「安野光雅が描く野の花」 市川市芳澤ガーデンギャラリー

市川市芳澤ガーデンギャラリー
「安野光雅が描く野の花」 
9/27-11/30



市川市芳澤ガーデンギャラリーで開催中の「安野光雅が描く野の花」を見て来ました。

1926年に島根に生まれ、絵本はおろか、絵画や装画、さらに執筆の分野でも活動する安野光雅。うち絵本などに描いた野の花を紹介しています。

出展は3シリーズ。言わずと知れた絵本の「野の花と小人たち」と「もりのえほん」、そして画文集の「みちの辺の花」です。そこから各23、11、27点が選ばれている。まさに四季折々の野花や森の緑が描かれています。いずれも水彩の瑞々しい筆触が美しい。見惚れてしまいました。


安野光雅「野の花と小人たち」より ©空想工房2014

「野の花と小人たち」は最初の発表から既に40年以上も愛されているベストセラー。たんぽぽやしろつめくさといった身近な野花の中に潜む小人たちの物語です。

れんげにほたるふくろにからすうりなど、野花の可憐な姿と言ったら比類がありません。そして草花の描写は写実的でありながら、小人たちの住む世界は幻想的でもある。思わず見ている自分もその中に入って遊びたくなってしまいます。

一枚一枚の作品に安野のテキストが付いていました。いずれも自身の花への想いや記憶を綴ったもの。例えばしろつめくさでは戦争中の体験でしょうか。学校での防空訓練の出来事を記している。これがかなり深い。読ませます。


安野光雅「もりのえほん」より ©空想工房2014

「もりのえほん」は森を舞台にした動物たちの物語です。と言ってもこの絵本には言葉がない。そしてもし初めて見たとしたら動物もいないと思ってしまうしれません。何故なら動物は森の中に隠れているからです。一種の「だまし絵」と言っても良いかもしれません。木の中にサルが潜み、緑の影にヤギがいる。よく目を凝らすと幻のように動物が浮き上がって来ます。

動物は全部で130種類です。一枚の森の中にも10種類近くもいます。そしてあまりにもうまく森に溶け込んでいるため、一生懸命探してもどこにいるのか分からないことも少なくありません。キャプションに記された動物名がヒントとなりそうです。


安野光雅「みちの辺の花」より ©空想工房2014

「みちの辺の花」は小原流の会報誌に連載された画文集です。やはり淡い水彩によって野の花が描かれる。こちらはテキストはなく、ほぼ原画のみの紹介でした。



ところであえて作品から「野の花」にスポットを当てたのには理由があります。というのも会場の芳澤ガーデンは四季の草花も楽しめる庭があることでも知られたギャラリー。そこに植えられた花を描いた作品を主にピックアップしているのです。



とはいえ季節は既に11月。咲いている花は僅かでした。ただ今回の作品目録の裏面には季節の草花をイラストで描いた「庭園マップ」が付いています。あくまでも小さなお庭ではありますが、マップを頼りにしばし散策してみるのも良いかもしれません。

なお来年夏には新宿の損保ジャパン美術館で安野の個展が行われるそうです。こちらにも期待しましょう。

「安野光雅展」@東郷青児記念損保ジャパン日本興亜美術館 2015年7月7日(火)~8月23日(日)

「もりのえほん/安野光雅/福音館書店」

11月30日まで開催されています。

「安野光雅が描く野の花」 市川市芳澤ガーデンギャラリー
会期:9月27日(土)~11月30日(日)
休館:月曜日。但し祝日の場合は翌日休館。
時間:9:30~16:30 *入場は16時まで。
料金:一般500円。25名以上の団体は400円。
住所:千葉県市川市真間5-1-18
交通:JR線市川駅より徒歩16分、京成線市川真間駅より徒歩12分。JR市川駅北口第6駐輪場に「街かど回遊レンタサイクル」(無料。7:00~17:00。)あり。
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