都内近郊の美術館や博物館を巡り歩く週末。展覧会の感想などを書いています。
はろるど
「中村屋サロンーここで生まれた、ここから生まれた」 新宿中村屋サロン美術館
新宿中村屋サロン美術館
「中村屋サロン美術館 開館記念特別展 中村屋サロンーここで生まれた、ここから生まれた」
2014/10/29~2015/2/15

新宿中村屋サロン美術館で開催中の「中村屋サロンーここで生まれた、ここから生まれた」を見て来ました。
1909年より新宿の地にて本店を構える老舗食品メーカーの中村屋。開店当時、明治末から大正にかけ、同店にあったアトリエには彫刻家の荻原守衛や画家の中村彝らが集っていた。それが後に「中村屋サロン」と呼ばれたそうです。
ずばり本展では「中村屋サロン」の動向を紹介。中村屋に関する芸術家たちの軌跡を辿っています。
まず場所のおさらいです。新宿の中村屋。言うまでもなく東口、メインストリートの新宿通り沿い。JR駅から2分とかかりません。新宿高野の隣、真新しいビルが新宿中村屋ビルです。つい今秋、10月末に全面新装オープンしました。

「中村屋サロン美術館」入口
ビルは地下2階、地上8階。全10フロアです。いわゆる複合商業施設、一階はコーチの新宿です。ほかはカフェやサロンなどがテナントとして入居しています。お馴染みのカレーなどをいただける中村屋直営のレストランもありました。
サロン美術館はビルの3階です。エレベーターを降りると目の前が近畿日本ツーリスト。「おや美術館はどこに?」と思ってしまいますが、左を向けば美術館の表記があります。言ってしまえばビル内の僅かな一角、計2室ほどの小さなスペースです。

荻原守衛「坑夫」 1954年鋳造 ブロンズ 株式会社中村屋
さて展示です。始まりは荻原守衛でした。1899年に上京、その後フランスへ渡り、ロダンに衝撃を受け、彫刻家へと転向する。中村屋との繋がりは上京以前のことです。創業者の相馬愛蔵・黒光がまだ安曇野にいた頃に遡ります。
この時、荻原は黒光の所有していた長尾杢太郎の「亀戸風景」を見て芸術家の道を志した。パリから帰国した後も相馬夫妻のそばで制作を続けます。そして言うまでもなく愛蔵・黒光夫妻こそが最大のキーパーソン。二人なくして中村屋サロンは成り立ち得ません。

荻原守衛「女」 1978年鋳造 ブロンズ 株式会社中村屋
繰り返しになりますが、中村屋サロンは夫妻を囲んだ芸術家たちの集まりを指す言葉。店の裏にアトリエをつくっては制作の場に提供していたそうです。そして荻原の絶作、「女」もアトリエで制作されました。後ろ手で跪く女、残された型から鋳造されたブロンズは、第4回文展で文部省の買上を受けます。会場には近年鋳造された作品が展示されていました。(重文指定の石膏原型は東博の所蔵です。)

高村光太郎「自画像」 1913年 油彩、キャンバス 株式会社中村屋
高村光太郎が4点残した自画像のうちの1点が出ています。そして目を引くのが彫刻の「手」です。彼が中村屋へ出入りするようになったのは荻原の縁。あくまでもサロンの中核は荻原です。ただし萩原は30歳の若さで亡くなってしまいます。その後にサロンへ頻繁に出入りするようになったのは画家の中村彝でした。

中村彝「少女」 1914年 油彩、キャンバス 株式会社中村屋
「少女」のモデルは相馬家の長女、俊子です。ソファでしょうか。腕を組み合わせては前屈みになって座る女、長い髪を垂らしている。引き締まった口元と大きな瞳が印象的な作品でもあります。
エロシェンコが出ていました。実は彼も彝が利用していた中村屋のアトリエに出入りしていた詩人。ただし作品は良く知られた東近美所蔵の彝の作ではなく、鶴田吾郎によるもの。実は鶴田が先にエロシェンコを見かけてモデルを頼み込んだ。その後、黒光の承諾を得て、友人の彝と一緒に描いた肖像画なのです。

中原悌二郎「若きカフカス人」 1919年 ブロンズ 碌山美術館
中原悌二郎の「若きカフカス人」に惹かれました。かの芥川をして「この若者はまだ生きている」と言わしめた彫像、モデルはアトリエに居候していたロシア人のニンツァです。後頭部は未完ながらも正面を向いた風貌は威圧感すらある。くっきりとした目鼻立ち、その威容は堂々たるエジプトのファラオのようです。迫力がありました。

會津八一「那可無楽也」 1949年 墨、紙 株式会社中村屋
そのほかかつて相馬夫妻の長男の教師でもあった書家で歌人の會津八一に関する資料もある。會津の揮毫した中村屋の看板なども出ていました。

新宿中村屋ビル1階(美術館へはエレベーターであがります)
新しく誕生した小さな小さな美術館。しかしながら店と場所の歴史を踏まえた企画です。出品は平面、彫刻をあわせ50点(一部展示替えあり)。今後は新進作家を紹介する企画なども行うそうです。新宿で立ち寄るスポットがまた一つ増えました。
料金は300円です。気軽に楽しめます。

新宿中村屋ビル全景
2015年2月15日まで開催されています。
「中村屋サロン美術館 開館記念特別展 中村屋サロンーここで生まれた、ここから生まれた」 新宿中村屋サロン美術館
会期:2014年10月29日(水)~2015年2月15日(日)
休館:毎週火曜日。(火曜が祝祭日の場合は開館、翌日旧館。)1月1日。
時間:10:00~19:00 *入場は18:40まで。
料金:一般300円。高校生以下無料。
住所:新宿区新宿3-26-13 新宿中村屋ビル3階
交通:東京メトロ丸ノ内線新宿駅A6出口直結。JR線新宿駅東口より徒歩2分。
「中村屋サロン美術館 開館記念特別展 中村屋サロンーここで生まれた、ここから生まれた」
2014/10/29~2015/2/15

