではありません。おそらくは母が子どもに合う着物の柄なりを考えて縫ったものばかり。着物にも背守りにも母から子への愛情がこめられていると言えるかもしれません。


「背守り」展会場風景

石内都が本展のために撮った背守りの写真も会場に花を添えます。なおそれに関連し、併設のギャラリー2では石内の個展も開催中。背守りや百徳を写したシリーズ。計19作が展示されていました。(石内展は撮影不可。)



「石内都展ー幼き衣へ」@LIXILギャラリー2 6月5日(木)~8月23日(土)

石内のファインダーを通すと着物の意匠がより映えて見えるのも興味深いところ。その反面、皺やくたびれた部分も際立つ。これも着物の「歴史」や「記憶」に向き合っている所以かもしれません。


「背守り」展会場風景

「背守り」を通して見た日本の知られざる服飾文化。コンパクトな展示ですが、実に見応えがありました。

「背守りー子どもの魔よけ/LIXIL BOOKLET」

入場は無料です。8月23日まで開催されています。おすすめします。

「背守り 子どもの魔よけ展」 LIXILギャラリー
会期:6月5日(木)~8月23日(土)
休廊:水曜日。
時間:10:00~18:00
住所:中央区京橋3-6-18 LIXIL:GINZA2階
交通:東京メトロ銀座線京橋駅より徒歩1分、東京メトロ有楽町線銀座一丁目駅7番出口より徒歩3分、都営浅草線宝町駅より徒歩3分、JR線有楽町駅より徒歩7分
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