都内近郊の美術館や博物館を巡り歩く週末。展覧会の感想などを書いています。
はろるど
「イスラーム展」 東洋文庫ミュージアム
東洋文庫ミュージアム
「もっと知りたい!イスラーム展」
1/10-4/12
東洋文庫ミュージアムで開催中の「もっと知りたい!イスラーム展」を見て来ました。
日頃、イスラム教諸地域に関する報道を見聞きしない日はありませんが、その一方でどれほど詳しく知っているかと問われると、答えに窮してしまうのも事実です。ともすると誤解や偏見も多いのではないでしょうか。日本人にとってイスラム教は必ずしも身近な存在とは言えません。
そうしたイスラム教を資料によって紹介する展覧会です。出品は「コーラン」の書写から契約文書、またイスラムに関する絵画や日本語での文献など40点弱。中でもイスラム教の発展、つまりどのようにして世界へ広まっていったのかに着目しています。
館内の撮影が出来ました。
「コーラン」 1371-72年頃書写
「コーラン」です。言うまでもなくイスラム教の聖典、展示品は14世紀に現在のシリアで書写されたものです。アラビア語の書体は見るからに美しい。各節の区切りは金の絵具で描かれた梅の花で示されています。また所々の赤い記号は発声の際の注意点を表しているそうです。
「祝祭の書」 1720年(2000年複製)
オスマン帝国の皇子の割礼を祝うためのお祭りを描いたのが「祝祭の書」です。ここでは贅沢な宴会やパレード、さらには花火やサーカスまでが行われたとか。王の権勢を示す意味もあったのでしょう。派手なお祭りです。当時のイスラムの風俗を伝える重要な資料でもあります。
「結婚契約書」 1721年 フェズ
イスラムにおける結婚は男女の契約です。婚姻時に交わした「結婚契約書」には、結納金や贈り物、財産権はおろか、離婚した際の慰謝料などの条件までが記されています。また写真では分かりにくいかもしれませんが、ここでも金の絵具によって華麗な装飾が施されていました。
早くも14世紀の段階でイスラムは中東地域はおろか、北アフリカ、中央アジア、それに東南アジアまでの広がりを見せます。
イブン=バットゥータ「大旅行記」 1355年成立(1877年パリ刊)
当時のイスラム世界を旅したのがイブン・バットゥータです。モロッコから出発し、エジプトやトルコにシリア、そしてアラビア半島から東アフリカ、さらにカザフスタンやインド、インドネシア、遠くは中国などを巡り歩きます。足掛け30年にも渡る大旅行です。その旅行記が出品されています。
アジアにおけるイスラム伝播についての展示も重要です。日本と中国、どちらが先に本格的なコーランの全文訳をしたのかご存知でしょうか。
坂本健一「コーラン経」 1920年 東京刊
答えは日本です。坂本健一が1920年に和文に訳した「コーラン経」が最初の完訳。アラビア語の原典ではなく、英訳のコーランを日本語に訳しました。
中国ではその和文コーランを1927年に訳したのが最初です。ただしその後の1932年、王静斎がアラビア語から初めての中国語にコーランを全訳します。
王静斎「古蘭経訳解」 1932年 北京刊
ちなみに王静斎は中国人ムスリムです。宗教指導者としても活動し、当時の中国イスラム社会におけるリーダ的な存在でもありました。
「イスラーム展」解説パネル
総じて解説パネルが非常に充実しています。良く耳にするスンニ派とシーア派などのイスラムの宗派、いわゆるイスラム原理主義の運動、さらには先にも触れたイスラムの世界的伝播の経緯などについて細かに触れています。全て読むと、イスラム教についての知識を一通り頭に入れることが出来るかもしれません。
「オリエントホール」展示室風景
1階のオリエントホールでは英仏訳のコーランやイスラム研究書なども展示されていました。
J.グールド「アジアの鳥類」 1850-83年 ロンドン刊
また東洋文庫の名品セクションでは国宝の「文選集注」なども出品。それにイギリスの鳥類学者が19世紀に著した「アジアの鳥類」なども目を引きました。何とも美しい表紙ではないでしょうか。
「モリソン文庫」展示室風景
東洋文庫の「もっと知りたい!イスラーム展」。イスラム教を知るための取っ掛かりになりそうです。
4月12日まで開催されています。
「もっと知りたい!イスラーム展」 東洋文庫ミュージアム(@toyobunko_m)
会期:1月10日(土)~4月12日(日)
休館:火曜日。但し祝日の場合は開館。翌日休館。
時間:10:00~19:00 *入館は閉館の30分前まで。
料金:一般900円、シニア800円、大学生700円、中学・高校生600円、小学生290円。
*入館割引券あり
住所:文京区本駒込2-28-21
交通:都営地下鉄三田線千石駅A4出口から徒歩7分。JR線・東京メトロ南北線駒込駅(JR線南口、南北線2番出口)から徒歩8分。