新宿中村屋サロン美術館で開催中の「中村屋サロンーここで生まれた、ここから生まれた」を見て来ました。
1909年より新宿の地にて本店を構える老舗食品メーカーの中村屋。開店当時、明治末から大正にかけ、同店にあったアトリエには彫刻家の荻原守衛や画家の中村彝らが集っていた。それが後に「中村屋サロン」と呼ばれたそうです。
ずばり本展では「中村屋サロン」の動向を紹介。中村屋に関する芸術家たちの軌跡を辿っています。
まず場所のおさらいです。新宿の中村屋。言うまでもなく東口、メインストリートの新宿通り沿い。JR駅から2分とかかりません。新宿高野の隣、真新しいビルが新宿中村屋ビルです。つい今秋、10月末に全面新装オープンしました。

「中村屋サロン美術館」入口
ビルは地下2階、地上8階。全10フロアです。いわゆる複合商業施設、一階はコーチの新宿です。ほかはカフェやサロンなどがテナントとして入居しています。お馴染みのカレーなどをいただける中村屋直営のレストランもありました。
サロン美術館はビルの3階です。エレベーターを降りると目の前が近畿日本ツーリスト。「おや美術館はどこに?」と思ってしまいますが、左を向けば美術館の表記があります。言ってしまえばビル内の僅かな一角、計2室ほどの小さなスペースです。

荻原守衛「坑夫」 1954年鋳造 ブロンズ 株式会社中村屋
さて展示です。始まりは荻原守衛でした。1899年に上京、その後フランスへ渡り、ロダンに衝撃を受け、彫刻家へと転向する。中村屋との繋がりは上京以前のことです。創業者の相馬愛蔵・黒光がまだ安曇野にいた頃に遡ります。
この時、荻原は黒光の所有していた長尾杢太郎の「亀戸風景」を見て芸術家の道を志した。パリから帰国した後も相馬夫妻のそばで制作を続けます。そして言うまでもなく愛蔵・黒光夫妻こそが最大のキーパーソン。二人なくして中村屋サロンは成り立ち得ません。

荻原守衛「女」 1978年鋳造 ブロンズ 株式会社中村屋
繰り返しになりますが、中村屋サロンは夫妻を囲んだ芸術家たちの集まりを指す言葉。店の裏にアトリエをつくっては制作の場に提供していたそうです。そして荻原の絶作、「女」もアトリエで制作されました。後ろ手で跪く女、残された型から鋳造されたブロンズは、第4回文展で文部省の買上を受けます。会場には近年鋳造された作品が展示されていました。(重文指定の石膏原型は東博の所蔵です。)

高村光太郎「自画像」 1913年 油彩、キャンバス 株式会社中村屋
高村光太郎が4点残した自画像のうちの1点が出ています。そして目を引くのが彫刻の「手」です。彼が中村屋へ出入りするようになったのは荻原の縁。あくまでもサロンの中核は荻原です。ただし萩原は30歳の若さで亡くなってしまいます。その後にサロンへ頻繁に出入りするようになったのは画家の中村彝でした。

中村彝「少女」 1914年 油彩、キャンバス 株式会社中村屋
「少女」のモデルは相馬家の長女、俊子です。ソファでしょうか。腕を組み合わせては前屈みになって座る女、長い髪を垂らしている。引き締まった口元と大きな瞳が印象的な作品でもあります。
エロシェンコが出ていました。実は彼も彝が利用していた中村屋のアトリエに出入りしていた詩人。ただし作品は良く知られた東近美所蔵の彝の作ではなく、鶴田吾郎によるもの。実は鶴田が先にエロシェンコを見かけてモデルを頼み込んだ。その後、黒光の承諾を得て、友人の彝と一緒に描いた肖像画なのです。

中原悌二郎「若きカフカス人」 1919年 ブロンズ 碌山美術館
中原悌二郎の「若きカフカス人」に惹かれました。かの芥川をして「この若者はまだ生きている」と言わしめた彫像、モデルはアトリエに居候していたロシア人のニンツァです。後頭部は未完ながらも正面を向いた風貌は威圧感すらある。くっきりとした目鼻立ち、その威容は堂々たるエジプトのファラオのようです。迫力がありました。

會津八一「那可無楽也」 1949年 墨、紙 株式会社中村屋
そのほかかつて相馬夫妻の長男の教師でもあった書家で歌人の會津八一に関する資料もある。會津の揮毫した中村屋の看板なども出ていました。

新宿中村屋ビル1階(美術館へはエレベーターであがります)
新しく誕生した小さな小さな美術館。しかしながら店と場所の歴史を踏まえた企画です。出品は平面、彫刻をあわせ50点(一部展示替えあり)。今後は新進作家を紹介する企画なども行うそうです。新宿で立ち寄るスポットがまた一つ増えました。
料金は300円です。気軽に楽しめます。

新宿中村屋ビル全景
2015年2月15日まで開催されています。
「中村屋サロン美術館 開館記念特別展 中村屋サロンーここで生まれた、ここから生まれた」 新宿中村屋サロン美術館
会期:2014年10月29日(水)~2015年2月15日(日)
休館:毎週火曜日。(火曜が祝祭日の場合は開館、翌日旧館。)1月1日。
時間:10:00~19:00 *入場は18:40まで。
料金:一般300円。高校生以下無料。
住所:新宿区新宿3-26-13 新宿中村屋ビル3階
交通:東京メトロ丸ノ内線新宿駅A6出口直結。JR線新宿駅東口より徒歩2分。
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