ブルーノ・タウト「熱海の家」、隈研吾「水/ガラス」

ブルーノ・タウト設計「熱海の家」と隈研吾設計の「水/ガラス」を見てきました。


旧日向別邸ブルーノ・タウト「熱海の家」
http://www.city.atami.lg.jp/shisetsu/bunka/1002036/1002047.html

ドイツ人建築家のブルーノ・タウトの残した国内唯一の建築物こと「熱海の家」。実業家の日向利兵衛が1936年に別邸として建てました。

建物は地上2階、地下1階の3層構造です。地上部分は銀座和光や東博本館を手がけた渡辺仁が担当。地下をブルーノ・タウトが設計しました。

現在は熱海市の所有。重要文化財です。2005年から一般公開されています。


「熱海の家」入口。地上の母屋は和風建築です。

場所は熱海駅から徒歩10分弱です。狭く急な坂道をあがった崖地の上にあります。日向は建設当時、温泉付きの分譲地だったこの地を購入しました。また崖の上だからかともかく見晴らしが良い。眼下に海を一望出来ます。この日はあいにくの天候でしたが、晴れていれば初島、大島はおろか、房総半島まで見渡せるそうです。

「日向家熱海別邸保存会」 *建築について細かい解説があります。

見学は完全予約制。しかも土日のみ、各日6回、1回10名程度の完全入れ替え制です。見学の所要時間は約1時間です。はじめに上の母屋でガイダンス用の映像DVDを15分ほど見た後、タウトの設計した地下へと移動。同行するガイドの解説を聞きながら、所定のグループで見学するという流れでした。なお地下室部分は一切撮影出来ません。


「熱海の家」母屋より海を望む。(この庭の下がタウト設計の地下室です。)

一階母屋の前庭部分の真下がタウトによる地下室です。地下室といえども、崖地を利用しているため、海側の面は全て開口部です。ゆえに海を眺めることが出来ます。


「熱海の家」内部(公式サイトより)

構造は縦長、3部屋続きです。手前からピンポン室(社交室)、洋室、和室と並びます。随所にはタウトが至極感心したという日本建築、ようは和のエッセンスが詰まっていますが、その感性は非常に独特でした。例えば照明です。ピンポン室の天井には何と100個以上もの電球がぶら下がっています。そして洋室や和室にはひな壇があり、その上にもまるでステージのような空間があります。

ほかにも間接照明や折りたたみ式のガラス窓、また蔀戸のブラインドなども目を引くのではないでしょうか。床や天井の模様も常に変化があります。一つとして同じ景色がありません。

タウトは3室をベートーベン、モーツァルト、バッハの音楽に例えたそうです。3室に通底するのはタウトの感性のみです。もちろん空間に連続性こそありますが、それ以外にあまり共通項はありません。それぞれに個性的な部屋が広がっています。


「熱海の家」横から海方向を見る。

素材は竹が目立ちました。施工は宮大工だそうです。それゆえか傷みこそあるものの、80年前の建物とは思えないほどに状態が良い。また細部の意匠が驚くほど凝っているのも特徴です。竹を加工したり、天井の板組みの高さに変化を付けたり、階段の中央部をわざとへこませるなど、ともかく細部の細部までタウトのこだわりを見て取れます。

隈研吾設計の「水/ガラス」はタウトの「熱海の家」の隣にありました。

建築は1995年です。元々はある企業のゲストハウスとして建てられたそうですが、現在は一般向けの宿泊施設です。高級旅館「ATAMI 海峯楼」として運営されています。

「ATAMI 海峯楼」は全4室。基本的には宿泊客だけしか入れません。ただし事前に問い合わせをすれば、部屋が空いている場合のみ、見学することが出来ます。また撮影も可能です。スタッフの方が丁寧に案内して下さいました。


隈研吾「水/ガラス」(ウォーターバルコニー)

「水/ガラス」は全面ガラス張りでした。その名も「ウォーターバルコニー」。宿泊客のうち1組のみ利用出来るという贅沢なフロア、床面は楕円形です。周囲には水がはられています。

手前から見ると水盤と海が連続しているようにも見えます。そしてガラスの質感も美しい。椅子の背もたれもガラスです。

この水の縁側は隈がタウト建築へのオマージュとして設計したとか。またそもそも「水/ガラス」自体、隈が水という素材に関心を持つ切っ掛けになった建物でもあります。

「水を見せると言った途端に、建築がこれまでとは違った生命観を帯びるということに気づいて、インテリアに水のカーテンをつくろうと思ったのです。」 隈研吾 *「雨のみちデザイン」より


「ATAMI 海峯楼」客室

一部の客室も見学出来ました。さすがに高級旅館とあって雰囲気も素晴らしい。館内には千住博の絵画や狩野智宏のガラスオブジェなども展示されています。また和室、洋室、またスイートのいずれの客室からも海を望むことが出来ました。


「ATAMI 海峯楼」大広間

大広間には熱海の松と海をモチーフとした襖絵が飾ってありました。(筆は徳力富吉郎)可動式です。開くと海の景色が広がります。


「ATAMI 海峯楼」ラウンジ

なお今回の見学の予約はブログ「今日の献立」のKINさんが手配して下さいました。

ブルーノ・タウト「熱海の家」隈研吾「水/ガラス」@今日の献立ev.

国内唯一のタウト建築はさすがに一見の価値があります。隣り合う「熱海の家」と「ATAMI 海峯楼」内の「水/ガラス」。隈のオマージュは果たしてタウトに届いたのでしょうか。

ともに飛び込みでの見学は出来ません。見学の際はあらかじめ両施設までお問い合わせ下さい。

旧日向別邸ブルーノ・タウト「熱海の家」
URL:http://www.city.atami.shizuoka.jp/page.php?p_id=641(予約方法について記載あり。)
住所:静岡県熱海市春日町8-37
交通:JR線熱海駅より徒歩10分。
料金:大人300円、中高生200円、小学生以下無料。
開館:毎週土・日、及び祝祭日。(平日は休み)
時間:9:30~16:30。最終入館は15時。
 *9:30、10:30、11,30、13:00、14:00、15:00の入れ替え制。各回定員10人。
電話:0557-81-2747(開館日のみ)

「ATAMI 海峯楼」
URL:http://www.atamikaihourou.jp/
住所:静岡県熱海市春日町8-33
交通:JR線熱海駅より徒歩10分。
電話:0557-86-5050
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