「もっと知りたい!イスラーム展」
1/10-4/12
東洋文庫ミュージアムで開催中の「もっと知りたい!イスラーム展」を見て来ました。
日頃、イスラム教諸地域に関する報道を見聞きしない日はありませんが、その一方でどれほど詳しく知っているかと問われると、答えに窮してしまうのも事実です。ともすると誤解や偏見も多いのではないでしょうか。日本人にとってイスラム教は必ずしも身近な存在とは言えません。
そうしたイスラム教を資料によって紹介する展覧会です。出品は「コーラン」の書写から契約文書、またイスラムに関する絵画や日本語での文献など40点弱。中でもイスラム教の発展、つまりどのようにして世界へ広まっていったのかに着目しています。
館内の撮影が出来ました。
「コーラン」 1371-72年頃書写
「コーラン」です。言うまでもなくイスラム教の聖典、展示品は14世紀に現在のシリアで書写されたものです。アラビア語の書体は見るからに美しい。各節の区切りは金の絵具で描かれた梅の花で示されています。また所々の赤い記号は発声の際の注意点を表しているそうです。
「祝祭の書」 1720年(2000年複製)
オスマン帝国の皇子の割礼を祝うためのお祭りを描いたのが「祝祭の書」です。ここでは贅沢な宴会やパレード、さらには花火やサーカスまでが行われたとか。王の権勢を示す意味もあったのでしょう。派手なお祭りです。当時のイスラムの風俗を伝える重要な資料でもあります。
「結婚契約書」 1721年 フェズ
イスラムにおける結婚は男女の契約です。婚姻時に交わした「結婚契約書」には、結納金や贈り物、財産権はおろか、離婚した際の慰謝料などの条件までが記されています。また写真では分かりにくいかもしれませんが、ここでも金の絵具によって華麗な装飾が施されていました。
早くも14世紀の段階でイスラムは中東地域はおろか、北アフリカ、中央アジア、それに東南アジアまでの広がりを見せます。
イブン=バットゥータ「大旅行記」 1355年成立(1877年パリ刊)
当時のイスラム世界を旅したのがイブン・バットゥータです。モロッコから出発し、エジプトやトルコにシリア、そしてアラビア半島から東アフリカ、さらにカザフスタンやインド、インドネシア、遠くは中国などを巡り歩きます。足掛け30年にも渡る大旅行です。その旅行記が出品されています。
アジアにおけるイスラム伝播についての展示も重要です。日本と中国、どちらが先に本格的なコーランの全文訳をしたのかご存知でしょうか。
坂本健一「コーラン経」 1920年 東京刊
答えは日本です。坂本健一が1920年に和文に訳した「コーラン経」が最初の完訳。アラビア語の原典ではなく、英訳のコーランを日本語に訳しました。
中国ではその和文コーランを1927年に訳したのが最初です。ただしその後の1932年、王静斎がアラビア語から初めての中国語にコーランを全訳します。
王静斎「古蘭経訳解」 1932年 北京刊
ちなみに王静斎は中国人ムスリムです。宗教指導者としても活動し、当時の中国イスラム社会におけるリーダ的な存在でもありました。
「イスラーム展」解説パネル
総じて解説パネルが非常に充実しています。良く耳にするスンニ派とシーア派などのイスラムの宗派、いわゆるイスラム原理主義の運動、さらには先にも触れたイスラムの世界的伝播の経緯などについて細かに触れています。全て読むと、イスラム教についての知識を一通り頭に入れることが出来るかもしれません。
「オリエントホール」展示室風景
1階のオリエントホールでは英仏訳のコーランやイスラム研究書なども展示されていました。
J.グールド「アジアの鳥類」 1850-83年 ロンドン刊
また東洋文庫の名品セクションでは国宝の「文選集注」なども出品。それにイギリスの鳥類学者が19世紀に著した「アジアの鳥類」なども目を引きました。何とも美しい表紙ではないでしょうか。
「モリソン文庫」展示室風景
東洋文庫の「もっと知りたい!イスラーム展」。イスラム教を知るための取っ掛かりになりそうです。
4月12日まで開催されています。
「もっと知りたい!イスラーム展」 東洋文庫ミュージアム(@toyobunko_m)
会期:1月10日(土)~4月12日(日)
休館:火曜日。但し祝日の場合は開館。翌日休館。
時間:10:00~19:00 *入館は閉館の30分前まで。
料金:一般900円、シニア800円、大学生700円、中学・高校生600円、小学生290円。
*入館割引券あり
住所:文京区本駒込2-28-21
交通:都営地下鉄三田線千石駅A4出口から徒歩7分。JR線・東京メトロ南北線駒込駅(JR線南口、南北線2番出口)から徒歩8分。
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